A.Banana.S

古代ローマ、NACSさん、ドートマンダーにパーカー、西武ライオンズ、FEプレイ日記(似非)・・・好きなことをぽつぽつと。

あと13年!? 本気でまずいぞどうするつもりだ!?

 

4作目、ほんとになんにも手つかずだし……!

このところ「仕事以外、鬱」みたいな状態で、休みがあっても無為に過ごしているし……!

ダメすぎる……! 

推し活すらしないで、なんのために生きているのか!?

それともとうとう燃え尽きたか……!?

 

 

しかし、一年前のこの日恒例のブログ記事も、だいたい似たようなことを悶々と書いておりましたな。

その後まもなく、リアルでの盛大なやらかしやら引っ越しやらなにやら、自分史上最低を更新する行い。

そして結局、見たところはなにも変わっていないような今があります。

 

とはいえ、その昨年でも、あまりおおっぴらに言えるものではないですが、約35万字はその後書いて、上げたという……

 

あ、あれっ……? わりと書いたな。クオリティはさておき。

 

今だってやりたいことは色々ありまして、4作目もそのひとつ。

 

どれにも本腰を入れられずにいるのは、昨年や一昨年(もっと言えばコロナ禍とほぼ同期間に)色々あったからか、まだその「後遺症」(※たとえです)を引きずっているのか。

 

もう一度自分が燃えるのを気長に待つか、あるいは待つばかりでなくなんとか燃えるよう、無理矢理にでも少しずつ動くべきか。どう考えても動くべきで、三日も引きこもりはまずい……!

 

別段不幸ではなく、幸福なほうだとは思いますが、いったいなにが楽しくて生きているんだ? もう過去の思い出だけで生きていく気か??

 

……ま、まぁ……ようやっとそろそろ、次のことを考えられる時期に来た、はず。

 

こんなんで申し訳ございませんと、上の写真を見ては思うのでした、2024年。

 

ああ、2037年の3月16日には、シリーズ小説を書き上げたうえでお墓参りに行きますという、勝手な宣言をしているのです、ずっと。あの2014年の8月19日以来、ね……

 

anridd-abananas.hateblo.jp

 

 

 

捧げものの古代ローマ短編(アグユリ?)(ティベヴィプ?)

 

以下ですが、本年2月に、いつもいっぱいいただいてばかりの御礼(と、こちらが新年のご挨拶も果たさなかったお詫び)に少しでもなればと思って書いた、短編です。

 

拙著、古代ローマ歴史フィクションの三作目『世界の果てで、永遠の友に』の……あー、えー、まぁ、その後の時系列で書いた話です(前19年の設定)。

 

捧げたものではありますが、「こぼれ話」として本ブログにも掲載いたします。

 

 

※※※※※

 センティウス・サトゥルニヌスとルクレティウス・ヴェスピッロが執政官の年の八月下旬(前十九年)、ティベリウスは首都ローマに戻った。先に従者を行かせていたが、ただ一人馬を駆っただけの、ひっそりとした帰還だった。二年余りも留守にしていた。

 本当はもう少し後で、継父アウグストゥスとともに帰国する予定だったのだが、ひと足早く戻ってしまった。ティベリウスとしては、これほど長く留守にすることになるとは、遠征に出た当初は予想していなかった。けれどもそのことに不満があるわけではない。むしろもっと長く外地にいてもよかったと感じているくらいだ。それくらい充実した日々だった。

 アルメニアへの軍事遠征、続くパルティアとの和平協定を終えてから、もう一年が過ぎていた。つまり、ティベリウスアウグストゥスの名代として果たさねばならなかった役目は、その時点で済ませたはずだった。だからすぐさま帰国することもできなくはなかった。

 そうであるのにティベリウスは、その年の夏にはロードス島の教師テオドルスの下で学問に没頭し、あるいは友人たちと東方世界やギリシアのあちこちを歩いてまわり、凝りもせず旅と冒険を満喫したのだった。それになによりもまず、継父を一人東方世界に残しておきたくはなかった。かつてマルクス・アントニウスと女王クレオパトラを打倒した後のように、継父は今また東方秩序の再編に取りかかっていた。アルメニアに親ローマ派の王を据え、パルティアと和平を結んだからこそできることだった。ティベリウスは十数年前のあの日々よりももっと公に、かつ一人前の男に成長した心身をもって、継父の傍らで統治を学んだ。補佐といえるほどの仕事ができたかはわからないが、頼まれることがあればなんでも取り組み、役に立とうと努めた。

 そういうわけでティベリウスは、首都をあとにしてから二年余りが過ぎていたことなど忘れて過ごしていた。継父は今はギリシア本土にいるか、もしかしたらローマ本土の玄関口であるブリンディジに入港したかもしれない。いずれにせよ、ティベリウスがひと足早く帰途についた理由は、もう継父の帰国も間近であるためと、もう一つ、友人ルキリウス・ロングスの祖父の具合が思わしくないという知らせを受けたためだった。ロングス爺はもう八十五歳であり、とんでもない長生きをしていた。それでルキリウスも、知らせにさして動揺するでもなく、覚悟もしていたし、でもまぁ、間に合うんなら間に合うに越したことはないか……とつぶやきながら、故郷であるポッツォーリ行きの船に乗った。ティベリウスもそれに同乗し、ポッツォーリでルキリウスと別れて後、一人首都へ馬を駆ったのだった。

 継父が帰国する前に、首都の状況をこの目で見ておくのも悪くはないだろう。それに直接会って、報告やらつもる話やらをたっぷりとしたい人もいる。

 ティベリウスの荷物は、主に継父の右腕であり、現在は首都の実質の最高責任者であるマルクス・アグリッパへの手紙、それに彼の家族への土産物だった。

 クイリナーレの丘の麓にあるアグリッパ邸に到着したのは、首都がいよいよ夕焼けに染まりはじめた時間だった。その邸宅の門を前に、ティベリウスはしばし目をしばたたいていた。

 ひょっとして家を間違えたのだろうかと思った。否、アグリッパ邸に来るのは久しぶりだが、初めてではない。初めてではないのだが、何かが違う。何がどう違うのかはまだわからない。だが何か妙な気がする。家のたたずまいというのか、雰囲気というのか。それになんとはなく門の向こう側から漂ってくる香りもまた、ティベリウスにはなじみのないものに感じられた。特段鼻が敏感であるというわけではないが、ティベリウスの知るアグリッパの香りとは、いつもさんさんと照りつける太陽を思い出させる。そしてその下でじっくりと恵みを蓄える大地と、そこで汗を流して生き生きと働く男たちの誇らしげな顔を連想させる。

 ところが、今目の前にしている邸宅のたたずまいからは、華やかさとでも言うべきなにか異質な──あくまでティベリウスが思うアグリッパからは異質であるなにかが、漂ってくる気がするのだった。

 それとも、二年ぶりに訪れた自分の感覚がどこかでおかしくなってしまっているのだろうか。

「いらっしゃい!」

  と、途端に門が開け放たれる。否、ティベリウスが門番に取次ぎを求めていたので、それに応えられるのは驚くべきことではない。それでもティベリウスが一時面喰らってしまったのは、聞いたことのない声が耳に飛び込んできたからだった。

 聞いたことのない、女人の声だった。「おかえりなさい、ティベリウス。久しぶりね!」

  その声の主である人が両腕を広げて現れてからも、ティベリウスは目をしばたたくのをやめられなかった。立ちつくしたきり、動けもしなかった。

  女人のほうは、まるでうっとりと目をうるませ、頬を紅潮させてさえ見えた。ゆるりと結い上げられたつややかな髪。その数本がこぼれ出て、ぷっくりとした桃色の唇をかすめている。まとうストラはきらめきながら薄く、体の線を隠そうともしていない。豊かな胸元も、ゆったりと膨れた腹部も。

「どうしたの、ティベリウス?」女人が微笑みながら、小首をかしげた。「あたしがわからないの?」

  ティベリウスはなおも沈黙していた。けれどもどうやら間違ってはいないようだった。この女人は知っている女人で、同じ屋根の下に暮らしていたことさえあったが、聞いたことがない声を、聞いたことがない調子で聞かせていた。見たことがないたたずまいを見せてもいた。

「……ユリアか?」

  ティベリウスはようやく口にした。ユリアはにんまりと笑った。

「もうっ、だれだと思ったのよ?」

  ティベリウスはこの女人のこんな顔を初めて見た。一応義理の妹であるのだが。

  気づいたときには、ティベリウスはユリアに腕を引かれながら、邸宅の敷地へ入っていた。本当に、触れられるばかりか腕を組まれてさえいると気づいたときには、思わずぎょっと飛びのきさえした。

 短くはない縁のある娘であるが、触れられた記憶など一切なかった。ティベリウスから触れたことだってなかった。

 ユリアはそれでもティベリウスの腕を離さなかった。それを自分の豊かな胸元に抱き込みながら、なおうっとりとうるんだ目で見上げてくるのだった。

「ねぇ、ティベリウス。あたし、変わったかしら? 綺麗になったかしら? あなたも一段とたくましくなったわね」

  と、軽くティベリウスの胸を叩くことまでする。それが重い衝撃だったわけではないが、ティベリウスは眩暈を覚える心地さえした。

「……いったいどうしたんだ?」

  口を突いて出たのは、そんな間の抜けた疑問だった。

「なにがあった?」

  これはユリアに見えるが、ユリアではない。ティベリウスの知るユリアとは、こんな女人ではない。明るく陽気に声を張るなどできない。気やすく男に触れることも、声をかけることもできない。青白くて、痩せぎすで、縮こまった体をして、心ではいつも自分を哀れんで、めそめそと泣き言をこぼして、なぐさめてもなにをしても「でも ……」「だって……」とくり返していた、自信の持てない、気弱な幼い娘。

  そんなユリアはいったいどこへいったのだ?

  うふふ、とユリアは、また見たことのない含み笑いをするのだった。「なぁーんにもないわ。ここでかわいい奥さんになりたがっていただけ」

「そ、そうか……」

  我ながらまた間抜けな返事だと、ティベリウスは思った。だが確かに、ユリアがアグリッパの妻となってからこの邸宅を訪れるのは初めてだったと気づいた。

  そうなると、この邸宅のなんとはなしの変化とは、そのままユリアの変化であるというわけか。つまり、ユリアの変化がこの邸宅を変化させたのか。

 まったくなんとはなしどころではなかった。

 それに──。

 不躾とは思いつつ、ティベリウスは目線をさらに下げざるを得なかった。

「懐妊しているのか?」

「そうよ! 二人目!」

 ユリアはぱっと顔を輝かせた。この表情は見覚えがないわけではなかった。アグリッパとの結婚式で見せた笑顔によく似ていた。

 ユリアは我が膨れた腹をぽんっと叩いて見せた。あまり品のある仕草とは言えなかったが、親しみやすさはあるのだろう。

「今度は女の子がほしいわ! でもお父様は、男の子がいいっておっしゃるんでしょうけど」

  お父様とは、今頃ギリシア本土かどこかにいるはずのアウグストゥスのことだ。ユリアはかの人のただ一人の実子であるのだ。「……君の子息は……ガイウスは健やかでいるのか?」

  ティベリウスは思い至ったので、とりあえず尋ねてみた。ガイウスとは去年ユリアが出産したアグリッパ家の長男だ。

「もちろんよ。もうお父様への手紙には何度も書いたのだけれどね」  と、ユリアは今度は明白に不満げな顔を作る。

「こんなにお父様から手紙をもらったことなんてないわ。むしろ出産するまでは一切れもなかったんじゃないかしら、手紙なんて。もううんざりするほど届くのよ。それで中身は全部『ガイウスは元気か?』ばっかり」

 ガイウスとはアウグストゥスにとって待望の初孫であるのだ。そして今や世界でただ一人、自分の血を継いでいる男児でもあった。

 今ユリアの胎内にいる子が男児であれば、二人になるが。

「もうちょっとあたしのことも気にかけてくれていいと思わない? でもまぁ、いいの。今に始まったことじゃないし。これでも前よりものすごく気にかけてくれるようになったくらいだし。手紙でだけど」  ティベリウスは未だに眩暈を覚えていた。ユリアとはこんなによくしゃべる女であっただろうか。

「お父様も、あなたのお母様も、まだ帰ってこないのよね?」  と、見上げて尋ねてくる。ティベリウスはかろうじてうなずいてから、「本年じゅうには──」とつぶやくように言う。

「帰ってこなくていいわ!」

  信じられないほどの大きく響く声を発し、ユリアはティベリウスの腕をぶんと振る。そして大げさにため息までついてみせる。「そのほうがあたしもずっとのびのびできる。面倒な気も遣わなくていい。窮屈な思いをしなくてすむ。どっか遠くで、お元気で過ごしてくれてればいいのよ、夫婦仲良く」

  一応、ティベリウスの母親がアウグストゥスの妻であるのだが、ユリアはもう遠慮もしない。

  それからまたぱっと世にも輝く顔を見せた。

「ねぇ、わかる? あたしが帰ってきてほしい人は、今や世界でたった一人よ! ねぇ、ねぇ、だれだと思う?」

  ティベリウスは猛然と目をしばたたくばかりだった。そのただ一人とやらが、ユリアを大変貌させた張本人であるらしいことだけ、なんとか察していた。

「決まってるじゃない! あたしの旦那様よ!」ティベリウスの腕を引っこ抜かんばかりに引きながら、ユリアは叫んだ。それからしきりに跳ねるのだった。

「もうっ、ひどいわよね? あなたから今日には来るって連絡をもらっていたのに、あの人、急に水道のどこかで問題が起こったとかで、お昼には出かけちゃったのよ。陽が暮れるまでには戻るって言ってたんだけど、いつまで待たせる気なのかしら?」

「アグリッパ……」だいぶ遅ればせながら、ティベリウスはそこらじゅうをきょろきょろと見た。助けを求めるように。「アグリッパはいないのか……?」

「あなた、話聞いてた?」

  ユリアはじっとりと目を細くする。それから駄々をこねるように、またティベリウスの腕をぶんぶん振る。

「さっきあたしはまた使いを出したのよ。今日五度目よ。『すぐに帰ってこないと、あなたの可愛い奥さんはティベリウスと浮気をしてやるわ!』って」

「なに?」

  ティベリウスは思わず眼を剥く。

「馬鹿ね。冗談よ」

  ユリアはつんとすまし顔をする。こんな口の利き方も態度もできる女ではなかったはずだが。

「だって今のあなたと浮気したって、ぜーんぜん面白くなさそうなんだもの。奴隷たちが噂してたんだけど、あなたって人は、だれかがわざわざ呼んでくれた商売娘さんたちを何度も追い返したんですって? それじゃあ、まだまだ全然女というものの扱い方っていうか、愛し方を知らないだろうし、ひょっとして未だに童──」

「いったいなんの話をしてるんだ、お前は!」

  まったく信じられず、ティベリウスは声を荒らげていた。

  しかしユリアときたら、少しもこたえた様子がなかった。優越感にも見える陶酔したまなざしを向けてくるばかりだ。その先で、ティベリウスではなく別の人物をまるで見つめているようだ。

「でもお酒を飲んであなたと戯れてみたら、あの人もちょっとは妬いてくれるかしら? そして夜になったら、いつもよりもっと激しく愛してくれるのかしら?」

「ユリア、いい加減に──」

「でも、あの人ったら全然妬いてくれないの。なんでもユリアの好きにしていいよって。それに、ユリアはなにをしても可愛いよって。もうっ、大人の余裕っていうの? 悔しいったらないわ! あの人、あたしを子犬だとでも思っているのかしら?」

「あのな──」

  確かに子犬には近かった。だれかれ構わずキャンキャン吠えまくるが、ご主人が帰ってきたら全部を放り出してまっしぐらに飛びつきにいきそうな子犬だ。

  ただし、子犬は夜の愛し方云々の話はしない。

「あたしがこんなに愛してるのにーーっ!」ユリアはついに地団太を踏みはじめた。「どうして早く帰ってきてくれないのかしら!」

「ユリア……」ティベリウスは頭痛を覚え、実際に頭を押さえてしまっていた。「アグリッパがいないのなら、私はあとで出直す」

「なに言ってるの!」

  ユリアは信じられないとばかりに飛び上がる。未だティベリウスの腕を離さないまま。

「もうすぐ帰ってくるわよ! それまで待っていればいいでしょ?」

「いや、アグリッパが帰ったら呼んでくれ……」

「だめよ。そのあいだ、だれが旦那様のいないあたしのさみしさを埋めてくれるっていうの?」

「知らん」

「ガイウスのことも見ていってよ! ねぇ、とっても可愛い子なのよ。あの人によく似てる!」

「あとでいいだろう」

「あなたって人は──」ユリアがほとほと呆れ返るとばかりの顔をするが、そんな態度を取られる筋合いはないとティベリウスは思った。

  いや、あったのだ。今回ばかりは。

「なんて女というのをわからない人なの? あなた、自分の婚約者に挨拶もしないつもり?」

  ティベリウスはのけぞるほどにはっとなった。ようやく気配を感じて、見やると、列柱の脇にひっそりと、打ちひしがれたように立ちつくしてこちらを凝視しているアグリッパ家の長女がいた。

 ほとんど最悪と言っていい再会だった。

 

 

 

  アグリッパが帰宅するまでのあいだ、そして女主人ユリアが晩餐用だと言って衣装を変えたり髪や化粧を直したりするあいだ、ティベリウスはヴィプサーニアに色々と詫びた。八歳も上であるネロ家父長の立場は脇へ置いた。置くしかなかった。

  任務もあったとはいえ、二年も遠く東方で世界を満喫して過ごした。そのうえ帰ってくるや否や、彼女とさして年も変わらない義妹にまとわりつかれ、品のない話題で言い合いを演じていた。

  それにしてもヴィプサーニアは、二年もそんな継母のいる家で過ごしていたというのだろうか。まさかこの婚約者まで恐るべき変貌を遂げてしまったのだろうか。

  けれどもヴィプサーニアは、健気にも最初の衝撃から立ち直っていく様子だった。ティベリウスのぼそぼそと言い訳めいた詫び言を、とても真面目なうえに気遣わしげな様子で聞いていた。そしてしだいに、控えめながら瞳を輝かせていくのだった。

「ティベリ様……」

  十四歳になっていたヴィプサーニアは、今や喜ばしそうに体を小さく震わせていた。

「無事にお帰りになってうれしいです! お待ちしておりました!」 

 この時、ティベリウスはほとんど涙をこぼしそうになったとはだれにも言えた話ではない。

  ユリアの華やかさに比べれば素朴であるとするしかなかったが、ヴィプサーニアはティベリウスの知るヴィプサーニアのままでいてくれた。

  よくぞ──。

「ちょっと、ティベリウス!」

 化粧直しの途中であろうに、ユリアが自室から声を張ってくる。

「ちゃんとヴィプサーニアに声をかけてあげたの? 可愛くなったとか、見違えるほど女らしくなったとか?」

  そういう話をするだけの余裕を強奪した張本人がどの口で言うか、とティベリウスは思った。元々そういう話に気をまわせる性格ではないことは、ティベリウス当人ばかりか、その誠実な婚約者までもわかっていることだったが。

 

 

 

「おおおっ、坊ちゃん! お帰りなさい! いやはや、まあまあ、すっかり将軍の顔になりましたな!」

  アグリッパが仕事を終えて帰宅してから、晩餐会が開かれた。主人アグリッパとティベリウス、それにユリアとヴィプサーニアだけの、ささやかではあるが、季節の食材と女主人の容姿と身なりが豪華な席ではあった。ティベリウスは緊張で縮こまっているようなヴィプサーニアと並び、同じようにほとんど身をすくませていた。アグリッパとゆっくり話したいことはたくさんあったのだが。

  まぁ、晩餐の席とは、仕事の話をしないものではあれど……。

「いやぁよ、あなた。お父様が帰ってきたら、今度はあなたがどこかへ遠征に出てしまうんじゃなぁい?」

  食事もそこそこに、ユリアはアグリッパにしなだれかかりっぱなしだった。

「そうかもな」

 そんな若妻へ、アグリッパは普段の気さくさそのままにこにこと応じている。慣れているとばかりに。

「けれどもこちらの坊ちゃ──いや、ティベリウスが活躍してくれたおかげで、私はもう二年余りも首都でゆっくりさせていただいた。妻と子どもたちに囲まれて、たっぷり英気を養ってな。だからカエサルの命令とあらば、いつでも喜んで出かける所存──」

「だめ!」若妻はわっしと夫にしがみつく。「あたしがさみしくて死んでしまうわ!」

「それは困るな、ユリア。であれば、途中までは一緒に来てもいいんだよ? ガリアであればリヨンまで。ヒスパニアであればタラゴーナまで」

「いやよぅ。外国は怖いわ。野蛮な男たちがいっぱいいるんだわ。あたし、襲われちゃうんだわ」

「そうはならないように、私がお守りするよ」

「そんなこと言って、また道路修理だ水道建設だって、何日も留守にするくせにぃ」

「ははは。ユリアにはすっかりお見通しだな」

「今ここにいてだって、朝から夕暮れまでほとんど毎日出かけているくせにぃ」

「家で君が待っていてくれると思うと、仕事のし甲斐があるというものだよ」

「あたしはさみしいのよ! 毎日あなたが帰ってくるまで泣いているのよ!」

「それは困ったな、奥さん。君はいつもガイウスと一緒に太陽のような笑顔で私を迎えてくれるから、気づかなかったよ」

「な、泣いてるんだから……」

「いつも家を守って、ガイウスをしかと育ててくれて、感謝しているよ」

「浮気してやるわ!」

  びくともしないアグリッパの笑顔めがけ、ユリアは言い放つのだった。

「あなたが仕事でいないあいだ、他所から男を呼んでやるわ! あたしにさみしい思いをさせるあなたが悪いのよ!」

「いやはや、だとしたらどんな男だろう? 乱暴者では大変だから、そんな危ない真似はやめてほしいよ」

「……もしかしたら家の中にいる男かもしれないわ。奴隷のあれとかこれとか」

「うーん、我が家には懐妊中の奥さんに悪いことをするような者はいないと思うがね」

「懐妊中だから、遠慮なくやるのよ! やりたい放題よ!」

  ティベリウスとヴィプサーニアは同時に食べ物をむせた。だがアグリッパは顔色一つ変えない。ただひたすらに優しく妻に言い聞かせるだけだ。

「ユリア、体に障るから無茶なことはしないでくれ」

「だったら早く帰ってきて!」

「そう努めるよ」

「あたし、ヴィプサーニアと違って、石像の夫で満足することなんてできないんだから!」

  ヴィプサーニアが椅子から飛び上がった。ティベリウスもまたひっくり返りそうになった。

  この家には確かに、ティベリウスの石像が置かれていた。十歳当時のそれだが。

「石像のあなたの体は全然あったかくない……。触っても楽しくない……」ユリアがじめじめと言った。  ティベリウスは背中に嫌な汗が吹き出すのを感じた。どんどん聞いてはいけない方向へ話が向かっているように感じられた。横のヴィプサーニアにいたっては泣き出しそうな気配さえうかがえるのは気のせいだろうか。

「ユリア、石像でも残暑が厳しい今の時期は、触ると火傷をするくらい熱いことがある。よく気をつけるんだよ。銅像であればなおさらだ」

 アグリッパはなんでこんな台詞を返せるのだろうか。

「あなたは馬鹿?」

  ユリアはとうとう夫の肩をぽかぽかと叩きはじめる。

「今度、このあいだ画家が描いていった、あの体位を実行してやるわ。お化粧台の横の絵よ。石像の腕も足もあれももげるに違いない わ! 粉々だわ!」

  なんだって、なんだって──とティベリウスとヴィプサーニアは絶句する。

  確かにこの家には、つまり男女が夫婦の営みとやらを致しているらしき絵画が、敷地内の私室の壁に、飾られたり直接描かれたりなどしていた。立派な邸宅を持つような家では、その種の作品を飾ることが優美であるらしいと話に聞いたことがあるが、それにしても以前にこの家を訪れた時には、一作も目にもつかなかったものだ。

「そうなったらまた新しいのを作るしかないか」アグリッパはなお平然と微笑むばかりだ。「この四十四歳にもなるおじさんの像になってしまうのが、少々悲しいがね。できればもっと若い姿のを残しておきたかった。ガイウスや、これから生まれてくる子のためにも。少しでも見栄えがましな父親を見てもらいたいものだった」

「あなたは今がいちばんかっこいいのよ」ユリアがためらいもなく断言する。「新しい石像をこしらえても、外に出さないわ。ほかのどの女にも見せてやらないわ」

「ありがとう、ユリア」

「……そういう話じゃないの!」

  ほとんど夫の背に乗り上がって、ユリアは揺さぶっていた。

  いったい自分たちはなにを見せられているんだろうとティベリウスは途方に暮れる心地だったが、きっとヴィプサーニアも同じだろう。

  彼女は、この家で二年もこうした光景を見せられていたというのか……。

「もう眠いわ」

  終わらないように思われた夫婦の睦まじい会話も、とうとう区切りをつけることにしたようだ。ずいぶん際どい区切りだが。

「ねぇ、あなた? 一緒に寝ましょう、あなた。愛してちょうだい、あなた……」

「悪いけど、ユリア、先に休んでいてくれないか? ガイウスに接吻を忘れずにね。私は坊ちゃんとまだ話したいことが──」

「あたし、あなたが抱いてくれないと眠れないんだから!」少しも眠くなさそうに叫んだ。「まず優しく頭をなでてくれて、それから急に激しい感じにして、思いっきり──」 

 この宴席で、ユリアは葡萄酒を口にしてはいないはずだった。妊娠中だからと止められていたはずだ。それなのに酔ってでもいなければ到底口にできないような「具体的な」話を、次から次へと聞かせるし、求めるのだった。ティベリウスは耳を塞いでしまいたかったが、礼儀からか遠慮からか、ただ認めたくなかったからか、かろうじてこらえた。

  やがてユリアは奴隷たちの手で、半ば強引に寝室へと連れ出されていった。アグリッパはこの食堂の出入り口まで妻を見送り、「ゆっくり休んでおくれ」と、その額にねんごろに接吻をしてから、食卓へ戻ってきた。

「さてと、坊ちゃん」

  まるで何事もなかったかのように、アグリッパは穏やかに笑いながらティベリウスに向き直った。

「きっとまた数日内にカエサルの下へ引き返すのだろう? 見てのとおり、ユリアも子どもたちも健勝でいると伝えてもらえるとありがたい」

「……はい」

「ではでは、さてさて、どの土産話から聞かせていただこうか」

「アグリッパ」

  思い立って背筋を伸ばしてから、ティベリウスは深く頭を下げた。

「どうかご息女を私にください」

「ええ、それはもちろん」

  きょとんとしたのは一瞬で、アグリッパは満面の笑みになる。「ずっと昔から約束をいただいていた。今や君も二十二歳、ヴィプサーニアも十四歳。カエサルとリヴィア殿が戻られ次第、待ちに待った挙式を──」

「いえ、今すぐ」ティベリウスは迫っていた。「どうか今すぐ。明日にでも」

「えっ?」

  これ以上この家にヴィプサーニアを置いてなるものかという突然の信念で、ティベリウスは結果を急いだ。もはや手遅れであるかもしれないなどとは、考えたくもなかった。

  いったい自分はなぜ二年間も遊び惚けていたのか。

  結局ティベリウスの並々ならぬ決意にもかかわらず、婚姻はこの年の暮れまで延期となった。ティベリウスは一家の長であるが、さすがに実母も継父も健在で近くにいるのに、待たずに挙式をするわけにもいかず。

  その少し前、ユリアは無事に女児を出産した。そして早くも次の子を授かりたいんだから今夜も今夜も──とアグリッパをせかしているらしい。さすがにまだ止められているそうだが。

  正直、あの日義父アグリッパの家を訪れて以来、ティベリウスは夫婦とはなにかわからなくなっている。それまでもわかっていたわけではまったくないが、ほかの人たちがそうであるように、なんとかなるようになると漠然と考えていたのだった。

  ユリアをあのように変貌させたのは、間違いなくアグリッパの功績だった。そしてどんな女になったのであれ、ユリアがこれまでの人生の中で最も幸福である日々を過ごしているのもまた間違いないのだろう。

  アグリッパはユリアを幸せにした。

  そしてそんなアグリッパもまた、これまでよりもいっそう輝く魅力的な男に見えた。「今がいちばんかっこいい」との妻の言葉は、ただ惚気ているだけでもないだろう。

  自分はあの人の最愛の娘を幸せにできるのだろうか。

「ティベリ様」

  ある日、家に帰ると、ヴィプサーニアが両腕を広げ、腰を下げ、両足を踏ん張り、オリュンピアの拳闘士のように立ちはだかっていた。

「おかえりなさいませ! お待ちしておりました!」

「ヴィプサーニア」

 ティベリウスは目を閉じた。そのまましだいに笑みがこぼれていくのを止められなかった。

  悪くはない。確かに悪くはない。

  とにかく夫婦生活とは、どんなものであれ、退屈とは縁遠いものであるようだ。

「ユリア様がご本を届けてくださいました」

 回廊を奥へ並んで歩きながら、新妻が報告した。

「良き妻となるために、『夫への尽くし方』を詳しく記した詩集であると」

「読まずに送り返しなさい。絶対に」

 

 

 

(終)

※※※※※

上記の内容を、いたるさんはすでにファンアートとして絵にしてくださっています(ご本人様のSNSにて)。オチには「むしろキミが読むべきだ!」との的確すぎるツッコミまでいただきました! 書いた者として、このうえない喜びです。いつもいつも、いただいてばかりで、本当にありがとうございます!!

 

いたる先生は現在、コミックカルラさんにて『皇帝列伝』シリーズを連載しておられます。ティベリウス回がなんと初の大増量前後編だった、あの……!! 無料で読める話数も多いので、ぜひ!!

皇帝列伝 - いたる | コミックカルラ (carula.jp)

 

わたくしが過去にいただいたものはこちら。(※いたる先生の連載デビュー前のものです)(しかもこれらで全部ではない……)

 

◆三作目

(別所にて、ガルスとコルネリアも描いてくださっています……!)

From『世界の果てで、永遠の友に ~古代ローマティベリウスの物語、第三弾』 https://ncode.syosetu.com/n5712hm/

◆二作目

 

◆一作目


 

2023年の亀映画感想(タートルズを観てきました)

さて本年10月、気づいたら久しぶりに亀映画が公開されており、慌てて駆け込みました。

もはや30年にもなるつき合いとは……。

 

(※以下、ネタバレ全開注意!)

 

 

ノー事前情報で行きました。

 

 

 

まずは簡単に結論:

 時代を感じた。作品の面白さで言えば、2008年版と、テクノドロームを出して例のテーマソングも流した2016版(?)が、やはり強い。とはいえ、見どころは色々!

 

 

タートルズのキャラ造形は、2016版を継いでいます。つまり、ラファエロはやはりタフガイ路線。ただし、今回はさほどあからさまでなく、バレないといえばバレない。体格差がなければ。で、やはりミケランジェロがいちばん小柄。

思うのですが、体格差は出さなくてよくないですか? いや、彼らおそらく四つ子ですよね? NYの地下で同じ物を食べて育ち、その中で今作でもいちばんの「食いしん坊」認定されているマイキーが、いちばん小柄になるはずがないと思うのですが……。マイキー、ちゃんと食べてる? お兄ちゃんたちに実はピザ食べられちゃってる? むしろぽっちゃり系くらいでいい、いちばん大柄でさえいいと、個人的には思うよ。

 

冒頭、いきなり「バクスター」博士の登場からで、テンション大いに上がりました。で、byousatu^_−☆は気の毒でした。

 

が、、、

 

私のような30年のつき合いのファンにしてみれば、「今さら最初っからやらんでもいいよ……」、つまり亀からミュータントになってエイプリルと出会って云々から始めなくてもいいよ、という気持ちになりました。

しかし、時は平日夕方、映画館にはちびっ子たちも訪れておりました。そう、この子たちを観客とするのなら、最初から物語を始めねばなるまい、というか、この子たちのための作品なのだと、思い直し、反省した次第。……今はアニメ放送しているわけでもない、お父さんお母さんがタートルズを観ていた世代なんでしょうなぁ……(遠い目)

しかしこちとらは、いつぞや説明もなく、エイプリルが最前線でバトルしていても受け入れてきた戦歴があるのじゃ。ところが今回のエイプリルときたら、時代に合わせてというわけか、別の側面から驚かせてくれました。

 

亀四人衆の登場シーン。「世界一のヒーロー」、さっそく泥棒。……いや、確かに彼らの生計手段は長年の謎だったけども。

もうドートマンダー一味でしょ。コソ泥だけど。レオ=ドートマンダー、ドナ=スタン・マーチ、ラファ=タイニー、マイキー=ケルプでいいですよ、コレ。あれくらい許されている感じなのが、ニューヨークってかい。現在の治安を思わせる……とは考えすぎか。

まぁ……ニューヨークとは、悪党争いもですが、ヒーロー争いも世界一熾烈ですからね! いつ、アベンジャーズに挑もうか?(えっ)

 

今回、最大の衝撃だったのが、スプリンターの設定の大幅改変。これはTMNTの根本に関わる大変革。スプリンター先生って、日本人か日系人でしたよね? で、自身も武術の達人で、だからタートルズの師匠=「先生」となった。これを改変しては、もう「ニンジャ」を名乗れなくならない?? そんな、現代らしく動画を見ながら子どもらと一緒に武術を覚えるとか、どこかの上田教授じゃないんだから、限度がありますって……! 強さの説得力が弱まってしまうよ。

 

そのせいか、今回のタートルズは、あまり強い感じじゃない。初期設定でデビュー戦から描いたのだから、それはそうだろうとも思われますが……。

大丈夫? 終わり方が、もう次作も製作するという意図を出していましたが、シュレッダーに勝てなくない? 

四人の中で、突出した強キャラがいないんですよね。昔はなんやかんやレオナルドが決めていた印象です。イメチェン(?)後は、ラファエロが強化されました。ドナテロは常にチート級の天才で、かつ2016年版では武力でも魅せる活躍ぶりでした。

今回は、時代を反映してか、バトル要素にかなり配慮が見られます。確かに、現実で戦争の悲惨さが伝えられる世の中、喧嘩など嫌だ、融和と共生、多様性の時代であれ、との思いもわかります。

テーマは、かつての「新しき陽気なヒーロー」→「レオとラファの対立を軸とした家族愛」ないし「ヒーローとはなにか?」→「種の共存と多様性」と移り変わっているように見受けられます。世はまさにダイバーシティ時代。

ただ、対決や戦闘を控え目にした場合、最近公開のワンピースやスーパーマリオ、それに名探偵コナンのバトルシーン(!)と比較されてもの足りなくならざる得ないよなぁ、と(オマエ、イイ年してどんだけ観にいっとるんや……笑)。過去のタートルズ映画と比較しても然りで。

 

スプリンターが、「先生」と呼ばれたのは最初のたぶん一回だけ、あとは全部「父さん」

確かに、この筋書きでいけば、「先生」より「父さん」が自然です。過去作では「父上」時代もありましたが、あれはあれでレオナルド一人にプレッシャーかかりすぎてましたからね。

で、「先生」から「父さん」になり、厳格さも薄まり、だいぶ人間臭い感じになりまして。挙句、まさかのとんでもない継母候補を連れてきて、息子全員に拒否られる。父さんとカノジョのイチャイチャに、容赦ないぜ、息子たち……! いや、あればっかりはしかたない。わたくしめも同意見ですわ……。

息子どもが四人(四匹、いや四体?)もいるのに、全員そろって捕まるせいで、こんないくらか丸くなった父さんでも大暴れにいく羽目に。タートルズ、仲良すぎ。もっとリスク分散して。昔はドナテロだけ残すとかなんとかしてたですやん。味方あと父さんしかいないのに、あんなに働かせないで。

 

次の驚きは、エイプリルの設定改変でしたね。なんと女子高生。わかりやすい白人美女でもない。スレンダーな体型でもなく、むしろどちらかといえばずんぐり系。そして……まさかの神楽ちゃん(ゲ○イン)ぶりに、申し訳ないが、いちばん笑ってしまった。笑っちゃいけない気もしましたが。

年上のお姉さん路線から、途端に同世代、クラスメイト路線に……! これもまた思いきりましたな。スプリンターといい、続編どうするんでしょうか。改変にしたがって、タートルズもまた、これまでと同様の成長を遂げることはないと思われました。

 

捕まっても深刻にならず、軽口を叩き合う亀兄弟。実は冒頭の登場シーンから、ノリがかなり初期アニメに近いと感じられました。軽め。にぎやか。ピンチだろうが急務だろうが相変わらずのんきにおしゃべりしているあたり、まさに初期。感動を覚えました……!

これは、レオとラファが、久々に喧嘩しなかったのもありましたね。あのあたりをピークに、思えばシリアスすぎた。

近年になく、仲が良い! そして過去イチくらいに、ティーンエイジャーしてました。スマホ持ってごろ寝。家にWiFiあるとか言ってた、笑。現代っ子な亀たち。

やはりだれかとだれかが喧嘩しはじめたのが、事の発端だったか……。

これはもしや……と、思いましたが、やはりラファエロはタフガイ路線でした。2008年版はギリ体格は全員同じしたが、以降はラファがいちばんゴツい大柄で続いています。

 

しかし2008年版は、体格同じだからこそ、際立ったんだよなぁ……! あの対決が!

 

ともかく、体格差さえなければ、ほぼ戻ったか、少なくともバレないラファエロでした。それくらい今回は、仲良くしていました。マイキーに、たぶんアンガーマネジメント的な「カウンセリングに行け」と言われていましたが……。

 

あと、ドナテロが、今回めずらしくチート天才路線を控えておりました。初期設定だからか、メカに強い……どころかただのマンガオタクになってないか……? 解釈一致すぎるメガネ着用は、とうとうやってきたか……と思いました。常時かけてましたわ、2023になって。

進撃の巨人』より『ONE PIECE』を参考にしたほうがいいよ、ドナ。今回のような場合はさ。

これまでのドナは、役に立ちすぎるマシンやポータブル機器を平然と開発し、空飛ぶ乗り物も操縦し、常に逆転の一手を握るチート。四兄弟、一人だけIQ違くない……?というほどに。

それが今回は、もう弱体化としか言えない。可愛さは増したが、タートルズ全体の戦力ダウンにつながってしまっている。車の運転は(無免許&初運転だろうに)さすがに上手いが、専用の空飛ぶ乗り物さえ飛ばしていたしなぁ、旧アニメ時代は……

(……ドナとマイキーの声優さん、入れ替えたほうが合っていたのでは……)

 

レベル1から始めた分、どうしても個の力が弱い。

とはいえ、強くなりすぎると、ラファが反抗期に入り、2008年版に突入する。(えっ)

 

たとえば、シティーハンターの映画などでもよく語られますが、「これでいいんだよ」というタートルズとは、個人的になんだろうか、と観ながら考えておりました。

もう、ファンフィクションでも書けば、我……?(やめなさい)

シティーハンターだったら、必ずゲワイ(Get Wild)を流す。ならば、タートルズもあのテーマを流してくれれば、ひとまずそれだけで喜ぶ単純な懐古主義ファンの私(今回は流れませんでした。やはりまだあのテーマで歌われる域のヒーローに、今作タートルズが達していないためでもあろうと思います)。テーマソングを流すほどの盛り上がりまで、あと一歩。

今回、ノリは初期にかなり近かった。

あと一歩、ラファの性格をゆるめに戻し、マイキーの体格を戻し、ドナを天才にし、個々の見せ場を作れば、これでいいんだよ、になると思う。で、レオには最後スカッと決めてほしい。ルフィみたいに。

そのうえで、仲間をたくさん増やせばいい。オールスター系のワンピース映画みたいに。

……ああ、このニ、三年で、ワンピースを読んだり観たりしたことが、少なからず私のアニメ系エンタメを見る目に影響しているようです。

 

2008年版は、最後にレオに挽回させれば、1億点だった……! ラファは大好きですが、持っていきすぎました。

でも、今作のラファもみんなも、もっとカッコよく描いていい。レベル1だからしかたないけど、カッコいいからこそ、やはりヒーロー! かつてオープニングでピザ食ってただけのやつだって、同じOPのラストカットやエンディングは惚れるほどカッコよかったですもの……!

 

で、私、シュレッダーには銭形警部的なものを求めてるんでしょうね。いや、とっつあんは正義側の人間だと承知のうえで。手ごわい宿敵だけど憎めないと言いますか、2割くらいドジ要素があってほしいと言いますか。2016年版は強すぎ&怖すぎと思いましたもん、シュレッダーの旦那。まぁ、以上全部、懐古ファンの勝手な願望ですけれども。

 

そんな感じの今年の亀映画でした。

 

実のところ、旧アニメばかりにこだわっておりますが、本当の原作やその他背景は、まったく知らないままです。知らなくてもいいし、いずれ我が幼い日の思い出は永遠だと思っております。小学校低学年女児がリッパなオバチャンにまでなろうと、亀さんらは世界一のヒーローであり続けるでしょう。

 

次作が公開されたときも、私は何歳だろうと必ず劇場へ行き、またぶつぶつと勝手な感想をつぶやくことでしょう。

もし万一ファンフィクを書きはじめるなどしましたら、あ、とうとう末期になったと思ってやってください(※予定はございません。無理でしょう)

 

 

ティーンエイジャー亀の過去記事はこちら。我が過疎ブログの中でも人気記事らしい。

2008と2014版↓

2016版↓

 

X(ツイッター)に、こんなつぶやきもしました。テニプリティーンエイジャーの宝庫(どう見てもティーンエイジャーじゃない人が少なからずいようとも).....なのにドナだけは置き換え妄想できなかったという話。

https://twitter.com/Anridd3rd/status/1711384010386227585

 

あと、これはおこがましくオマージュした拙著某箇所。

 

......思えばルッキー(ルキリウス)、たたき台はケルプとどこかの記事で書いた気がしますが、わりとかなりラファも意識されてますね。クールで皮肉屋だった初期の......ははは(汗)

 

 

ご生誕日。ところで、近況。

……というわけでして、毎年ブログをアップする日なのですが、此度は間に合わず小細工を……(言わんでいい)

 

(写真は、ポッツォーリからナポリ湾を臨む)

 

昨年は、古代ローマ三作目をアップしました。今年の今頃は四作目の構想に取りかかっている予定だったのですが……現在、まったくもってなにも手つかず。おお、このままでは不勉強どころか、またなにもかも忘れてイチから調べ直しだ……!

ら、来春には、構想を、そして夏には書き出したいと考えています。

今は、大変動の後、結果的に少しだけ状況が変わり、平日に書ける文字数が2000字程度と半減したため、どうなることやら、いつになるやらではありますが。

いや、それが普通だ。フルタイムでまともに働いていたら、そうなるのが当然だ……! 今までがおかしかったというか、恵まれていたんだ……。

 

なんて言いながら、今も暇を見ては、需要のない遊びの書き物をして、もう十万字超えしております。これが終わったら、古代ローマ四作目かと思っています。また脱線せねばよいが……

 

せ、せっかくの日に、目新しい記事も書けない状況が情けないので、埋もれた過去記事を貼ります。ご容赦。

 

(……えっ、9年前? ということは、来年でこのブログ10年目……!?)

 

 

(※以下、ご生誕日に無関係の、どうでもよい近況)

 

 

昨年の同日の記事は、ご生誕日のあとに、「長旅の途中から」などと書いておりました。

現在、どうやらその長旅が終わりました。本当に色々なことがありました(白目)。

もっと長いスパンで言えば、コロナ禍と重なっているのですが、2020年の開始とともに

荒波の只中にほうり投げられ、変化を余儀なくされたような日々でした。

その間、古代ローマ三作目やらあれやらこれやらを、隙を見て書いて完成させたのは、今思えば我ながら奇跡のようでした。……いや、そうやって我が心の楽しみを保っていたわけでしたね、きっと。

 

紆余曲折を経て現在は(白目)、ほぼ元通りになったと申して差し支えない状況です。

 

いや、やはり変わりました。迷惑をかけた方々には恐縮ですし、もう一度同じ道はたどりたくないとは思いますが、終わってみれば、一個人としてなにも無駄なことはなかったし、経験してよかったことだと思っています。そのうえで収まるべきところに収まることができた私は、幸運かつ幸福だと思っています。

 

そんななか、この秋私も「とある年齢」に達しました。いわゆる不惑ってやつですね。

惑いっぱなしの半生で、ぎりぎり間に合ったのか……?みたいな感じで(苦笑)

 

今は、決して永遠ではないとわかっている「平穏」が、もうしばらく続いてほしいとだけ願っています。

もう当分変化はたくさんだ! せめて今年度いっぱいだけでも、平穏無事に、落ち着いて仕事をさせてください! それが心の安らぎです。次の変化は、いずれどうなってもいつかは来るのですが、もう少しだけ平穏の中で休ませてください……!──というのが、現在の正直な気持ちです。

 

そうしているうちにも、人間は年を取ります。なにを為しても為さなくとも。

 

老化はきました。わかりやすく、笑。他人様よりたぶん早いとか遅いとかなく、普通に。どっか痛いとか病気だとかいう類でないのは、幸いですが。

 

好きなものごと、推し、という点では、変化がありません。相変わらずNACSさんファン、西武ライオンズファン。最も愛する作品も同じ。3年を経て、好きではなくなったものはたぶんない。

ただ、旅したい欲は、かなりなくなりました。狂ったように毎年県外に出かけていた、あのフットワークが夢のようです。やはり年を取ったということか、それとも諸々世知辛い世の中であるせいか。

まぁ、実生活で引っ越し&転職を二度も三度もしたのだから、いくら楽しみのためとはいえ、旅行したいと思わなくなるのも、当然の現象かもしれませんな。

肉体はともかく、精神のほうは成熟しないまま老化へと向かうところのなのか……?

まぁ、ともあれ、半端に若いよりは、楽になったと思うようにしてもいいか、と。

 

若いってのは大変だな。一方で、老齢を生きるのも大変だな。

今はちょうど、その「間」にいるんでしょうか。

こういう時に書いておくべき小説が、なにかあるような気がしているこのごろです。どうにもまだ構想になりませんが。

 

くり返しますが、しばらく神様仏様、変化はご勘弁を、の心境。仕事と家の無事往復、時々書き物で、幸福を実感する日々なのです。

 

そして、「なんのために戻って来たのか」と毎日思い返します。

他人から見れば短絡的で、刹那的で、長いヴィジョンもなにもなく、取るに足りないであろう望みが、叶ったところなのです。喜びを噛みしめて生きています。

 

結局こういう生き方しかできない人間。それを受け入れるのが「不惑」なのでしょうか。

 

とはいえ、年は取ったにしても、老け込むにはまだ早い。隙のあるうちに、パワー充電しておきます。

……と、無理矢理まとめます。

 

 

次記事は、今年の「亀映画」の話でも上げたいですね……!

 

 

 

 

 

 

リーフ王子のグランベル778の、一応続編

 

......を、pixiv様にアップしました。こちらにはまた最初の1ページのみ載せます。

 

大変ご無沙汰しておりました。

 

わたくし自身の(残念な、笑)近況は後日書き残すとして、とりあえず以前とほぼ同様にものを書けるくらいには、諸々回復しました。ははは......。

いやまったく、こんなにかっこ悪いカムバックはないですって!

 

と、と、ともかく、いちばん長く続けているブログを、いい加減ちょっとはアップデートせねばと考えてもいるのですが、ひとまずこちらに、例の続編(?)の最初の1ページをば、取り急ぎ......(今さら急ぐ必要などどこにもなかろうに)

 

 

 

【シリーズ「仮オーブ魔物たち〜聖戦&トラ7のオールキャラ〜】

 

(※......もうちょっとなんか......いい感じのシリーズ名思いつかなかったんか.....,。全4話で、第3話までは、未推敲ながら書き上がっているので、そこまでは上げるかと)

 

第1話 オバケ砦の兄六人

 

 

第1話 オバケ砦の兄六人

 


 ゾンビが出るという噂の『オバケ砦』に、たまたまその辺りを行軍中だったセリス軍十名程度の人間が、賊退治に行くように命じられたのは、南トラキアを出る直前のことだった。
「……そのご命令はセリス様からですか? それとも父上……軍師殿のご判断ですか」
 風の勇者セティのじっとりと疑わしげなまなざしが、実父をにらんだ。
 どういうわけかこの日の父レヴィンは、いつもの冷徹な軍師の雰囲気が薄いように思われた。それどころかどこか軽薄にさえ見えたのだが。
「あー、私の判断だが、セリスも言ってただろう? トラバント王の死後、混乱に乗じて治安を乱す輩が現れるかもしれないから、見かけたら解放軍としてしかるべき対処をせよ、と」
 そんなざっくりとした指令を軍の総大将であるセリスが出していただろうか? セティのまなざしはますます面白くなさげになるばかりだったが、確かに、トラバント王がリーフ王子の手によって倒され、アリオーン王子がユリウス皇子に誘拐され、とにもかくにも南トラキア王国がセリス・リーフ連合軍によって制圧された今、それは起こり得る事態だった。ましてこれからセリス軍はトラキア半島を出て、ミレトス地方へ入り、そこから帝国軍との決戦の地であるグランベルを目指すのだからなおさらだ。制圧だけしておいて、治安維持もせず、すたこらと軍を退き上げるわけにもいかない。新秩序を打ち立てんとする者の責任というものがある。
 事実、トラバント王はリーフ王子の両親をイード砂漠で無惨に殺害し、彼の人生を苦難の連続にした張本人であるが、南トラキアの王としては国民を大切にする優れた統治をしていた。だれかが税金を軍備に無駄遣いしていたとか、部下全員にライブの腕輪を持たせるやつがあるかとか文句を垂れていた気がしたが──それは憎しみを捨てて仇討ちをしないことまで考えていた某王子自身の口から発せられた気もしたが──とにかく自国民には優しい王だった。
 今回の国境近くでの騒動も、自国の治安をしかと守っていたトラバントとアリオーン父子の失われた今、ほとんど壊滅していたはずの山賊たちが息を吹き返さんと企んでいるということだろう。十分にあり得る話だ。
 問題は、それでなぜゾンビだの『オバケ砦』だのといった噂になっているのかだが、一応こちらにも十分納得可能なわけがあるらしい。
「つまりだ」と、セリス軍の軍師であり、亡国シレジアの王であり、セティの実父であるところの、どこか胡散臭い人物が言う。「トラバントやアリオーンが徹底的に叩き潰したはずの山賊どもが、なぜかまた復活し、付近を不気味に徘徊して集落を襲い、おまけにこの近くの砦を根城にしているとの話だから、トラキアの民たちは『ゾンビ山賊団』と──」
「山賊なら、トラバントやアリオーンがいなくなる前にもいたけどな」
 こちらも少々面白くなさげに思い出させるのは、長い銀髪の魔導士アーサーだ。
「フィーが一人でその賊どもを退治しに行くなんて言うからさ、俺は大急ぎで馬を飛ばして追いかけたんだ。途中で何度か落馬しかけたけど」
「そんな日のための訓練が間に合ってよかったよな」
 と、にやにやしながら口を挟むのは、カリスマの騎士ことデルムッド。彼はミーズ城からカパトキア城、さらにルテキア城を越えてなお北へ駆け尽くしたアーサーの猛進撃に、途中までつき合っていた。
「で、お前たちの見たその賊は、ゾンビってやつだったのか? 子どもの頃に、本の中で怖がらせてきたみたいな?」
 いわゆる、大人の言うことを聞かない悪い子はオバケに食べられますよ、という類のおとぎ話だ。
「わかんない。俺が全部黒焦げにしてやったから」
「ありがとうな、アーサー」と、あらためてセティが礼を述べる。場所柄、天馬を操るフィーでしか向かい難い場所に狙われた集落があり、彼女単騎で救出に出かけた。ところが、フォーレストにソードマスターなど、思いのほか手練れの敵がおり、フィー一人では危ないところだったとの報告を、後で受けたのだ。
 フィーはセティの妹だ。つまり軍師レヴィンの実の娘でもあるのだが、それを脇に置いたとしても、そんな遠く危険な場所へ単騎で向かわせるような采配をしてほしくはなかった。知っていたら、セティは反則を犯してでも、妹に群がる賊どもを吹き飛ばしただろう。例えば、リワープ解禁。
 なぜか……以前に、その同じような場所へ同じように単騎で向かい、手傷を負いながらもなんとかルテキア城まで生還した別の天馬騎士──その記憶が頭の中に静かにあって、ぼんやりとのんきに妹を見送ってしまった自分にも責任があると考えていたので、それ以上父と口論しなかったが。
 それにしても、その記憶──ここにはいないはずの天馬騎士や、ほかの面々も交えた賑やかながらもひどく粗削りな、断片的な珍道中の記憶は、いったいなんなのだろう。
 まるで、そう、同じ道を二度通っているような──。
「別にお前に礼を言われる筋合いなんてないしー」セティのとりとめない思考を遮ったのは、いつもと変わらず突っかかってくるアーサーの声。「だからって、セティ、お前に俺のティニーはやらないしー」
「心配するな。ティニーはすでに私の宝物だ」
「なんだとぉ!」
「喧嘩しない。今は喧嘩しない……」
 アーサーとセティのあいだに割って入ったのは、死神兄と称される凄腕剣士スカサハだ。ちなみにこの仲裁役は、数名が否応なく持ち回りでやらされている。ティニーがアーサーの妹で、セティの恋人なので。
 もっと明確に言えば、アーサーが随一のシスコンなので。ちょうどたまたまこの場に居合わせている「お兄ちゃんズ」六人の、だれとも比べるまでもなく。
 だれか一人くらい対抗宣言をしても良さそうだが、アーサーに妹への愛でわざわざ勝負を挑む勇者は、今のところいないし、これからもたぶんいない。いたくない。
「それでレヴィン様」スカサハが穏やかに苦笑しながら話を戻そうとする。「アーサーに黒焦げにされたシスコン・ゾンビと宝物・オバケが復活して子どもの本を食べちゃったって話でしたっけ?」
「なにも合ってない。なにも合ってないぞ、スカ……」
 と、首を振るのは、青髪をきっちりと後ろに梳いた、弓騎士のレスター。
 一方、アーサーは目を丸くする。「なんだ、それ? 面白そうだからそっちをもっと聞きたいんだけど」
「これ以上話をややこしくするな」レスターがアーサーを引きずりながら、数歩下がっていく。ちなみにアーサーに悪気はなく、本気の天然であり、マイペースな男なので、このようにたまに始末が悪い。
 代わって前に出る形になったのが、レスターと同じく弓を手にした金髪の若者。
「要は、その山賊の根城をぶっ潰してくりゃいいんだろ? 楽勝だって」
「ファバル──」セティは──なにか既視感のようなものを覚えながら口を開き、ふと気づけばデルムッドも同じように微妙な表情になっていたが、ひとまずため息を呑んで落ち着いた。話を単純にしてくれたのは確かだ。なぜファバルがなにかの斧ではなく、聖弓イチイバルという、選ばれし聖戦士の武器を持っているのか、一瞬混乱してしまったのはさておき。
 性格というか口調が、一瞬だけちょっと似ていたというだけだ。ついこのあいだまで肩を並べて共に戦っていた気がする、頼もしい大男と。
「わかりました、軍師殿」セティは父レヴィンに言った。「セリス様やリーフ王子の主力部隊はすでに先行していますが、我々だけで問題ないでしょう。ただし、あとでセリス様にはしかと報告してくださいよ?」
「もちろん」
 レヴィンは微笑する。セティはこの感覚にも違和感を覚える。公私の区別をつけようとしつつ端々でほころびが出る自分も悪いとは思うが、今日の父もやはりなんだかおかしい。
 しかもこれにも、なんだか得体の知れない既視感のようなものがある。
 なにか、自分たちは、とんでもない事態に首を突っ込もうとしているのではないか? また。しかも巻き添えにすべきでない者たちまで巻き込んで──。
「気をつけてください!」
 不意に、レヴィンの後ろから飛び出すように現れたのは、ユリアという少女だ。レヴィンが以前にどこからか連れてきたのだが(世間はそれを保護よりは誘拐と言うのではないか)、以来、セリスとはなにか特別な縁で結ばれているように見える。そして、とても不思議な力を持っているようだ。
「あ、えっ……ユリア?」
 スカサハをはじめほぼ全員が驚いたのは、ユリアが普段めったにこのような大声を出さないからだ。
 ユリアは大変真剣に、しかしどこか虚ろなまなざしをして告げるのだった。
「あの砦にはなにか……恐ろしい気配がします。そう……とても邪悪な……まるでおぞましい異形の者の群れ……」
「イギョウの者……?」
 スカサハが目をしばたたく。ファバルがあっさりと問う。
「つまり、マジでユーレイの類があそこにいるってのか?」
「そんなわけないでしょ!」
 だしぬけに大声を上げたのは、スカサハの双子で死神妹のラクチェ。彼女の場合、大声は珍しいことではないので、皆にもそれほど驚かれないが──。
「ユーレイとかオバケとかゾンビとか……そんなのいてたまるもんですか!」
「滅茶苦茶震えてるぞ、ラクチェ」
 兄スカサハが冷静に指摘する。デルムッドはまたにやにや笑う。
「お前、昔っからこういう怪談話、だめだもんな。ガキの頃、何度夜中に一人で用を足しにいけないとかで起こされたことか」
「うっさいわね! あんたを起こしたことなんてないでしょ! 全部スカサハかラナに頼んだわよ!」
 ラクチェは顔を真っ赤にしてデルムッドに怒鳴るが、彼も飄然と言い返す。
「あんだけ『オバケ怖い! イヤ!』と騒がれたら、何度だって起こされるだろ。だいたいその結果、お前の『失敗』の巻き添えを食うのがいつも俺──」
「黙んなさいよっ!」
 ラクチェが、ぎりぎり鞘には入った剣でデルムッドをぶっ叩く。彼もそれを覚悟して言ったのだろうから大人しくのされる。するとラクチェを後ろから抱きしめる、がっしりとした男が新たに登場する。ただしこの場にいるほぼ全員が、次に放たれる台詞を予期していたが。
「おお、ラクチェ! 我が愛しき君よ! このヨハン、オバケだろうがゾンビだろうが、命を賭して麗しき君を守り抜こう! ああ、神よ! このヨハンに、可憐なる朝のか弱き薔薇を守るはがねの柵となる力を、いざ与えたまえ!」
 後半の台詞は全員の想像を超えていたが、まぁ、想定内ではあった。想定外であってほしかったのが、「ヨハンっ!」とくるりと身を翻し、わっしとヨハンに抱きついた、本当にか弱き薔薇かなにかに見える死神妹の姿だったが。
 ほぼ全員の視線がヨハンとラクチェに注がれ、それからスカサハにじっとりと向けられた。意味はとても明快だった。「どうしてこいつとくっつく羽目になったの?」と。
「俺が聞きたいよ……」
 全員の心の声を正確に聞き取ったスカサハは、もう泣きたいとばかりの顔でつぶやいた。アーサーほどのシスコンでは決してないとしても、このままいけばこのヨハンの義兄になる未来が待っているからに違いなく。
「気にすんな、スカサハ。俺なんかこいつと血もつながってんだから」
 いつのまにかレスターの腕から逃れたらしいアーサーが、スカサハの肩をのんきにぽんっと叩く。少しは色々気にしてほしいと訴えるようなまなざしにまったく気づいた様子もなく、彼はレヴィンとユリアのほうへ、屈託のない視線を向けた。
「面白くなってきたじゃん、オバケ退治とか。そうと決まりゃ、早速行ってみようぜ。その異形の者とやらを見物に」
「危険です! ……ゾンビだけじゃない。もっと恐るべきものの気配も……」
「大丈夫だよ」スカサハがユリアへ、安心させるように笑いかける。「俺たちはそんな山賊のまがいものにやられたりはしないって」
「でも……」
「その連中の正体がなんにせよ、周辺集落に被害が出て、住民が恐怖している以上、放ってはおけないものな」と、レスターも続ける。
「本当の本当にまずい相手なら、軍師殿もまさかこのような行き当たりばったりの指令を出すまい」と、セティは皮肉に満ち満ちたまなざしでレヴィンを見やる。なにか冷汗のようなものを流しつつ気づかないふりをされたのが不可解ではあったが、セティもまた、ユリアほどではないにせよ、敵の気配をある程度は感じ取れる。そうそう切迫した事態になりはすまい。いや、させはしない。
「私が行くし、スカサハも、それにファバルも──」
「もちろん」と、ファバルはにやりと笑う。「俺はバケモンの類は平気。ユーレイが怖くてあの治安最悪のコノートで孤児院経営なんてやってられないからな。それにイチイバルとフォルセティがあって、万が一ってこともないだろ」
「そう、そのとおり……」同意しかけてから、セティはふと嫌な予感を、ようやくにして覚える。
 セリスとリーフ、シャナンやアレスといった主力部隊がいない面々での山賊退治。その程度の戦闘が想定されているわけだが、見方を変えれば、自分のフォルセティとファバルのイチイバルと、そして死神兄妹がそろっている状況。
 この面子でなければ、むしろ危ういかもしれないと父は考えているのか? どうして?
 ロプト教団や帝国の本隊がいる恐れがあるなら、ただそう忠告してくれればいいのだ。
「おーい、俺を忘れんなよ」
 アーサーが、今度はセティの肩に手を載せてくる。が、そこまで突っかかってくる気配ではない。最近は慣れてきたが、アーサーといると「距離感」というものがどうにも混乱してくる。彼はにやりと笑いかけてくる。
「あいにくティニーはオルエンたちと一緒にまだ後方にいる。お前の『オバケを怖がるティニーに思いきりイチャコラくっついてもらおう』大作戦はできませーん」
「その言葉、ティニーのところをフィーに差し替えて返していいか?」
 セティの冷静な返しに、アーサーはきょとんとなる。
「フィーがオバケなんて怖がる女かよ」
「……それもそうだな」
 二人は顔を見合わせて笑った。ちなみにそのフィーは今頃上空彼方を飛んで先行の本隊と行動を共にしているはずだが、それはさておき、ファバルとレスターの従兄弟同士が、そろって重たげに頭を押さえた。
「あの二人──」
 仲が良いんだか悪いんだか。というかアーサーだけでなくセティのほうもどうもおかしくないか……とは最近になって周辺に気づかれてきた事実で、見ているほうも混乱してしまう。
ラクチェは来なくていいぞー」
 一方、デルムッドはアーサー同様楽しげだった。
「ゾンビ軍団を前に、ワーキャー大暴れされたらだれも手をつけられないからな」
「なにを言うのだ、デルムッド!」
 腹立たしげにしつつもラクチェは明らかに安心した顔になったのに、ヨハンのほうがショックを受けたようにのけぞった。
「聞いていなかったのか! 愛しきラクチェの華麗なる流星の輝きが悪を見事成敗せんとし、けれどもその健気なる勇気が異形の者への恐怖に崩れんとする時、私はそのか弱き体をそっと支え、命をかけて盾となり──」
「いや、明らかにさっきと湧いてる話が変わってるだろ」デルムッドが無頓着に言う。どうもヨハンはさっきのティニーとフィーを差し替える話と同じことを期待して、『オバケ砦』に行きたがっているらしい。やはり。
 爽やかな笑顔のまま、デルムッドはヨハンとラクチェを真似するように、レスターを抱きしめなどする。
「大変力不足ながら、ラクチェとお前の変わりは、俺とレスターで務めるから。万一死んでもゾンビになって帰ってくるから、心配するな」
 それから今度はレスターへ、明らかにある程度聞こえるささやき声で話す。
「お前も残念だよなぁ、パティがここにいなくて。彼女もまだ後方だっけ? 俺の知るところ、お前はまだセティやアーサーと違って私の宝物だとか俺の大切な人だとか打ち明けてもいないんだろ?」
「デルムッド! お前はぁっ!」
 レスターが真っ赤な顔をしてデルムッドを締め上げる。ラクチェに殴られたダメージも考慮すると、口を慎まなければ彼はそろそろ死にかねない。一方、あっけにとられているのはパティの兄ファバルだ。
「……レスター、お前、ほんとにあいつのことが好きなのか? いったいあれのどこに惚れる要素があるんだ?」
「はっきり言った! はっきり言った、ファバル!」と、指を突きつけるのはアーサー。
 セティも続けて沈着にうなずく。
「たぶんきょうだいというものには、その種の魅力は目に映らないものなのだろうな。君はどうだか知らないが」
「は? ティニーは世界一可愛いが? ところでお前も、フィーが魅力的に見えないってのか? 失礼だろ! あんないちばん可愛いのに!」
「アーサー、三言で矛盾するのはよせ」
「ごめん。なんだかただの馬鹿な男子の遠足のような雰囲気になってきちゃったけど」
 最終的に場を収めんとするのは、死神の兄のほうだった。彼はレヴィの傍らのユリアに言った。
「ユリアもここで待っていてね、レヴィン様と。もう少ししたら後続の人たちが来るはずだから。パティやティニーも、アーサーのとこのオルエンも、それにマリータも。彼女が来れば、まぁ、絶対安全と言っていいと思う」
「スカサハ……」ユリアが消え入りそうな声で言う。「……その……マリータさんとは……?」
「うん? あれ、知ってるよね? このごろよく俺やラクチェと一緒に剣の修行している子。彼女はラクチェ並みに強いから、安心していいよ」
「マジか、あの鈍感」レスターがつぶやく。
「それでいてあれ、ユリアはセリス様のことが好きだと思って半ばあきらめてるからな」
 デルムッドが、レスターに締め上げられたまま同じくささやく。
「いい加減にしてくれんと、ラナの幸せもかかってるんだが」と、妹の恋路を心配するレスター。
「お前は自分の心配をしとけよ。俺は引き続き楽しませてもらうけど」
「お前はあの砦で俺がゾンビにしてやるから覚悟しとけ」
「あー、確かに、ラクチェがだめならマリータがいたら、頼りになったか」ファバルがあえてのように大きめの声で言う。これ以上、馬鹿な男子の遠足沙汰を避けんとしたのかもしれない。「でもマリータがいるから、俺たちも安心して後続部隊を任せてきたところがあるしな」
「ファバル、俺は彼女に、先に行くなら君をどうかお守りくださいと彼女に頼まれたんだけど?」
「えっ?」とスカサハの言葉に驚く様子なのは、当のファバル。そしてユリア、ほか数名。
「実は俺も」とレスターも怪訝な顔で打ち明ける。「パティ様は私がお守りしますから、代わりにファバル様をどうか、レスター様──と」
「つまり、マリータにまでバレてるぞ」と、デルムッド。
「俺は守ってもらう必要はないってのに」ファバルはため息をこぼす。「パティにならわかるが、ちょっと心配性だよな? 俺が弓兵だからか? 彼女だって俺が強いのはもうわかってると思うんだが」
「……ここにも鈍感が一人?」と、アーサー。
「いや、これに関しては、たぶん少々事態は複雑だ」と、セティ。「とにかく、この六人で行くことで決まりだな。少人数だが、問題ないだろう。素早く片づけてくる」
「そうしろ」と、レヴィン。よくここまで馬鹿な男子の以下略を黙って見ていたものだ。やはりなにかおかしくないか? それとも自分も若い頃はこうだったとか思い返していたのだろうか。(親世代の恋愛は命がけだ)「あまりにもたもた手こずると、セリスたちとの合流が遅れ、次のミレトス地方第一の拠点ペルルーク城の攻略に支障が出る」
「わかっています」と、セティ。
「いざとなったら応援に行くから、遠慮せず呼んでくれ」ヨハンがようやくにしてまともな台詞を言う。
「本当に気をつけてください……」
 ユリアは、いつのまにかスカサハの手を握り、やはり心配そうに震えているのだった。
「異形の者のうごめきは、とても多いです……。邪悪なけだもののような声も……たくさん聞こえて……。こんなことは初めて……この世の……この世界のものとは……本当に思えなくて……」
 セティは「この世」と「この世界」をわざわざ言い換えたユリアの言い回しが、妙に引っかかった。するとその時、デルムッドがようやく不真面目ぶった笑みを消し、あるところをじっと見つめていることに気づく。
 レスター、アーサー、ファバルが気づき、一様に仰天の声を上げる。
「いつからいたんだ?」
「いや、わりとよくデルムッドといたけどさ!」
「しゃべろ! でないと存在がわからねぇから!」
 デルムッドと目を合わせていたのは、スミレ色の髪をした少女サラだった。
 サラは複数のご意見にも一切かまわず、ただデルムッドに小さな両手のひらをかざしてみせた。
 十という意味だろうかと、セティは思った。
 サラもまた、ユリアと同等か、もしかしたらそれ以上に相手の気配を察知する能力の持ち主だ。否、正確には違う能力であるのかもしれない。見たところの雰囲気もなんとなく二人は似ているが、実際のところは──
「大丈夫だよ、ユリア! すぐに全員無事で帰ってくるって!」
 スカサハだけは、ユリアに集中していた。それはそうだろう。秘かな思い人に手を握られているのだから。
 彼は輝くばかりの頼もしい笑顔で宣言した。
「なにしろ俺たちは、世界一頼もしきお兄ちゃんズだからな!」

 


「調子に乗っちゃって、スカサハったら……」
 お兄ちゃんズ六人が意気揚々とオバケ砦に向かっていくのを見送りながら、ラクチェは大きなため息をこぼした。ようやく心の落ち着きを取り戻しつつあるようだ。
「愛の力とは偉大なんだよ、ラクチェ」
 と、彼女の恋人はいつものごとく言う。
「義兄上の恋もまた成就するといいが」
「ちょっと、ヨハンっ!」
 当の思い人がいる傍でそれを言うかとラクチェは注意したのだが、ユリアはサラへ近づいて、二人の会話に気づいた様子はなかった。
「大丈夫。サラ? 怖くない? さみしくない?」
 ユリアは、なにかの縁を感じるのか、サラに対してはまるで姉のように振舞う姿がよく見られた。
「デルムッドやリーフ様やマリータさんや……リーフ軍のお友だちがいなくて」
「……最近、デルちゃんはズルいのよね」
 言いながらサラは、くるりと踵を返し、すたすたと後方へ歩き去ろうとする。
「私が心の声が聞こえるのを知ってるから、心の中で言いたいことを伝えちゃう」
 意味が分からず、ユリアはぽかんと立ちつくした。「えっ……?」
「デルムッドはなんと言っていた?」
 尋ねたのは、意外にもレヴィンだった。サラは思わずきっとにらみ返してしまった。
 本当に信じられない。この人は、このユリアが何者であるのか、私がわからないと思っているのだろうか。いつまで黙っているつもりなのだろうか。
 私たちの記憶を消しておいて──。
(わかった。とりあえず様子を見てくるが、マリータたちが来るまで、気をつけて待っていてくれ。なにが起こるかわからなくなりそうだからな)

 

 

 

 

 

続きはこちらへ。(pixiv様サイトへジャンプします)

https://www.pixiv.net/novel/series/10834310

 

 

あと14年しかないのに。

 

えー、毎年この日には、上記のような画像とともに「確定未来」と叫んで、アマチュア物書きの端くれとしての決意表明をしてきたのですが……って、気づけば2023年初ブログ投稿でしたか!

 

も、もう十四年しかないというのに……古代ローマものの次回作はいおろか、もっと気軽な感じで書いてきたあれやこれやまで、この一年、まったく書けないというあり様になっております。

 

もう物書きとして、かつてないくらいの死に体。ブログでさえこのあり様。

 

Twitterがあるからいいのでは、と思わないでもないのですが、このごろは自分がTweetする意味さえ見失いつつあります。しかもあちらでちょくちょく書いてしまうから、ますますブログでじっくり書く機会がなくなってしまうという。

どちらも他人様の目に触れる機会は、私の場合さして変わりはございません。

 

この一年、転職して転職して転職して引っ越しして引っ越ししてまた引っ越しするという、激動の時ではありましたが、それでもなにか物語を書く時間が、まったくなかったわけではありません。

実を言えば、何度も何度も考えて考えては、まとまらず、ボツになり、いつまでたっても話がつながらない……みたいな状態をくり返しておりました。

まぁ、古代ローマものの次作は、一年くらい休むかなと思っていたのですが……

それ以外のあれやこれやまでまったく書けない頭になるとは想定外でした。だいたいこれまで古代ローマものを書かない空きの期間には、あまりおおっぴらにできないものをあちこちに書き散らして楽しくしておりましたものな。(※その一部は、プロフィールページにリンク貼っていますが、貼っていないものもある)

 

こんなになにもかも書けなくなった感があるのは、初めてかもしれない。

 

 

なぜなのか。

 

 

まず前記事に書いたように、ある意味では作家としての「夢が終わった」ことにもあるでしょう。

それから、生活環境の変化が続いていることもあるでしょう。暇がないわけではないのですが、落ち着かず、やらねばならないことがまだまだある気がして、無駄なまでに忙しくしている感があります。そして、夜型と朝型生活を行き来し、一日の終わりにはぼんやりしつくしてしまう。

そして現在、一時出戻った結果、今度こそ長年慣れ親しんだ環境ときっぱり別れなければいけないという事実、一方で待ち受けるまたも新しい環境へ対する不安もあるでしょう。正直に言えば、こんなに別れが辛いと思ったことはない。変化へ適応できずに病んできた経験だってもう何度目か。

 

ほとんどそれらに押しつぶされかかっているのかもしれません。けれどもそうならないために、なんとかかろうじてスマホをいじるとかドラマや映画を観るとかはできている。鬱ではない。

 

ただ、自らでなにかを生み出すという能動的な楽しみが、一切できなくなってしまった。

 

そろそろ能動的に取り組むときです。おそらくそれこそが、いちばん別れの辛さをなぐさめ、新生活への不安をやり過ごさせてくれる最良の手段でしょう。

私というやつはいつだって、新生活に入るときは、能動的な趣味をやめにして、それで自分を見失ってしまうことがありました。

今度こそ、能動的な趣味を続けたまま、新生活に突入し、気がつけば慣れていた、なんて状態になっていたい。

それは単なる理想でしょうか。

けれども、今日この日まで構想はまとまらず、ボツになり、ポシャるをくり返し、くり返し……

つまり、軽めのではあれ、考えてはいるのです。まったく創作について考えていないわけじゃない。

ただ、あまりにも長いあいだ、考えているだけ。次の行動に移せないだけ。

だから、創作者として瀕死だと、このごろぼやいているわけでした。

 

そのうえですが、集中力が続かなくなってきた感覚があります。年齢のせいもあるかと思いますが、アラフォー、されどアラフォー。立派な中年ではあれ、まだ頭まで衰えたなんて降参するには早すぎる年齢。物書きとしてなら、むしろこれからという年齢でしょう。

 

それなのに、このごろ脳が腐っていくとでもいうような感覚というか、恐れがあります。

だからこそ、やはりこの年齢だからこそ、慣れ親しんだ環境を離れなければ、本当に頭の中が硬直し、委縮してしまう。この年齢にして。

新しいことこそ、頭を活発にしてくれる。刺激をくれる。世間的にどんなに初歩的なことではあれ、成長させてくれる。この一年で実感したことは、そういったこと。

ただ、それがどんなに大変なことかもわかっている。

一年前に戻って、もう一度同じ道をやり直せと言われたら、嫌だと言うと思う。後悔しているからではなく、あんな大変な思いを2周目なんて御免だと思うからです。

 

とどのつまりは、「もうちょっと」かな。

 

十四年後という期限に間に合うかは、実際のところ相当厳しくなりました。

ただ、この記事を書きながら思ったのですが、私はいずれまた書くでしょう。たとえ腕がなまりになまって、ただでさえああなのに、さらに稚拙になったとしても。

今回、元の職場へ出戻って思ったのですが、やはり腕はなまっていました。1ヶ月強は明白にポンコツでした。今もそうかもしらん……。

ただ、私はやるでしょう。いずれ。

 

古代ローマの四作目か。

ファイアーエムブレムのお遊び物語か。

あのファンフィクションか。

チーズス○ック危機一ぱ……(叩き伏せ)

 

全部、この一年のあいだに、考えなかったわけじゃないんですよ!

ただ、一本もまとまらなかったんですよ!

これは、終わりですか!? わたくしめ!? 物書きとして、死す!? 長年の趣味も、ついに終わり!?

 

い、いやいや、そうではなく。きっとそうではなく。

今はちょっと、新しいところで、やらねばならないことがあるだけ。

やらねばならない(と思った)ことへ逃げているだけだとしても。

 

ここに書きたいこともいっぱいあるんですよ。映画やドラマの感想とか。

 

ただ、じっくり言語化することが、今は難しい。とてつもない時間と労力に感じられてしまう。

 

けれどもそのうち戻ってくるでしょう。

 

戻れなかったら戻れなかったで、それはそれ、終わりということでも、たぶん悔いがなかったってことでしょうし。

 

しかしともかく、なによりも、約束は約束です。そのために今年もこの日を覚えています。

 

つらつら、とりとめもなく現状をぼやきましたが、2037年3月16日まであと14年。

 

今年中に、「構想はできた。調べものもおおむねできた。あとは書くだけ!」くらいにはしたいところですね、四作目。

 

……そのあいだに過去作の宣伝でもすればいいのに、そういう気力もないんかいって話ですが、

そのへんの欲もないわけじゃないのに、それでも乏しいんだろうか……。

 

でもまぁ、次があってこその過去だとも思っています。

 

ですから、今はちょっと、「その時」を待つだけ、ってことで!

 

落ち着いたら──つまりはたぶん、「その時」が近づいたら──いや、そんなこと言わずただ近々、またのんきにエンタメ記事でも書きたいですな。

 

 

ところで最後にこのようなことを書くのはどうにも……ではあるのですが、2000年前の後23年は、古代ローマ第二代皇帝にとって、辛いなどという言葉では済まない年であったと思われます。

……拙著三作目の最後のほうに書いてなくはない。

 

それでも続く、人生よ。

 

 

以下、拙著古代ローマもの三作目:『世界の果てで、永遠の友に』

 https://ncode.syosetu.com/n5712hm/

夢の終わりに。

柄にもない気取った感じの書き出しを失礼しますが、人はいつ自らの夢を終わらせるのでしょうか。

あきらめるとか、もう叶ったことにするとか、忘れるとか、別の夢を見つけるとか。

一つの夢を永遠に追い続けていたってかまわないと考えている人間の一人であるわたくしですが。

その証拠のように、ブログを書きはじめた当初からアラサーのフリーター。現在はアラフォー。独身。ブログの紹介文に書いてあるがままの高齢フリーター。

三十代も最後の年になって、ようやく変化を起こしたものの、まだ落ち着くと言う状況からは遠い。その変化だって、自らが望んだというよりやむにやまれずそうしたようなもの。

 

それまでは、まぁ、好き勝手やってきましたよね。国内にも海外にも旅行に出かけたし、推し活三昧したし、小説は色々書きまくったし、仕事は好きだったし。

端からみれば、優雅な独身生活だったでしょうな(昔、そう皮肉を言われたことがある)。……実態は、恐るべき低年収で雇用保険にすら入らないまま十何年も過ごしてきたなんて(※今更どうする気もございません。相談もしましたが、私の労働時間ならば会社は保険をかけねばならなかった)。

 

でも幸せではあったと思います。そりゃ生きていれば色々ありましたがね、今もなんとか心身健やかに生きているなら不幸ではなかった。そうでしょう。

……まともに働ける人間ではないと、自分のことを見なしていました。このブログでも述べたことありますが、やれ不登校だ休学だ短期離職だニートだをくり返してきた人生。自分はこの社会に適応できない人間なのだと何度も思ってきました。そしてフリーターとはいえ、十年以上とある一つの仕事を続けてこられたのは奇跡。

それを手放すのが怖かったんですね。居心地が良かった。コンフォートゾーンってやつです。

このままではいけない。そう考えて、変わりたい気持ちも嘘ではなかった。

でも変わりたくなかった。変わるとはものすごい恐怖だから、こういう型の人間にも、たぶんそうでない人たちにとっても。

 

そんな私の夢とはなんだったか。

 

いつか小説を書いて、本にしたい。世に出したい。小説家として収入を得られるようになりたい。

 

どうせ身軽な立場だ。いつか北海道に移住して、毎週ハナタレナックスを見るのを楽しみに、仕事をして暮らしたい。いつでも舞台を観にも行けるし。

 

あるいはいつか埼玉の所沢に移住したい。仕事終わりにいつでも西武ドームに行って、ライオンズを応援する生活がしたい。関東でなにかもう一度OLとか、自分一人なんとか食べていける収入を得ることができないか。

 

そんな私の、いつ叶うかわからない夢。本当に子どもの頃の夢と同じくらい無邪気な夢。若くない女一人、だれにもさして影響はないだろうから、いつまでも見ていたってかまわなかった夢。

 

小説家になりたい、は高校生の頃から言っていたな。またも不登校してさ、泣きながら病院の先生に話したんだった(ずいぶん冷たい先生だったから、二度と診てもらわなかったけどな)。

翻訳家になりたいとも言ったっけな。これは当時の学校の先生に応援してもらいましたっけ。お前ならできるよ、と。

 

小説家になることは、いつも心の底に秘めていた夢でした。

 

 

そんな私のこれらの夢が、終わりを迎える時が来ました。

 

 

……いや、正確には本当に終わりかはわかんないんですが。

どうせ私のことだから、また元に戻るかもしれないし。

すぐでなくても、何十年後かには、また同じ夢を見るかもしれないし。

 

けれどもいったん、これらの夢に区切りをつけるべき時が、なんとこのわたくしめにも訪れました。

 

……いや、全然そうたいしたことではないんですが。それも決してネガティブな話ではなく、今のところ落ち込んでいるわけでもないです。

 

2022年、やむにやまれぬ事情もあって、長年慣れ親しんだ仕事を離れ、居住地も離れ、旅に出たわけですが、

 

 

結果、正規雇用されることが決まりました。

 

 

なんだ、そんなことか、という話ですが。それで夢をあきらめるだなんて大げさという話ですが。

オメー、新卒採用の時はあっというまにつぶれて退職し、未だ人生でボーナスなんてもらったことがなく、有給休暇なるものは今年初めて取ったほどで、正規雇用なんて続けられんの、って話ですが(爆)

 

なぜそれで、小説家になることと、北海道や埼玉に移住することまであきらめねばならないの。

 

 

ローカル・パブリック・ワーカーになるからだよ!

 

 

……人生で初めて国の政策に感謝しました。

 

今年、高校受験以来、数学勉強しました。

でもまぁ、この春の簿記3級の勉強がなきゃ、おそらくは無理だったろうね。引っかかることはなかっただろうね。

英語だけは秒で読めるという特技はあったんですがね。

 

……とまぁ、ミラクルを起こしてしまいましたので、こんな私を採用してくださった方々に報いるためにも、またここまで励ましてくださった周りの方々のためにも、せっかくいただいたこのチャンス、できるだけ活かして尽くしたいと決意したところでした。

 

こんなことが人生で起こるなんてな……

 

しかしまぁ、どうなるかわからない。もうすでに最近やらかしているが、さっそくメンタルを病んで力尽きるかもしれない。むしろその可能性が圧倒的に高い。

最初の2ヶ月が勝負。オマエ2ヶ月持ったことほぼない……。

 

大丈夫なのか……?

 

そういう立場になるのは、まだ数ヶ月先のことです。結局、それまでまた元の居場所に出戻ることになりました。家も職場も。

 

結局戻るんかーーーーい!と。

 

しかし一時出戻りが終わったら、今度こそまた長い旅を再開ですな。

 

できればその前に、なにか書きたいな。小説でも、お遊びでもなんでも、なんか。

 

理想は趣味として続けながら、正規雇用を続けることです。

 

まだ夢は終わってないですね! 夢とは希望ですもんね! 

 

たとえどんなに遠くとも、すぐ近くにある楽しみを大切に大切に、なんとか来年を乗り切りたいものですね。

 

 

というわけでわたくし来年、高齢フリーターを卒業予定です。

 

 

あ、ブログは細々と続けます。諸々くれぐれも配慮しながら。

小説も、暇を作って書くつもりです。これまで同様、収入を一切得ない趣味として。

当然推し活もします! チームナックスさんも西武ライオンズも、これまでにもまして推しまくります!

 

さて何ヶ月卒業したままでいられるか、続けられんのか、乞うご期待!(笑)(辞めたらいよいよシャレにならないZE☆)(いや、どうなってもなんとかなるか!)