A.Banana.S

古代ローマ、NACSさん、ドートマンダーにパーカー、西武ライオンズ、FEプレイ日記(似非)・・・好きなことをぽつぽつと。

ドートマンダーとパーカーの妄想集(三本目&冒頭1ページ)

上げます。(リンクは記事の最後に)

 

三、ココナッツと蜘蛛

 ケルプ宅でココナッツ型金庫に挑むドートマンダーの耳へ、留守電経由で妙なメッセージが続々と届きはじめる。『骨まで盗んで』(1993)の後くらい。

 

 ドートマンダー、ケルプ、スタン・マーチほか。

 たぶん全五本中、いちばんコメディ色強め。

 主な参考文献:『逃げ出した秘宝』『バッド・ニュース』

 

anridd-abananas.hateblo.jp

 

以下、冒頭1ページ(一部イニシャル表記)

(……ケータイ電話なんてありません)

 

◆◆◆

三、ココナッツと蜘蛛

 

 その日の朝、電話をかけてしまったことが運の尽きだった。電話を受け取ったところまでは悪くなかったのだから、すでにJ・Dという男の運などとっくに尽きているとは思いたくなかった。

「目ぼしいトラックがあるんだ」電話主のS・Mが教えた。「中身は魚じゃない」

「肉か」

「食いもんじゃないから腐らない」Sは保証した。「ヴィデオ・ゲームだ」

「それは運べるものなのか?」

 Dが尋ねると、Sは彼のために複雑な詳細を省いて説明してくれた。

「家庭用ゲーム機だ。日本製の。タイプライターよりもずっと小さい」

「オーケイ」

「それで、そのヴィデオ・ゲームを積んだトラックが、空港の倉庫から小売店をまわる」

「うん」

「最新のソフトとセット販売だそうだ。世界じゅうが発売日を待っている」

「へえぇ」

「俺たちも待ち遠しいな」

 Sが言った。それはもちろん、ゲーム機と最新ソフトで遊ぶという意味ではない。(Dはソフトがなんなのか知らなかったが、知る必要もないように思われた)トラック運転手に化けた二、三人の男が、倉庫へ行って、小売店ではなく別の場所へ積荷を運ぶという意味だ。たぶん仕入れ先にこだわらない中古品販売店の裏口だろう。

「ブツの出発は正午だ。十時にはお前に会いたいんだがな」Sが提案した。

「いいよ」

「ところでAに電話したんだがな。留守番電話なんだ」

 Dは目を閉じた。Sと二人だけでやってやれないヤマではないが、いつぞやの魚運搬トラックの件もある。声をかけなければあとで面倒くさいことになるだろう。

「俺も電話してみるよ」

「そうしてくれ」Sが言った。「三人ほしいんだ。もしかしたらゲーム機を積み込むところまでやらなきゃいけないかもしれないからな。あいつがだめならほかを当たろう」

 電話を切ったあと、Dはリヴィングルームの時計を見た。まだ午前八時にならない。こんな早くからA・Kがどこに出かけているのか知らないが、それはDの知ったことではない。

 そもそもしばらく前に、Kは留守番電話をやめたはずだった。電話狂いで、Dのアパートメントにも訪問販売のように押しかけてきては、あちこちに二号三号の電話機を設置しようとして、撃退されていた。ところがある日、Kの留守番電話アナウンスを聞いた偽の友人のだれかが、彼の部屋に空き巣に入った。Dにとっては人生で最も痛快な出来事の一つに感じられたものだが、ともかくその一件以来、Kは留守番電話を使わないことに決めた。

 それなのにまた始めたのか。

 非常にしぶしぶ、DはKのアパートメントに電話をかけた。無駄だとわかっていても一応やっておかなければ、あとでうるさいからだ。

 コール音。ガチャ。

「……はい、こちらA・K。留守かもしれないし、留守じゃないかもしれない。とにかくすぐには電話に出られない……」

 いつぞやの電話アナウンスよりも、ずいぶん陰気だった。しかも機器の性能まで悪くなっている。本物よりも機械的な声をしているのは当然にしろ、ずいぶんかすれていて、聞き取りづらかった。

「用があるなら、このあとにメッセージを残しておいてくれ。よろしく……」

 ピー。

「Dだ。Sからのメッセージは聞いたか? お前が無理ならほかの男を探すぞ。あとで文句を言わないで――」

 ガチャッ。

「おいっ!」

 Kの電話機が勝手にしゃべり出すのは、初めてのことではなかった。用件は伝え終えたDが電話を切らなかったのは、機械が彼の名前を猛然と呼びまくったからだ。

「JJJっ、――っ、JJJJ、――っ、俺はっ――、ここにっ――、い、る――」

 おまけにひどく咳き込んでいるような音がした。Dはなぜこんなひどい電話機を使っているのか、Kの気が知れなかった。やはり最新型などろくなものはない。古き良きシンプルなダイアル式電話機こそ至高だった。人間は電話機に無駄なものをつけすぎた。

 ノスタルジックになりながら、Dは穏やかな声で話した。

「お前はいないんだろ?」

「いるって言ってんだろ!」

 三十分後、西三十丁目にあるKのアパートメントの前で、Dはうんざりした気持ちで立ちつくしていた。玄関のベルを押したかったが、二重にしたセイフウェイ・スーパーマーケットのビニール袋で、両手がふさがっていた。

「どうして俺が?」彼はつぶやいた。

 

 

◆◆◆

 

続きは、記事最後のリンクから。(イニシャル表記なし)

 

 

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三、ココナッツと蜘蛛

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 ケルプ宅でココナッツ型金庫に挑むドートマンダーの耳へ、留守電経由で妙なメッセージが続々と届きはじめる。『骨まで盗んで』(1993)の後くらい。