A.Banana.S

古代ローマ、NACSさん、ドートマンダーにパーカー、西武ライオンズ、FEプレイ日記(似非)・・・好きなことをぽつぽつと。

『仮オーブと魔物たち』&『リーフ王子のグランベル778』の続編

......を、pixiv様にアップしました。こちらにはまた最初の1ページのみ載せます。

第一部のタイトルは「騎士と傭兵の双」

 

ははははは、ホント、いい年してなにやってんだかな、と思います。

言い訳すれば、書いたのは約20年前で、それを加筆・修正したものです。今までどこにも公開したことはありません。

そして、第一部は終わっているんですが、第二部以降は途中で挫折し、完結していない……。つまり、第一部『騎士と傭兵の双』以外は、見切り発車です。どうなることやら。いつ終わるのか。

そして、今まで読者様に恵まれ続けてきたわたくしも、今度こそだれにも読まれないものを連載するのではないか、と恐れつつも覚悟せねばと思っております。

 

だ、第一部だけは、なんとしても上げ終えます。

 

あ、あと、大事なことが……! このブログで連載した、会話形式の「リーフ王子のグランベル778」、こちらの大ポカで長いこと読みづらいどころか、あちこち飛んでいる仕様になっておりまして、今頃修正しました。大変失礼いたしました! まったく、恥ずかしい、ひどすぎる……!

 

で、で、では、こちら、最初の1ページでございます。(FEのゲームプレイ日記だったはずが、まさかこんなところまでこようとは……)

 

【シリーズ『魔石にまつわる最後の決戦~続・仮オーブと魔物たち~』】

 

第一部 騎士と傭兵の双 ①出会い

 

 

 

 視界が開けると、そこは見知らぬ国だった。

(……まいった。まいったまいったまいった……)

 頭を抱えるまではしなかったが、実のところは動けなかったのだ。あ然呆然と、フェルグスは立ちつくすばかりだ。

 右手だけはほとんど無意識に、首元を押さえるように動いていた。

 なぜ見知らぬ国だとわかるのか。第一に、今さっき黄味を帯びた白い光の渦に呑み込まれた。ワープだ。まるで落とし穴かなにかのように突如出現した、転移魔法だ。術者らしき者などどこにもいなかったのだが……。少なくともフェルグスの目の届いた範囲では。

 第二に、辺り一帯に広がる街並みにまったく見覚えがないばかりか、雰囲気がとにかく違う。建物の造り、家々が備える屋根や壁の色、カーテンの模様、あるいはこの国かどこかの組織の紋章らしき図柄が描かれた旗、道端や花壇のあちこちで育っている木々や草花──そうしたもののどれもが、ユグドラル大陸じゅうを渡り歩いた経験を持つフェルグスの目に初めて映るものだった。

 周りを歩く大勢の陽気そうな人々──その服装も、ユグドラル大陸のどの地方で見られるものとも微妙に違って見える。

(嘘だろ……? まいった……まいった……)

 だめだろうと思いながら、フェルグスは背後へ首をまわした。だがやはりもはや、自分をこの見知らぬ国に連れ込んでくれた光の渦は、跡形も欠片もなく消えていた。

 フェルグスはゆっくりと首を前に戻し、ぽりぽりと頭をかくのだった。

(なんでだ、なんでだ、なんでだ? ……なんだっていきなりこんなわけのわかんねぇ事態になるんだよ?)

 怒るよりは、呆れていた。しかしどの感情にせよ、ぶつける対象がよくわからなかったので、結局自分に愛想を尽かすしかない。

(どんな厄介事だ、今度は……?)

 遠く、自分の正面を見た。ここが見知らぬ国であろう第三の理由がそこにあった。

 ひと言で言えば、立派な城だった。華やかさはなく、むしろ地味で質素な印象を受ける。けれども堅固で、長い歴史を刻んだ風格を備えている。支配者というよりは守護者として、正しくこの国を見守っているように。

 物静かで、堂々たる主──この城を見上げる国民は、きっと安心感を覚えるのだろう。そんなことを考えながら、フェルグスはこの平和な城下街を歩きだした。

 道の左右に様々な店が立ち並び、人々はにぎやかに行き交っていた。どうやらこの道は、城へまっすぐに伸びる大通りの一つらしい。人々は、ぼんやり通りの真ん中を歩く異国人を気にするそぶりもなく、笑顔で行き交っている。

 青空だけが、来た大陸と同じだ。どこまでも濃い秋空だ。見ていると目に染みるようで、切なくなるほどの。街路の草木も、同じ季節を知らせていた。

 フェルグスは一度目を閉じ、わずかに顎を引いた。それからまた開くと、そこに変わらず、明るい人々の顔が戻ってきた。

(平和な国なんだな……)

 すれ違う親子連れに目をやりながら、思った。

(ただ、建物や柱のあちこちに修復の痕がある。平和になったのはわりと最近なのかもな)

 若い男女が手をつないで、フェルグスの脇をすり抜けていった。男のほうは片腕に大きな紙袋を抱えていた。

(……ところで俺は、これからどうすればいいんだ? 帰り道は?)

 と、首元をまたくすぐる。

 子どもたちが五、六人、キャッキャと騒ぎながら、フェルグスの周りを駆けていった。「待ちなさい!」と、教会の司祭らしき人が、その跡を追った。

 フェルグスは、今や居心地の悪い不安を無視できなくなってきた。

(俺が突然現れたのを、だれも見てないのか?)

 まるで周りの人間すべてが、亡霊であるかのように──。

(……もしかして、こいつらには俺が見えてねぇのか?)

「兄さんっ!」

「うあ゛っ?」

 思わず悲鳴を上げて、のけぞった。背後からだしぬけに髪を強く引っ張られたのだから、当然の反応だった。痛みにやや涙目になりながら、振り返った。

 翠緑の目をまん丸に見開いた若者が、じっと見つめてきた。

「!──」

 首の後ろで束ねた髪をがっしり掴まれたまま、フェルグスは言葉を失って立ちつくした。

 整った凛々しい顔立ちには、まだあどけなさが残っていた。二十歳前後だろうか。今は驚きに満ちている澄んだ瞳に、その内面の純粋さが表れていた。柔らかな風合いの金髪が、フェルグスにはひどくまぶしく感じられた。

 若者はフェルグスを穴が開くほど凝視していた。フェルグスもまた魅入られたように、若者を見つめていた。

 本当に、きれいな目だった──。

「ご、ごごごごごめんなさいぃっっ!」

 と、いきなり若者は顔を真っ赤にした。桜の実のようだった。そしてようやくフェルグスの髪束を放すと、ものすごい勢いで頭を下げてきた。

 ガツンッ!

「いたっ……」

 フェルグスの肩当ての端に、額をぶつけた。

「だ、だいじょぶか?」

 フェルグスは思わず心配して、若者の顔を覗き込んだ。

「は、はい~~。あっ、いえ……その……本当に、ごめんなさいっっ!」

「待て。待てって」

 涙目になりながらもう一度頭を下げようとする少年を、フェルグスは両手で制した。

「うわー、コブになりそうだぞ。痛かったろ?」

「へ、平気です。それよりぼくは、あなたにとんだご無礼を働いてしまいました」

「いや、それより──」

「人違いで無理に呼び止めたばかりか、甲冑に傷を──」

「いやいや傷なんてついてねぇから気にすんな! どうせたいしたモンでもないんだし」

「そんな……」

「髪引っ張られたのはちょっと痛かったけどな」

「ごめんなさい……」若者はしょんぼりとなった。「あなたがぼくの兄にあまりに似ていたものですから、間違えてしまって」

「……兄?」

「はい。十日前から見つからなくて」

「そうかい。そりゃ心配だろうな」

 どうやらこの若者の沈んだ顔つきの理由は、人違いでフェルグスの髪を引っこ抜きかけたからだけではないようだ。

「はい。まぁ、でもあの兄のことですから、どこかで元気でいるとは思うんですが」

 若者はそう言って微笑んだ。無理に作ったのだろうが、それでも明るくやわらかだった。その兄をまっすぐに信じているのだろう。

 フェルグスは自分を指差して、にやっと笑った。

「そんなに似てるのか、お前の兄ちゃんに?」

「はい! それはもう!」

 と、今度はかなり興奮気味に目を輝かせ、若者は大きくうなずいた。

「後ろ姿ばかりか顔立ちも、じっくり見なければわからないくらいです! まるで双子のようだ!」

「へええ」

「もちろんよく見ると違うところもあるんですけど、雰囲気もなんだかそっくりで、違和感がなくて。こうしていると、話し方も!」

「ふうん」

「不思議と初めてお会いするって感じがしないんです! ──って、ああっ! またぼくとしたことが、好き勝手なことまで言って! すみませんっ!」

 と、またもや顔を赤くして、深々と頭を下げるのだった。

「もういいって」

 また頭をぶつけないように、フェルグスは笑いながら一歩下がった。

 表情豊かなところが可愛いと思った。それに、素直だ。

 兄さんにそっくり、か──。

「フォルデ! 貴様という奴は、こんなところにいたのか!」

「うおっ!」

 今度はいきなり若者を押しのけつつ男が割り込んできて、フェルグスの胸倉をつかみ上げた。

「うぐっ……」

「誇り高きルネスの騎士ともあろう者が、十日間も無断で行方をくらますとは言語道断! それになんだ、その格好は? 傭兵にでもなったつもりか!」

 と、容赦なく締め上げてくる。

「貴様のサボり癖も今度ばかりは許せるものではないっ! 覚悟はできているんだろうな?」

「カイルさん、違います! この人はフォルデ兄さんではありません!」

 最初の若者が、大慌てで止めに入った。

「フランツ? お前はなぜこんな奴に頭を下げていたのだ? いくら兄弟とはいえ、道を踏み外した者は厳しく罰するのが、騎士としてあるべき姿──」

「だから違うんです! この人はフォルデ兄さんとは全然まったくの別人なんです!」

「な、なんだと……?」

 男は、そのままフェルグスを凝視した。たくましい体つきの、いかにも生真面目そうな男だった。その髪色と同じ深緑の瞳の中で、静かに燃える熱い炎を、フェルグスははっきりと見た。

 ──ってか早く手ェ放せ! 苦しい! 死ぬ!

 男がようやく手を放すと、フェルグスはせき込みながら必死に肺に空気を送った。

「すまなかった!」

 男は最初の若者ほど深々とではないが、実にかしこまって頭を下げてきた。

「あなたが私の怠け者で気ままでだらしのない同僚によく似ていたものだから、間違えてしまった!」

「ぜぇっ、はぁっ……そ、それってほんとに謝ってんのか?」

 生真面目すぎて正直すぎた男に、眉をしかめるフェルグス。あまり的外れとは言えない評であることは黙っていたが。

「だ、大丈夫ですか?」と、気遣ってくれる金髪の若者。「カイルさん、この方は、えっと……」

「俺はフェルグス。旅の傭兵だ。あんたらが捜しているフォルデとかいう男じゃなくて残念だったな」

「……ちょっと名前まで似てますね」と、若者がつぶやく。

「私は騎士カイル。同じくこの者は、フランツだ。フェルグス殿、大変失礼なことをした。お許し願いたい」

「いいよ。面白かったから」

 と、フェルグスはそのたくましい男──カイルににやっと笑いかけた。その顔を見て、カイルはつい堅苦しさを忘れたように、しげしげと凝視を再開した。そしてうめくのだった。

「ううむ……。世の中にこれほど似た人間がいるものなのだな」

「けど、じっくり見りゃわかるんだろ?」

「ああ。例えば瞳の色が、あいつはこの弟と同じで、緑色をしているからな」

 と、フェルグスの明るい茶色の瞳を見つめる。

「けど年ごろとか、体格とかもほとんど同じですよね? あなたのほうが少しがっしりしているかな? あと、違うと言えば、眉の形とか……ああ、それに、よく見ると髪質が──」

「おいおい、そんなに真剣に見られると、照れるぜ」

「す、すみません!」

「失礼した!」

 二人そろってまた頭を下げてくる。

 フェルグスは苦笑した。「ところであんたたち、ルネスの騎士とか言ったっけ? ここはルネスって国なのか?」

 今度は別の理由で、カイルとフランツはフェルグスを凝視してきた。

「いやいや、からかってるわけでも、狂ってるわけでもないぜ。俺はそのう……なんと言うか、異国人なんだよ」

「他国から来たのか? それにしても我らがルネス王国のことを知らないとは……」と、カイルが眉をひそめる。

「そもそも、ここはどこの何大陸と言うんだ?」

 その質問に、カイルとフランツは顔を見合わせるのだった。フランツが尋ねた。

「大丈夫ですか?」

「いや、だから狂ってるってわけじゃ……まぁ、でも、あんま大丈夫じゃないかもな……」

 見知らぬ国どころか見知らぬ大陸にたった一人放り出された身なら、助けが必要なのは明白だった。

「信じてもらえるかどうかわかんねぇけど、俺はユグドラル大陸ってとこから来たんだ」

ユグドラル大陸? 聞いたことがないな?」と、カイル。

「ここはマギ・ヴァル大陸と言います。このルネスは大陸のほぼ中央に位置する内陸国なんですよ」と、教えながら、フランツは次第に目を輝かせるのだった。「すごいなぁ! フェルグスさんは異国どころか、異大陸の人なんですね! 異大陸からわざわざこのルネスに、フォルデ兄さんそっくりの人がいらっしゃるなんて、なんだか運命を感じるなぁ!」

「ははは、運命はちょっと大げさかもしんねぇけど、すごい偶然だな」

 あまりに素直に話を受け入れるフランツに、フェルグスはまたつい苦笑をこぼした。

 カイルのほうは、もう少し慎重だった。

「……ロストン聖教国やフレリア王国ならば、他大陸とも交易しているとの噂を聞いたことがあるが……、どちらかの国を経由してきたのか? それともカルチノ共和国か?」

「え? え゛~~……っと……」

 さすがに光の渦に呑まれてワープしてきたなどとは言えず、答えに窮した。

 その時、どこからか鐘の音が聞こえてきた。いく度も重ねて鳴り響き、街じゅうに染み渡っていくようだった。

「いかんな」カイルは目線を遠くしていた。「まもなくエフラム様がグラドからお戻りになる時間だ。外までお迎えに上がらねば。エフラム様のことだから大丈夫とは思うが、このごろ賊どもが商人を襲う事件が相次いでいるからな」

「エフラム様?」

「ぼくたちの主君であるルネスの王です。南のグラドという国から半年ぶりに帰還なさるんですよ」

「行くぞ、フランツ」

 カイルはそう言うと、フェルグスにまた堅苦しく目礼した。急いでいるばかりでなく、フランツが見知らぬ自称異国人相手にあまりに打ち解けてしまいそうなことを、警戒しているようにも見えた。

「はい、カイルさん」

 フランツは同僚の秘かな心配に気づいたそぶりもなく、元気に応じた。

「フェルグスさん、ぼくたちはこれで失礼します」

 カイルが足早に去っていくが、フランツはあくまで自分のペースで、丁寧に頭を下げるのだった。

 カラン、という音がした。

「あのさ」フェルグスは尋ねてみた。「どっかこのへんに、俺を雇ってくれそうなところはないか? これでも剣の腕にはそこそこ自信があるんだが」

「でしたらエフラム様に頼んでみてはいかがですか?」

「お前さんの主君に? いいのか? 言っちゃなんだが、俺は相当どころじゃない余所モンだぞ。信用してもらえるかね?」

「ぼくからも頼んでみます。今日は長旅のあとなので難しいかもしれませんが、明日にでも。ぜひ城までいらしてください」

「おいおい、お前さんだって、俺とついさっき会ったばかりなんだぜ。大事な主君に、どこの馬の骨ともわからん男を紹介していいのか? 兄さんに似てるってだけで?」

「それで十分ですよ」

 フランツはにっこり笑った。

「ぼくは兄と生まれた時からのつき合いですよ。だからその兄によく似た人が良い人か悪い人かくらい、ちゃんとわかります」

 相変わらず澄んでいたが、その目には単なる素直さだけではない、落ち着いた思慮深さがあった。

「……なんだか筋が通ってるような通ってないような理屈だな」

 フェルグスはまたも苦笑するしかなかった。

「また会いましょう、フェルグスさん」

 そう言ってフランツは、カイルの跡を追って去っていった。

 残されたフェルグスは、軽い胸の痛みを覚えながら、その後姿を見送っていた。

 なんだ、見た目よりもずっとしっかりしてるんだな。

 残念だったよな。本当は俺じゃなくて、本物の「怠け者で気ままでだらしのない」、心配かけっぱなしの兄貴に会いたかったろうに──。

 ……ん?

 ふと、フェルグスは足下にあるきらめきに気づいた。拾い上げて、顔の前にかざす。

 女性物に見える櫛だった。木製で、紅く彩色されている。木の色も活かしつつ丁寧に施してある細工は、穏やかな風に吹かれてくるくるまわる風車を思わせた。手のひらに置くと、あたたかい木のぬくもりが伝わってくる。

 なぜだかひどくなつかしい気持ちになった。

 そういえば、さっきフランツが頭を下げたとき、カランという音がした。

 あいつが落としたのか? あまりに勢いよく俺に謝ったせいで。女物だが、ひょっとしたら家族や恋人へ渡すつもりのものなのかもしれない。

「やれやれ……」

 フェルグスはフランツの跡を追うことにした。柔らかい笑みをこぼしながら。

 

 

 

※※※※

続きはこちら↓

#1 第一部 騎士と傭兵の双 ①出会い | 魔石にまつわる最後の決戦 ~続・仮オーブと魔物たち~ - T - pixiv

 

前シリーズの紹介は、こちら。

anridd-abananas.hateblo.jp

 

【シーズン18、スペンサー・リードのカムバック回を予想する】

 

どーも、クリミナル・マインドのファン歴まだ1年足らずのにわかでございます。とはいえシーズン16までは全話視聴、シーズン17は諸事情で一部分とネタバレのみですが、来月には通して観る予定です。

なにしろアメリカでは、本年5月8日から新シーズン放送らしいですからな! すなわちXデーですな!

新シーズン18は、スペンサー・リードのカムバックが話題となっております。

不肖一ファン、ここで彼のカムバック回をガチ予想してみたいと思います。

……なぁに、私の予想など当たったためしはございませんから(※『悪党パーカー』関連諸々を参照)。むしろこのとおりのことは絶対に起こらないという確信を持ってXデーを迎えられる……。

とはいえ、リード君が最後に出演したシーズン15最終回、そこまでのネタバレを避けたい方は、以下を絶対に絶対に読まないでください!!!!

 

 

さて、クリマイファンが待ちに待ったスペンサー・リードのカムバック!

……いや、待っていない。いや、厳密には待っていなかったわけではないが、なんらかのバッドエンドになるくらいだったら出てこなくていい……!と思っておられたファンの方だって、きっといらっしゃったでしょう。

かく言う私も、一部分ではその一人。

しかし今回は、ただのカムバックではない。リードの演者であるマシュー・グレイ・ギュブラー氏御自ら監督でのカムバックです!

こうなればそうそう滅多なことにはならないと思うのです。

また、出演するにはするが、ちょっと顔を出すだけ――という可能性も低いのではないでしょうか。

少なくともギュブラー氏が納得されたうえでのカムバックということでしょう。カムバックしないという選択肢もあったのですから。

スペンサー・リードの物語を再始動することを、ギュブラー氏自ら決断されて、監督も務めるという理解でよろしいのですよね?

ですからきっと、半端なものは来ないと思っております。

 

ご存じ、ギュブラー監督回は、15ものシーズンに渡って何度か製作されております。

ギュブラー氏に限らず、出演者が監督する回は、自分の役の出番を控えめにして、ストーリーを優先することも多いですが、そんな中でもギュブラー氏は、何度かリードのためのシーンを用意してこられました。

例えば、シーズン8のあの悲劇の後は、さすがにリードが気の毒すぎたからか、御自ら救済回を監督されましたよね。

あと、人質の出産を手伝うシーン、ロッシの行きつけのバー最後の日を大盛り上げするシーン等。

リードのシーンではないんですが、私はシーズン12の「エリオットの池」――エミリーのリーダー就任回――の事件のラストが名シーンだと思います。あれは最高です!

 

ともかく、言いたいこととは、ギュブラー監督回は「信頼できる」ということです。一ファンのくせに少々上から目線に読める言い方でしたら、すみません。ですが、異論はないと思うのです。ギュブラー氏はリードをぞんざいに扱うことはしません。

 

ですから、その点は安心しようと思います。というか、たとえなんらかのバッドエンドが来ようと、万が一ファンにとって最悪に思えるものが来ようと(悲観的すぎだろう)、ギュブラー氏が納得したうえでのことならば、受け入れるのが筋だと考えるのです。

 

だから、なにが来ようと、それはもうオーケー。そういう心境でおります。

 

で、そういうことですから、あとはのんきな一ファンらしく、Xデーまで妄想しながら過ごすわけですよ。

いったい我らがスペンサーは、どんなカムバックをしてくれるのか、と。

 

さて、予想いきます。

この自称「リドエミ過激派」、なるべく主観や願望を廃して――いや、そこは多少お許しを(おい)

 

まずは彼が最後に出演したシーズン15から検証していきましょう。

 

シーズン8で、もう恋愛なんてできないレベルのトラウマを負ってしまったリード。シーズン14の最終話では驚きの展開もあり、なおさら先へ進むのをためらうようになった彼ですが、ファイナル・シーズン(予定)だったシーズン15にて、認知症から一時的に正気に戻った母親が、背中を押してくれます。

それからまもなく、「普通の人に見えた」マックスとお付き合いを始めます。

それが、ドラマ設定上、2019年の1月~2月。そしてその数週間後、マックスとの3回目のデートに、宿敵キャット・アダムズが割り込んできます。この時点でも、おそらく2019年3月より後ということはないでしょう。なぜならキャットは、リードとのアイス・スケートデートを希望しています。まだギリ冬である季節の事件だったわけです。

そしてこの3回目の『デートの夜に』の次話が『シュレーディンガーの猫』――エミリーの恋愛回ですが、この回なんといっても印象的なのが、ワシントンDCの桜。満開の桜。つまり、時期は3月下旬から4月でしょう。

 

ところがこの次話であるシリーズ第8話で、時間が一気に飛びます。2019年10月です。

 

そしてプレ最終回である第9話は、2020年1月、(23日という日付も出てくる)

そしてついに、最終回である第10話。リードが退院したのは事件の1ヶ月後だから、最終回のファイナル・シーンは、2020年の2月と思われます。おそらくこの直後、デル……いやルークがペネロープとディナー・デートに行きます。再始動したシーズン16で描かれたとおり。

 

で、で、ここでなにが問題かと言いますと、最終回にリードの恋人マックスが姿を見せないということです。リード入院時にも、1ヶ月後の最後のパーティー時にも。

俳優さんの契約上の都合と言われてしまえば無論それまでですが、マックスはシーズン15に2度も出演しています。最後に出さない理由はないと思うのですが。だってエミリーの恋人のメンドーサはしっかりきっちり最終回の最後まで出ているんですよ?

 

もっと言えば、その前、第8話の2019年10月の時点でも、マックスの気配はない。

 

リード、マックスとまだつき合ってる?

ひょっとして、別れてない……?

 

『デートの夜に』の顛末を見るに、どー考えても別れる理由はないのですが、マックスの気配がなさすぎる。マックスの家、母親は不明ですが、父親は早くも次女の彼氏リードを大歓迎態勢ですし、長女のミシェルなんて、リードを一目見るなり「この子は独身よ」と、マックスでよければどうぞアピールした人。三女エロイーズももちろん好意的でしょう。

こんなに大歓迎態勢の義実家(予定)があり、当人たち同士も良い感じなのに、

なぜ最終回でこのカップルの姿が見えないんでしょうか?

 

シーズン15最終話の時点で、結婚していないのは確定なんです。なぜなら意識不明で入院したリードを前に、JJとペネロープが「家族は母親一人だけ」と医者へ伝えているから。

 

どっかのだれかは「マックスは海外に留学中。転職活動してたし……」との理由をこじづけて、支部様になにかを投げましたが……

 

客観的に見れば、やっぱり別れたのか?

 

そういう疑惑を抱かざるを得ない。

 

(いちばんは、あれです。最終回のリードの夢にマックスが出てこないことと、メイヴの台詞)(ホッチも亡き妻の夢を見た後に恋人と別れたものな......。けどリードに至っては、その走馬灯同然の夢にさえ恋人が出てこない)

 

これがなぜ問題かと言いますと、もちろん、シーズン18でのリードのカムバックに関わらざるを得ないからです。

 

シーズン16でベイリーが言っていたとおりだと仮定すると、リードの不在の理由は「特別任務」。上司であるエミリーも知らない「特別任務」

しかしロッシは、シーズン16で、冗談交じりにせよ、リードに電話してアドバイスをもらおうかと提案しておりました。まったくの音信不通ではないのか。

しかしやはりシーズン16でも、マックスの気配はありません。リードの家族はどうしている等の話もありません。

 

この一ファンとしても、いちばん良いカムバックの形は、リードが何事もなかったかのように笑顔でBAUのオフィスに現れることだと思います。すでにマックスと結婚して、1児の父になっているなどして――。

 

しかし、遺憾ながらどうも、その気配が感じられないのは私だけでしょうか。

 

だいたい上司のエミリーも知らない「特別任務」。妻や子を持っていたとして、ちゃんと会えているんでしょうか? いや、5児の父、マット・シモンズだって「特別任務」だろうって話ですが……。いや、彼の場合は、普通にもっと育休取るべきだし、家族との時間をもっと増やせる負担の少ない仕事ならば、「特別任務」も理に適っているとも思うのですが。

 

たぶん、リードは結婚していない。マックスともなぜか別れてしまっている可能性が高い。

 

そんな気がします。気がするだけで予想をするなって、話ですが。

 

ではでは、不在のおよそ5年間、スペンサー・リードの身になにがあったのか。

 

まず、あのリード君です。BAUから5年も離れていられるような男ではございません。マックスと結婚でもして家庭を持っていないならば、なおさらです。彼の家族とはBAUです。5年も離れていたら、彼はさみしくて死んでしまいかねません。

 

いや、だから、俳優さんの都合だろう。製作陣との契約とかスケジュール調整の問題だろう。

 

無論、そうした(身も蓋もない)背景はあるとしましても、

 

鵜呑みにできますでしょうか。

 

あえて2シーズン、リードを出演させなかった可能性だってあるわけです。あえて、わざと、明確な意図を持って、です。

 

まぁ、それは本当のところ、わかりようがないですが……。

 

そうでなくとも、偶然が思いもかけぬ偶然を呼ぶこともございます。

 

我々はドラマ『相棒』にて、5代目相棒が亀山薫という、とんでもないミラクルを経験してきた者たちです。

 

なにが起こるかわからないのが、長寿ドラマ。

 

ですから、製作云々の事情はさておくとして、ドラマ中のスペンサー・リードという人物になにがあったのか、その点をよく考えてみたいと思います。

 

(本当のところは、ギュブラー監督とスペンサー・リード復帰のニュースがなければ、またどっかのだれかが某支部に投げるつもりの話だった......なんて言ってはいけない……)

 

シーズン18の、カムバック予想。

 

リードは何事もなかったように、帰ってきます。元気に、いたって普通に。それでみんなと再会を大いに喜び合い、新入りタイラー君にちょっとばかし先輩風を吹かせるなどしながら、鮮やかに事件解決に貢献します。

そしてまた「特別任務に戻らないといけないから」と、たちまち姿をくらまします。

エミリーだけが、上司でもあるので、その跡を追いかけます。

 

五年前、2020年2月、リードは「脳の出血」から回復し、退院します。

後遺症がまったくなくこの短期間で......とは、素人ながら少々考えにくい状況でしたが、最後のパーティーのシーンでは、何事もなさげに元気な姿を見せていたリード。

しかし彼が姿を消したのは、この直後だったのでしょう。

 

リードはもしかしたら、エミリーの長官就任が白紙になったことを知ったかもしれません。またもまたも、リードをかばったために……。

 

そして時代はそう、新型コロナの猛威が始まったところ。

ロッシもその最中に、あまりにも悲しい別れに直面しました。

 

リードもまた、相当辛い思いをしたに違いありません。おそらくですが、なんといっても施設にいるお母さんに会えなくなったのでは。電話やオンラインで画面越しの対話は試みたかもしれませんが、決して十分ではなかったはず。そもそもテレビ電話とかしない人でしたし。

コロナ禍で会えないまま、お母さんの認知症はどんどん進行する。そして――考えたくはないですが、施設内の集団感染などで、最悪の事態も――(スー先生が死ぬわけないやろ、アメリカ・ドラマ界最強の女やぞ、というメタ的な信念はちょっと置いておいて)

 

このように、パンデミックがリードにどれほどの苦痛を与えたか、想像を絶するところです。

 

そしてリード自身にもまた、あのシーズン11『エントロピー』で自ら危惧したような、若年性認知症の兆候が……IQ187の天才である頭脳が、少しずつ、少しずつ働かなくなっていくのを感じーー

 

そう、つまり不肖私は、リードが「記憶喪失状態」で戻ってくるのではないかと考えていたのです。

正確には、シーズン15のお母さんがそうであったように、薬を変えた結果、一時的に頭がはっきりとして、正気を取り戻した状態。彼はその隙を見て、BAUに戻ってくる。みんなとのひとときの再会を喜びながら、胸中では最後のお別れをする。この冴えた状態が、一時的であり、あと数日ないし数時間しか持たないことを知っていたので。

 

発症は、2020年のうち。彼は長官とベイリーにだけ症状を告げ、もうすぐなにもわからなくなるという見通しも伝える。エミリーや仲間たちへは絶対に言わないように願いながら、「特別任務」ということにして、身のまわりの始末をする。この時点までマックスと付き合っていたとしても、別れを告げる。

まもなく、施設に入る。お母さんと同じところへと、願ったかもしれない。

 

それから数年後、一時的に正気に戻るものの、事件解決次第、急ぎBAUを去った。

 

しかしそこはドラマ、この「認知症」は実は認知症ではなく、リードの心的外傷による多大なストレスの表れだった。コロナ禍の異様な変化、母親に会えない苦悩、エミリーの女性初長官就任という伝説をつぶしたことへの罪悪感等、諸々のストレスで頭が働かなくなり、もう天才ではなくなっていく自分、だれの役にも立てなくなっていく自分、膨大な知識を失くし、思い出も失くし、愛する人たちのすべてを忘れていく自分――実は一時的ストレスだったはずのものが、病発症への恐怖から負の連鎖を引き起こし、リードは本当になにもわからない「記憶喪失」、「廃人状態」になってしまう。

 

事件解決後、エミリーはひそかに去り行くリードを追いかける。ベイリーがついに最後まで明かさなかった、部下の真実──。

エミリーが見つけたのは、専門施設にて、赤ん坊も同然でぽかんと座っているだけの、かつての天才。最愛の仲間で、部下である男。

泣き崩れるエミリーに、なにもわからない無邪気な笑顔で、彼が笑いかける。

「きみはだれ? どうしてないているの?」

 

…………という、書きながらにして、中々に地獄の展開を想像していたものでした。

 

ええ、ええ、もちろん、大事な話、ここからリードが記憶を取り戻していくまでがセットです。シーズン19か20での展開です。超絶ハッピーエンドですよ!! 

 

だいたいリードはまだ44歳? ギデオンやロッシみたいに50代になってからまたBAUに戻ってきたって、なんも問題ないわけですからね! ロッシやギデオンのポジションで、新たな物語を作り出していったって、いいわけですからね!

 

ギュブラーさんだってわかっているはずでしょう??

 

……と、いうわけで、書いたからにはもう絶対に当たらないただの妄想と化しました。

これも、どっかの支部に投げたあれらたちも、Xデーには木っ端微塵に砕け散ること確定ですから、もう安心して待つのみですな!

 

日本での配信はいつでしょうな? 配信前にネタバレがまわってくるであろうという意味でも、やはりXデーはXデーですな!

 

以上、行き過ぎた妄想を、大変失礼いたしました!

 

.............。

 

 

やっぱり頼む!!! エミリーのためだけに戻ってきてくれ、スペンサー!!!!!(超本音)

 

 

 

……え、あと12年しかないのは、マジでシャレにならんのですが……!

 

2037年のこの日まであと、たったの12年しかないだなんて、そんなバカな……!

 

シリーズ完結どころか、去年のこの日と相も変わらず、4作目を1行も書いていないのですが……。

どどどどどどうしようっっ!!(知るかい)

 

ま、まぁ……まったくなにもしていないわけではないだけ、去年よりはマシ? この怠け者もようやく読書し、調べものを始め、案の定すべての知識がリセットされていることに愕然としつつ、「これだ!」という筋書きが浮かばないまま、うんうんうなる日々……ホントか?(笑)

 

毎年、正月や自分の誕生日などより、この日にこそ1年の振り返りをよくしてしまう傾向にある人生です。

 

去年の3月16日から今年の同日までにしたこと。

 

・悪党パーカーを「告発」し、ニックの生死に関する新説を(今さら)上げる。

・クリミナル・マインドにどハマりし、シーズン16まで全視聴→某所になにかを投げる(約16万字)。

忍たま映画『軍師』をきっかけに、愛が怒涛のごとくカムバックし、原作『落第忍者乱太郎』を全巻読破する。過去映画やミュージカルも配信で観る。

・『ベルサイユのばら』も全巻読破する。

 

…………エンタメ人生エンジョイしまくりじゃないですか、HAHAHAHAHA!!!!

 

で、この次の1年にやりたいこと、すなわち書きたいものが2つありまして。

 

1つは、言わずもがな、古代ローマ歴史フィクションの4作目。

2つ目は、そのう……某所の『リーフ王子のグランベル778』と『仮オーブと魔物たち』の続編……いや、完結編になるものをば……。

 

後者はさておき、前者は、どんなに早くとも本年中の完成は不可能でしょう。

ですが……これまではまずやらなかったことですが、もしも途中まででも書いたら、イベントに参加すると言う形で公開してみようかと、ひっそり考えております。

例えば、第1部のみイベントで無料公開(ダウンロード式)。続きは完成したら、いつものごとく『小説家になろう』様にアップしますよーという形で。

 

基本、出来上がる前に小説をアップするというのはやらない性質なのですが(完結させられるか不安、それに途中で矛盾が生じる展開にならないか心配、等々の理由から)、せっかくですし、人生で一度くらい、イベントに出品する側で参加してみたいじゃないか、と。

 

ほんとは本でも作れたらいいんですけどね~! 本文はあるにしろ、デザイン力がない絵心がないノウハウが一切ない、諸々調べるパワーがない、なによりお金がない(爆)……等の怠惰な理由で、いつになることやら。

 

ある意味、私も年を取り、欲が減退してしまったということなのかもしれませんな。

 

けどまぁ、なんにも書かない年にはなんやかんやならないと思うので、のんびり運営ですが、やっていきますぜ!

 

……ちゃんと12年後、それなりの成果を持って「お墓参り」に行くという、勝手な約束はどうするのか?

 

老け込むにはまだ早いぜ、我!

 

 

 

クリミナル・マインドにハマった私的記念②(ブログ版あとがき)

 

総計15万字になった自称ドラマ語りを書き終えました。

書きたいことは書き尽くしたので、今現在、思い残すことはございません。

 

大っぴらにできることでは決してないですが、今回ばかりはブログ記事形式よりも、このファンフィク形式のほうが合っていたと思っています。

 

前編は抜粋をここに載せましたが、後編はやめておきます。ネタバレ上の理由が一つ。

 

そして、趣味趣向が合わない場合はさておき、あの後編11万字を最後まで読み通してくださる方がもしいらっしゃれば、そのお時間に報いたいと思うからです。

話の構成上、どうしてもあの11万字は区切れませんでした。構成にすべてを込めたようなもので、読み通していただけた場合にはきっとーーと。

私は読者様に甘え過ぎなんですよね〜。

だからコメントやブクマ、いいねはもちろんですが、アクセスいただいただけで大喜びしてしまうわけです。

自分がどんなものを書いたか、たぶん知っているので。

読んでもらえることが奇跡とよくわかっているので。

 

それにしても今回改めて思ったんですが、私ってオールキャラで書くのが好きですよね。

古代ローマものも、登場人物やたら多いですし、

ゲームのプレイ日記もどきも、

ファンフィクションも、

今回のファンフィク形式ドラマ語りも、

これでもかとキャラ登場させまくる。

基本、好きになったら箱推しの者ですから。

けれどやはり、若い頃にドートマンダーと悪党パーカー・シリーズに出会えた影響は大きいと思います。

そして、ファイアーエムブレム! あのキャラたち全員覚えてプレイしたり育てたりするわけですからね!

 

オールキャラになった時の高揚と、

キャラを愛せ。どのキャラも愛せ。そして考えろ。一人一人に物語があり、表があり裏があり、謎がある。愛こそすべてだ、と。

 

ところでさて、今回のファンフィク形式ドラマ語りの目次を以下に。

 

~~【前編】~~

 

1、始まり
2、ウィル
3、リード
4、ホッチ、アラスカ帰り
5、S7-11 天才vs天才
6、続
7、エミリー
8、S-7ラスト
9、桜並木

 

~~【後編】~~

 

10、始まりアゲイン

11、アンダーソン S8-12

12、リード

13、エミリー

14、S9あたり

15、アレックス

16、S10

17、タラ

18、ロッシ

19、ルーク

20、キャット S12-最終話

21、モーガン

22、マット

23、選択 S13

24、JJ S13S14-1

25、朝陽

26、ガルシア、BAU女子会

27、BAU男子会

28、キャット②

29、ベイリー(え?)

30、マックス S15

31、姫、またしても

32、ファイナル 【R×E

33、桜散るまで

34、終わりの言葉

 

レギュラーほぼ全キャラの一人称パートがあります。予定外に動かれたところもありましたが、悔いはないです。構成上は、悔いがないです。

描写面はもっと上手い表現ができれば……ーーという思いはありますが。今回に限らず、いつだって悩ましい。

 

ただドラマの展開をなぞってるようなところもありますが、、、

30」以降くらいからがメインだ。(......いや、「32」だろ......?)

前置きが長すぎるんだ!

 

でも女子会パート、男子会パートも、すごく書きたかった。楽しめました。

 

そこへ行くまでが……いや、どうしても要るんだ。書いてる分には苦ではなかった(読者様のことは……?)

タラとかマットのパートあたりから、こう、予定外に転がりだした気が……

 

 

最後に、言わせてください。ようやっと言えます。

 

「言えば終わり」だと某後編でだれかが言っていた気がしますが、書ききるまで私は黙っていました。

 

 

やっと言えます。

 

 

……後編あとがきで言い訳していますが、当初はまったく思ってもみなかった。

 

まさか推しCPができるとは……

 

(しかもノーマル……

 

公式じゃないからこそーーマイナーかもしれず同志が見つけ難いからこそーーオタクの生き甲斐になるというもの。

 

……いや、そんなことはないかもしれませんが。間違いなく公式の描写のせいで私がこうなったんですから。(むしろ公式しか知らないだろ)

 

だからこそ書くんだ。15万字も。

 

じゃ、言いますぞ!

 

 

リドエミ

最高!!!!!!!!

 

 

(こっちの妄想なので)結ばれなくていいから、どっちも幸せになってくれ!!!!

 

 

 

……さて、これでひと区切りつきました。

 

次は何を書こうかな……(現在、何がとは言わず、別シリーズ二択)

 

 

ともかく、今年を象徴するエンタメとの出会いでした。

 

今後は『リドエミ過激派』としてひっそり生きます。

 

そして、シーズン17の視聴を開始しつつ、ギュブラー兄さんの新ドラマを待ちます。(だからっ、わたくしっ、ギュブラー氏よりいくらか年下だってばっ!謎の弁明)

 

 

【前編】↓

#クリミナル・マインド #スペンサー・リード How much I love──【前編】 - TODO- - pixiv

【後編】↓

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23376399

 

 

クリミナル・マインドにハマった私的記念①(古代ローマネタ)

 

某所にアップした、クリミナル・マインドのファンフィクション……いや、私的妄想のドラマ語りの抜粋です。古代ローマの(だいぶテキトーな)ネタで。クリマイ風に言うと、私の署名的行動とも言う(自白)(は?)

 

すみません、私だけが趣味で盛り上がってもしょうがないので、人物リストをば

アーロン・ホッチナー(ホッチ)

デイヴィッド・ロッシ

ジェニファー・ジャロウ(JJ

デレク・モーガン

エミリー・プレンティス

ペネロープ・ガルシア

スペンサー・リード

(シーズン5)

 

いずれブログではブログで、いつもの調子で語りまくりたいとは思っております。

しかしながら今回は、この形式がいちばん書きたいことを惜しみなく書けそうな気がしました。いつもながら自己満誰得好き勝手をご容赦いただける方のみ、どうぞ。。。

 

 

 

 

 

4、

 

 

「と、いうわけで、この写真をギデオンに送信してみようと思うんだが、どうなるかな?」

 と、それを見せられたのは、アラスカ帰りのジェット機の中。リードだけがソファーを占領して眠っている。

「殺されます」と、ぼくは忠告した。「それに、ギデオンはメールアドレスを持っていないと思います」

「なんだと? それで今の時代をどう生きていくというんだ? 局員年金の手続きとか色々あるだろう?」

「全部郵送しているはずです。受取人のサインがもらえなくて、担当者が困り果てているようですが」

「厄介な男だなぁ、つくづく……

 と、デイヴは頭を抱えるふりをする。

「仕方がない。帰ったらプリントアウトして、郵送してやろう」

「デイヴ、なんだってそんな誤解を招く画像を残したんですか」

 テーブルを挟んで向かい側へ、ぼくは呆れ顔を向けているつもりだ。相手は飄然と肩をすくめるのだが。

「こうでもすれば、怒り狂ったあいつが、どっかからついに姿を見せるんじゃないかと思って」

「あなたを殺しに」

「上等だ。喜んで返り討ちにしてやろう、俺の豪邸で」

「だからデイヴ、どうせその尻拭いをするのはぼくなんですから、こういう冗談で騒ぎを起こさないでください」

「アーロン、ここは君もユーモアを解する心を目覚めさせてだな……

「リードの名誉のためにも、笑うわけにはいきません」

「ということは、笑いたいんだな?」

 それで、ぼくはひっそり口の端を上げたかもしれなかった。

 デイヴの隣はJJで、すでにぼくと同じ呆れ顔。ぼくの隣はプレンティス。背もたれの後ろからはモーガンとガルシアがひょっこり顔を出している。三人は興味津々でデイヴの携帯電話の画面を覗き込む。

 このとおり今回は、ガルシアも含めBAU総出の出張だった。しかもアラスカまで。

「なんだ、なんだ?」と、眉をしかめながら、モーガンがさらに身を乗り出してくる。

「現代によみがえりしハドリアヌスとアンティノーに見えるか?」

 と、デイヴが自称しはじめるので、ぼくは急ぎ携帯電話を伏せる。

「なんでもない」

 デイヴは知らないのだが、モーガンにこの種の冗談はまったく良くない。

「あーあ、あたしとモーガンも熱い夜の思い出を残したかったのにぃ」

 と、知ってか知らずか、ガルシアがわずかに話をずらす。同じ夜、シリアル・キラーがガルシアの安眠をめちゃくちゃにしたのだった。

「リードが起きていたら、すかさずパンテオンの成り立ちを講義してくれたでしょうね」

 と、プレンティスが微笑し、ぐっすり眠ったきりの天才博士を一瞥する。話題はローマ皇帝の情愛から業績へとまたずれていく。

「そうそう! 古代ローマと言えば一時期、エミリーがFBIクレオパトラってささやかれたことがあったよね?」

 と、思い出したふうなのがJJ。これで完全に話題が逸れる。

 いや、そんな話、ぼくは知らないが。

「えっ、そうなの?」と、当人も。

「うん。あなたが来たばかりのころ、他部署の人たちが話してた」とJJ。

 ……いや、君とかガルシアが流した噂じゃないよな? クレオパトラはローマ人ではなくエジプトの女王だが、アラビア語やロシア語といった多言語を巧みに使うプレンティスの能力が、かの人の伝説と結びつけられたのだろう。

 リードならばクレオパトラエジプト人ではなくギリシア人だ、あの黒髪を切り揃えた髪型も実はカツラなんだと、大声で解説を始めそうだ。眠っていてくれてよかった。

「おっと、そりゃ大変。エミリーがクレオパトラときちゃ、歴史が変わっちまうぜ。となると俺は、さしずめマルクス・アントニウスってところか」

 と、ウインクするモーガン。あの写真への興味を忘れてくれたようで幸いだ。

 いや、しかし、BAUの切り込み隊長二人でアクティウムの海戦とか、やめてほしいんだが……

「ちょっとデレク! なにそれ浮気? どう考えてもあたしがあなたの妻で、魔性の女王でしょ!」

 と、やっぱりそこは譲らないガルシア。

「なに? あたしじゃ例のクレオパトラの鼻が低かったらの話が仮定法じゃなくなっちゃうって言うの? 失礼よ! あたしだって魔女だしコンピューター・プログラミング言語をいくつだって自在に操るし、なによりだれよりあなたを愛してる!」

「ベイビー、俺の可愛いクッション、もちろん、そんなことはわかってるよ。けどお前は、どう転んだって地中海で戦争起こすような女じゃねぇだろ。だれより優しい、平和主義者だ」

「失礼ね。じゃあつまり、私はその反対ってことでしょ」と、すかさずプレンティス。しかしにやにや笑っている。

「少なくとも俺はお前を敵にまわすような馬鹿な真似はしないってこと」と、モーガンもにやりと笑い返す。「これでアクティウムの海戦は勝利確定。歴史改変。ところで、相手の大将オクタヴィアヌスはだれだ? やっぱりリードか?」

「リードが適任だろう」と、しれっとハドリアヌスもどきがうなずく。「頭は良いが、戦にはてんで弱い、奇跡のイケメンときた」

「でもなぜか女にモテないってとこも合ってるな」と、モーガンも笑いながらうなずく。「もうリードの前世でしょ、初代ローマ皇帝

「でも、スペンスには共和政と見せかけた帝政なんて無理だと思う」と、これはリードのママ役、JJの意見。「嘘が下手なんだもん、ほんと。政治なんてできっこないよ」

「そこは有能な右腕と左腕でカバーしてあげないと」と、プレンティスがきらりと目を光らせる。「そうなると、だれがアグリッパで、マエケナスになるの? モーガンと私の世界征服を邪魔するの?」

……俺がやるしかないだろう」と、ぼくはため息交じりに参戦してしまう。「気の進まない仕事だが、モーガン&プレンティス帝国なんて阻止するしかないからな」

「おおっ、そうこなくっちゃ!」と、目を光らせるモーガン。パキパキと指を鳴らす仕草までする。「相手にとって不足なしだ。リード一人じゃ、俺たちただのいじめっ子だからな」

「アーロンはアグリッパのイメージじゃないが、まぁ、戦いで最も有能という点では適任だな」と、また真面目くさった顔でうなずくハドリアヌスもどき。「これから海戦だというのに、『FBI海の似合わない男』ツートップが並んでしまったが」

 これでいったい何を想像したのか、モーガン、ガルシア、プレンティス、JJの四人はしばし笑いこけた。

 ……いや、ぼくだって、ジャック(一人息子)を海水浴に連れていくくらいはするぞ。時間があれば。

「ロッシ! そう言うあなたはどうするの? ハドリアヌス時代はまだずっと先よ?」と、ガルシア。

「俺か?」決まっているだろうとばかりに、驚いてみせるデイヴ。「俺は当然ユリウス・カエサルだ」

「もう死んでるでしょ!」

「かまわんさ。あの世から君らを高みの見物だ。どこの編集者にもせかされずに『ガリア戦記』と『内乱記』を書き上げたあとだしな」

「さすがベストセラー作家!」と、プレンティスが笑う。「オクタヴィアヌスが燃やしたっていう残りの著作も、リードなら絶対残しておいてくれますよ。本を大事にする子だから」

「おまけに大勢のガールフレンドへのラブレターも」と、JJも意味ありげににっこりする。「そういえば、ユリウス・カエサルも三回結婚してませんでしたっけ?」

「もうっ、ロッシ! 次あたしんとこの劇団が『ジュリアス・シーザー』を上演する時は、絶対出演ね!」と、ガルシア。先日ぼくがうっかり口を滑らせたために明るみに出てしまった、彼女のプライベートの一つだ。

「それは遠慮させてもらおう。シーザーは殺されるだけだから。ところでペネロープはどうするんだ? マエケナスをやるか? オクタヴィアヌス・リードとアグリッパ・ホッチが戦に出ているあいだ、首都ローマからバックアップだ」

「いーえ、マエケナスはJJに任せる! ローマ帝国の渉外担当でしょ。あたしはオクタヴィアになるの! 平和を愛するオクタヴィアヌスの姉、つまり、リードのお姉ちゃん!」

「そこはJJじゃないのか? ローマ貴婦人の象徴としちゃ、君はそのう……カラフルすぎないか?」

 ぼくもガルシアは好きだが、彼女をローマ婦人の美徳の象徴──すなわち全国の女性の模範としてお出しするのはどうだろう……。彼女の良さだって翳ってしまわないか。マエケナスのほうなら奇抜な服装をしていたという逸話があるから、ガルシアでも問題な──いや、失礼。

「もしもしぃ~~? このガルシア様が大人しく貴婦人の皮なんてかぶってると思いますかぁ~~?」と、にんまりするBAUの魔女。「忘れちゃ困りますよ? オクタヴィアはアントニウスの妻ですからね! 元がついても妻ですからね! というわけで、弟と夫の仲を取り持つため、平和の使者としてゴー・トゥー・オリエント! そしてそのまま愛しのチョコレート・サンダーの腕に飛び込んで、めでたくゴールインのハッピー・エンドよ!」

「さすがだぜ、ベイビー! それでこそ俺の女王!」

「歴史どおりにあたしを追い返したら、サイバー攻撃で地獄に叩き落としてやるからね!」

「そんなことするわけねぇじゃん、俺の可愛い子ちゃん! 一生愛してるぜ!」

「ちょっと、ちょっと、それじゃあ私の国は、モーガン=ガルシア王朝になるのかしら?」

 と、プレンティスももう苦笑するばかりのようだ。

「ともかく、これで構図が決まったな」と、デイヴ。諸悪の根源。「クイーン・クレオパトラ・プレンティス陣営対イケメン・オクタヴィアヌス・リード陣営。別名、両手に華のモーガン対スペンサーぼうやとそのパパとママ」

「うおっ、こりゃ、絶対負けらんねぇ!」と、モーガン

「負けるもんですか」

「絶対勝利確定~~!」

 と、プレンティスとガルシアが続く。

 ぼくも口を開いた。「いい度胸だ。いつでも来い」

「へぇ、ホッチ? 意外とやる気じゃねぇか」

「俺にリードとJJがいるんだ。まったく負ける気がしない」

「すっかり大将の座を奪ってますよ」と、JJが口を挟む。それからすやすや眠り姫のままのリードをそっと見やる。「まぁ、当然そうなるでしょうけど。ところで、私ことマエケナスは歴史上戦場には出向かないので、戦力がちょっと心もとないですよね? ロッシの手紙で、ギデオンを呼ぶことにします? やっぱり?」

 ……あれ、JJ? もしかしなくとも君が、この不毛な会話を誘導している?

「ギデオンはだれの役?」と、さらにうきうきするガルシア。「彼もユリウス・カエサルがいいんじゃない?」

「いいや、ギデオンは天才だが、カエサルのタイプじゃない」と、デイヴ。「ドラマ・RMAの陰気なカエサルなら別だが」

 やめてくださいって、そういう困る話。

 デイヴはなおしれっと続ける。「ギデオンはティベリウスがいいと思うぞ。二代目ローマ皇帝ロードス島カプリ島に隠棲した、すでにして史上最強の引きこもりだ」

「ちょっと待って! ティベリウスってオクタヴィアヌスの継息子でしょ!」と、ガルシアが叫ぶ。「つまり、ギデオンがリードの子どもってことに……!」

「まぁ、細かいことは気にするな」

「とてつもなくデカい問題でしょうが!」

 偽オクタヴィア、アントニウスマエケナス、そしてクレオパトラがたまらず笑い交じりに叫ぶのだった。

 その時、スーツの内ポケットで、ぼくの携帯電話が震え出した。すぐに席を立った。

「はい──」

 そもそも、例の疑惑の写真が撮られた経緯は、アラスカでの宿泊問題にあった。BAU七人に対し、四部屋しか用意されなかったのだ。するとさっそくモーガンが「リードと相部屋は御免」と言い出した。それでガルシアがモーガンと相部屋になることを表明した。恋人ケヴィンがいるのに大丈夫だったのか。モーガンが床に寝るにしろなんにせよ。ともかく、そうなるとJJとプレンティスが当然同部屋。残りは三人。

 最初、ぼくがリードと同室になるつもりだった。別にリードが一人部屋でもよかったのだが、わざわざ七人中一人だけ一人部屋に入れられては、あいつは泣くかもしれない。同室で眠るまでツンドラ地帯の統計データについてしゃべられても困るが、仲間外れにされたと拗ねられては、あとでもっと困った事態になりそうだった。ついでに、リードは少し前に撃たれた足がまだ完治していなかったので、ぼくが床に眠るつもりだった。

 デイヴがあいつと同室でかまわないと言い出したのは意外だった。世界最古の凍死体についての講義を聞いて一夜を過ごしたがる人だとは思われなかった。

 だが、こういう悪企み……いや、冗談を思いついただけだったのだ。

 結局その夜は、新たな殺人の発生で、全員ろくに眠る間もなかったのだが。

 今は事件を無事解決し、無駄話をしながらようやく心身を休めようとするところだった。……ところだったのに──。

 通話を終え、ぼくはチームへ振り返った。

「みんな、いいか」

 ぼくのその一声で、全員が気色を変えた。一瞬にしてプロの捜査官の顔に戻るのだった。リードをさえ、モーガンの腕が揺すり起こすのだった。優しくなくはなく。

「頼むから、ハワイだと言ってくれ」デイヴが言った。

 ぼくは首を振った。「通常任務ではないが、人身売買特捜班から支援要請が来た。ケンタッキー州に寄り道する。詳しい資料はガルシアのPCに送られている。着いたら、モーガンとプレンティスは犯行グループの元アジトへ、デイヴとリードは病院で被害者と面談、JJと俺は支局へ行って各所と連携、マスコミ対応だ。ガルシアも俺たちと来い」

 永遠不変のものはない。それでもぼくは、戦い続けることを選んだ。このFBI最優秀のユニットと。かけがえのない家族と。一日でも長く。

 永遠不変が叶わないのならば、せめて守りたかった。

 だからぼくは、このチームのリーダーであり続けた。

 

 

 

 

【全体はこちら↓】

 

#クリミナル・マインド #スペンサー・リード How much I love──【前編】 - TODO- - pixiv

【おまけ】このまぬけ一読者はなにを考えていたのか。【悪党パーカー最終作】

 

(※ワンクッションの写真は、一連の記事には関係ない、もう20年近く前のNYにて、自分で撮影した、ケルプとバーナードが食事したレストラン)

(※今さらですが再度、勝手な妄想&ネタバレご注意ください!)

 

今回、新仮説を掲げるにあたって、いったん捨てたのが「第3者の介入」でした。すなわち、前に某『哀歌』~『ラスト・デイズ』で中心に書いた、アル・ストラトンほか、パーカーの仲間たちが、次の仕事のためにニックを回収し、別の遺体とすり替えた、という説です。別に所詮はファンの妄想ですから、それはそれで捨てなくてもいいとは思うのですが、まぁ、あれはファンフィクらしい願望が大いに、大いに入っていましたから。

『Nobody~』冒頭、ストラトンが「歯科用金」の仕事を計画していたのは、事実です。ネルソンがニックをほぼ殺すつもりで探しながら、ストラトンのところへ行ったのも事実です。『Dirty~』で、赤いピックアップトラックがなぜか通りかかって、乗っている男二人が、パーカー、ネルソン、サンドラへ手を振ったのも事実です。

これを二次創作で利用するにあたって、ピックアップの男二人が、ネルソンの知っている人物ではマズいと考えたために、スタンとフィリーをねじ込む荒業を行ったのでした。だってこの二人はカムバックしていなかったから。30年も音沙汰なしのままだったから。会いたかったから。たとえまがいものだったとしても。

ハンディとグロフィールドもな! グロフィールドはわからんでもないが、ハンディがカムバックしなかったのは、本当にどうしてなんだろう? また引退したとしても、仲介役として、名前さえ一切出てこないのはおかしくないか? スターク氏がなんらかの意図を持って、ハンディを出さないようにしたとしか考えられない。

……まさかと思うが、ハンディはお亡くなりになったのではないか……とさえ、考えました。でなければ、こんなにも不在なのはおかしい。出てくるならば、とっくに出ているはずだったから。それが、出てくる気配もないまま最終作に。これは未だになんとも言えない。

カムバック後、ハンディの役割だったところは、ほとんどエド・マッキーが継いでいます。……なぜ映画関係者は、『PARKER/パーカー』(原作:『地獄の分け前』)で、エドではなく、ハーリーをパーカーの相棒ポジに選んだのか。エドだって、原作に電話出演しているのだから、条件はハーリーと同じだ。

エドが何度か「もう終わり」という目に遭いながら『Dirty~』でも元気に電話出演して“an old partner”としてラストを飾り、ハーリーが相棒ポジで映画出演し、マイクもワイツアーもウィスもエルキンズも無事カムバック&生存し、ほぼ裏切りを企んだネルソンが一度ならずのドジの末にもパーカーに救出され続けたのに、ニックの件は読めば読むほどあまりにあんまり……。あまりに気の毒だからか、いつぞやは英語版wikiでも見かけた気がする。ほとんど無視に近い扱いの末、真剣に標的にされてはいないのにパーカーの手にかけられたのが、むごい。敵役や警察の手にかかって命を落としたならまだわかるが、パーカーの手にかかるのはあんまりだ。それでこそパーカー!と、なるんだから、本当にあんまりだ……。

テリー・マルカニーが、事件をネタに本を書こうとしていたのも、事実です。だからそれを読んだという前提で、私が(本名と同じイニシャルである)トム・ハーリーに取り憑いて暴れまわったとしても、ご容赦いただきたかった(おい)。

TODO-A - pixiv

いつぞや、トム・ハーリーについて「一次でも二次でも、創作でこんなに口の悪い男は書いたことがないわ!」と書いたものですが、偽らざる私の本心が、そこにあります。「馬鹿が! 馬鹿が馬鹿が馬鹿が!」「こいつこそ引退すべきだった」etc.

 

話を戻しまして、新説で、「第3者の介入」を極力減らそうとした件。

主な登場人物だけでも、なんとかこじづけられるのでは?と考えました。遺体のすり替えはどう考えても強引でしかないのですが、今にして思えば、だれか他人にやってもらうのではなく、遺体の工作はニック本人がやるべきだと思いました。場所はパーカーなら言い当てられるし、パーカーでなければ埋められた場所を特定するのは困難でしょう。

結果、謎のピックアップの男二人は、ただの通行人として流すこととなりました。

あとは、クレアの介入の大きさ。

クレア一人でニックを連れ出すなんて、できるだろうか? できたとして、そんなことをする理由があるか?

パーカーも驚いていますが、ニック脱走直後の『Dirty~』最初の月曜日、クレアは四者会談に同席します。パーカーは「参加してもいいし、外の車で待っていてもいい。君次第だ」と言っていました。参加を決めたのは、クレアの意思。

パーカーが仲間にクレアを紹介したのは、まず初めて。ハンディにもエドにも、希望したブレンダにも、パーカー軍団のだれにも、パーカーはクレアを直に引き合わせなかった。それが、ネルソンとサンドラには会わせることにした。「社交の一環」として。

その前に、パーカーはネルソンに会いに行く理由を説明しています。一連の出来事の成り行きです。ネルソンがやったとは明言しませんでしたが、マイク・ハービンとロイ・キーナンがすでに死んでいることを、クレアに教えています。

初登場『裏切りのコイン』での一件以来、暴力沙汰が嫌いで、近寄りたがらなかったクレア。それでも最低限のノルマと言わんばかりに『漆黒のダイヤ』『死神が見ている』でひどい目に遭ってきたクレア。……それでももれなく撃たれて死にかけた歴代相棒──ハンディ、グロフィールド、エドに比べたらまだマシで、グロフィールドの奥さんだってさ……(制止)

そんなクレアが、『Dirty~』では、事態に積極介入します。パーカーが運転免許証を使えないせいなのですが、マサチューセッツまで連れ出したのは、やっぱりややパーカーが強引でした。クレアがいなければ、現場に戻れなかったでしょう。ところがこれだけで終わらず、ロングアイランドのネルソンから「助けて、パーカー! このままじゃもうすぐ拷問されちゃう!」と救援要請が来たときは、パーカーはとうとうクレアに“I’m sorry”と謝る事態になり、彼でさえ遠慮してニューヨーク市内まででいい、あとは電車で行くからと言うのですが、クレアのほうから「なに言ってるの。ロングアイランドまで行くわよ。間に合わないわ」と申し出て、ドライブしてくれるのです。ネルソンの命の恩人(あとでまた同じ事態になる彼だが)。

一連のクレアは、なにを考えていたのでしょうか。

四者会談で、クレアは例のアレを聞いているのです。

ネルソン「ニックが現れたらどうする?」

サンドラ「あんたたちが彼を殺すでしょ。私は墓掘りを手伝う」

これでも、マサチューセッツ州に行くのです。ミセス・ウィリスとして。で、全般的に、できるかぎりパーカーをサポートしています。例の教会の前も車で往復するし、ネルソンのバーまでも行く。

このクレアに、一読者の私は、夜に一人でニックを連れ出せ、と無茶を言っているのです……。

2回電話しただけのニックに、クレアがそこまでする理由があるか? 人殺しであることが、全米じゅうに知らされているところの男に。……いや、彼女の伴侶パーカーも、出会った時からバリバリ人殺しなのですが。

ただ、四者会談を聞いていたら、少しだけ……少しだけ、我らが読者と同じ気持ちにはならないでしょうか。

クレアは別に優しい心の持ち主であることがアピールされているわけではありません。むしろ『裏切りのコイン』では、女性らしいといえばらしい酷薄さを、ビリー・レバタードに向けます。(ただ、その後は猛烈に反省する)

あの時、パーカーは(ビリーに)言いました。「同情がなにから生まれるか知ってるか?」

今回ばかりは、ニックをかわいそうと思ったのかもしれない。だからといって行動に出たのなら、とんでもないですが。

ただ、もうあきらめたでしょうが、初期のクレアは、ちょっとパーカーに「善き行い」をしてほしいと思っているふしがあります。『漆黒のダイヤ』がそう。暴力のにおいがしない、世の中の正義の側に蔭ながら立ってみてほしい、と。(※この後パーカーの予想どおり、クレアが暴力の気配がしないと感じた人たちは、暴力で殺されるか、パーカー先生の教育の末に手際の良すぎる人殺しとなる)

 

2回電話しただけの男か、

2回も電話した、感じの悪くない男か。

 

クレアとしても、ニックには警察につかまってほしくはない。それよりだったら死んでもらったほうがありがたい。それは確かだ。彼が直電してきたせいで(※たぶんパーカーの許可有)、家にFBIは来るし、引っ越す羽目になるかもしれないし、まったくそのとおりで、確かだが……。

死なせないのだったら、自分がとっ捕まえて、連れ出して、ついでに箱も持ち出して、家計が赤字にならないようにするのは、理に適っていなくはない……(えっ)

もちろん、教会の地下で気絶させる前に、パーカーがニックに言い含めておくのですが……

ちなみに彼女、クレア・ウィリスの名でかはわかりませんが、携帯電話だけでなく、クレジットカードも持っています。彼女の明かされていない、ラスト・ネームを使っているのかもしれない。

パーカーが、結局ロビンスに作らせた新しい身分証の名前も、どうも「チャールズ・ウィリス」にした様子です。これもはっきり書かれてはいませんが、「これまでの名前でいいか?」とクレアに確認しています。

一瞬、クレアの身分証と二人分作ったのかとも考えたましたが(エドはブレンダに、フォーセット夫妻名義の身分証をプレゼントしている)、クレアはすでにちゃんと持っていたもんね。カタギの人間として。

 

ところで、ニックが本当にこのしっちゃかめっちゃかから生存し得たとして、整形はもう必須です。パーカーも整形し、2作後にはもう役に立たなくなりましたが(えっ)、それでもやるしかない。ニック・ダリーシアのままで生きてはおれない。サンドラと折半する羽目になった残りの分け前で、やるしかない。

『電子の要塞』の途中、フランク・エルキンズがラリー・ロイドに「良い形成外科医を紹介してやる」と言っているので、その伝手を頼ろう。というか、ラリーみたいなIT専門の人材は、今後を考えるとものすごく必要だ思うんですが。ドートマンダー・シリーズのウォーリー・ナーのように(出番は2作しかないが)

そう言えばラリーは、パーカーの家にまで入って、爆弾除去までしましたっけね……(※振り返れば、なんすか、この有能)。

『電子の要塞』、思うだに冒頭から、家庭派泥棒コンビ・エルキンズとウィスによる「助けて、パーカー! 俺たち面倒事になって、暴力要員がほしいの!」だったよな……。第1作目からのつき合いだから、パーカーも、たぶん自分の役目を察しつつ、そこには触れないで出かけてあげるのですが。で、後半は「パ、パーカー……ラリーをこ、殺す? 殺しちゃう? えっ、えっ……、殺さないよね……?」感が漂う。

この二人とは、パーカー軍団の中でも非暴力派で、『殺戮の月』でも戦闘現場からは離れています。だれも殴っていないし、撃ってもいない。

ただ、それでいてなお『電子の要塞』では、最後まで流石の有能ぶりを見せます。伊達に最古参はやっていない。

 

なんの話でしたか。

 

パーカーですが、わりと行く先々で仕事でも、突発的トラブルでも、プロ、アマチュア、一般人でも、必要とあれば殴る人です。「その手は人を殴るためにある」と筆者によって、初期から書かれています。ですが、「パーカー軍団クラス」の仲間に手を上げたことは、一度もない。その必要がなかったからでしょうが、ニックをさえ、殴った描写はない。秒殺を心掛けていたらしく(おい)、一切物理的に痛めつけてはいない。ニックが勝手にガラス窓に突っ込んで怪我はしたが(悲鳴を上げるほど怖がらせたパーカーが悪いか)。捨て置かれた亡骸はだいぶ悲惨だが。

……亡骸の状態が出されるって、実はこれもパーカー小説では異例か。死んだら、はい、おしまい、だったものな。大半が。

あの地下の描写がまたむごいんだよな……

けど結局本当に、ニックがどうやって殺されたのか、一切書いていないのです。撃たれたとも首を折られたとも、なんとも。読者への手心なのか、実は本当に殺されていないのか。

ちなみにパーカーからニックへの批判、文句、愚痴の類も、地の文でさえ見当たりません。不気味なくらいに。通常、だいたい「軍団クラス」でも、仲間の長所と短所、癖や軽く生活背景までさらりと述べるのに。『ターゲット』ではだいぶワイツアーに毒ついてましたし、グロフィールドに対しては2作も面と向かって「まぬけ」etc.

 

パーカーは、銃なし同士であれば、5対1であろうが肉弾戦で勝ってしまうバケモノで、未だかつて、まともに勝負を挑んで勝てた人はいません。

それを思えばクレアが盛大にフラグを立てた後の『地獄の分け前』が、いかに大ピンチだったかがわかりますな。あれはまず確実に死んでいた。プロの殺し屋に背中から撃たれ、心臓一発即死でもおかしくなかった。それを、エバーグレイス内の池に捨てられたのですから。エバーグレイスがいかにヤバい場所かは、ドラマ『CSI:マイアミ』あたりを見ればよくわかるのですが(えっ)、あの場に変人私設軍がいなければ、あそこでジ・エンドでした……。

 

その次の次の『Breakout』では、なんと拘置所に入れられ、第1作目『人狩り』以来初めて、ロナルド・キャスパーと一致させられてしまう(※看守を殺して指名手配。当時のカリフォルニア州では極刑もあり得る)。今思えば、カムバック後もわりと容赦なくピンチを経験してきたパーカー。この時は、エド・マッキーが、頼んでもいないのに助けに来てくれるという、アンディー・ケルプ並みの厚意を見せてくれます。パーカーの仲間史上初。ハンディでさえ、最初は呼び出したから来てくれたのに。その後は死にかけるまでどこまでもつき合ってくれるのですが。

エドとケルプは、なんとなく似てますかね。エドのほうが荒っぽく挑戦的で、ケルプのほうが優しくしなやかな感じがしますが。実のところケルプのほうが、初登場が2年ほど早いんですよねぇ。

ところであと、ブレンダが私の中で、日本人か日系人では?という疑惑があるのですが、どうでしょう? 理由は、エドとの愛の営み中に枕にしゃべる、謎の日本語。「有無を言わせぬ美人」と書かれるブレンダが、日本人かも?

 

もしも悪党パーカー・シリーズの次話が書かれていたら……

ドートマンダー・シリーズも最終回にふさわしい描写もございましたし、パーカーものも『Dirty~』でファイナル・グッバイ相棒をやって、その謎を残したまま終わるのも、ふさわしかったのかもしれません。永遠となりましたもの。私やその他大勢の読者にとって。

 

でも、もしも次話があったなら、あったなら……

 

パーカー! 運転屋だけは固定しようね! 思えば、マルにアールにビーグラーどころじゃないよ。グロフィールドを巻き添えに事故ったラウフマンもだし、『ターゲット』のハウエルだって、運転していての事故だったじゃん! 『Breakout』で披露済み、エドの殺人的運転で我慢しよう! でなくば、マイクかフィリーをまずなにより第一に確保しよう。でなければ、せっかく作った新しい身分証&免許証で、パーカー自らが運転しよう。

 

やっぱり『Dirty Money』、いくら良い方向に妄想しようと、一連のニックのために読むのが辛いところがあるんですが、それでもあえての笑いどころは、「ニック・ザ・デスパレートに穏やかな顔を向けている気でいるパーカー」と、「優しい宿のおかみさんにまで、即妻をこき使う冷酷夫のレッテルを貼られてしまうパーカー」だと思うんですが、どうでしょう?(おい)

グロフィールドの顔でも借りてくるしかないよ!

 

こういうわけで、いったん一連の【検証】ないし【告発】を終わりとします。

 

またなんか思い立ったら書きます。

 

難しいとは思いますが、悪党パーカー・シリーズを読んだ方からのご意見もお聞きしたいです。

 

ありがとうございました。

 

 

◆◆◆◆◆

 

(2008年10月15日水曜日……あたり)

 

 

スタン「ハロー! ニックー! いる~~?」

ストラトン「おい、ニック! ちょっと見ないあいだに東海岸一悪名とどろかせてるな」

スタン「バーボンを持ってきたぞ。もちろん氷も! 有名人は氷を入れるもんだって、昔フィリーが教えてくれたんだ。なぁ、覚えてるかい?」

フィリー「このレベルの『有名』なら、カナダから氷山でも引いてくる必要がありそうだな」

ストラトン「それはそうと、おい、あの盗聴野郎が見つかったって噂を聞いたぞ! ということで、俺もおいおい、元のヤマを動かしたいんだが。で、パーカーと連絡をつけるのに苦労したぞ。え? ネルソン? ああ、あれは悪かった。悪かったって!」

スタン「でもパーカーは、俺たちのヤマに加わらないって。もういい加減、クレアとバカンスに行くんだって。あ、うん、もう俺たちのヤマだから。俺もフィリーも、パーカーの直推薦で代わりに入った」

ストラトン「あと一人欲しいんだがな。スタン、ハンディ・マッケイは呼べないのか?」

スタン「今、だいぶしつこく誘ってるところだよ。思うに、パーカーがほかの連中とばっかり仲良くしてるからって、拗ねてんじゃないかな……」

フィリー「それで『エド・マッキー不死身伝説』を終わらせるのは俺だとか、息巻いていたとかいないとか……。え? 今日、またパーカーがエドに電話したのか? 黙っとけよ! ……いや、あえてエサに使うか」

スタン「それ、いいな! せっかくパーカーの家を見る機会なんだからとも教えないと。まぁ、たぶん、ハンディは先に自分の食堂に遊びにきてほしかったんだろうなぁ」

ストラトン「よくわからんが、相棒関係ってのはこじれると大変だな。あ、フレッチャーとモット? 来る予定だが、なぜか遅刻だ」

スタン「俺とフィリーがパーカーの話をしたら、なんか突然体調不良とか言い出して」

フィリー「パーカーは下りたと知らせとけ」

(大勢に影響はない、ないんだ……)

(End,)

 

 

【検証4・結論】悪党パーカーへの告発

 

さて、やはりもう絶望しかないような「ニック生存説」ですが、彼が言っていたように、絶望と思ったらいつでも希望の光があります。なので、私なども走り続けなければいけません。

 

究極の問い:「ニック・ダリーシアは本当に死んだのか?」

 

を考えながら、『Dirty Money』の4つの謎を検証していきます。

【検証1】より続けて、

①教会に残された箱の数と位置

②身分証代20万ドルの出所

③パーカーが運んだ謎のa Hefty bag

④10月から11月に飛ぶ問題

 

④に関しては、今のところ解ける気がしません。というのも【検証1】で時系列を書き出せたように、『Nobody~』から『Dirty~』に至るマサチューセッツ三部作は、ほとんど隙なしのタイト・スケジュールで話が展開しています。次のチャプターにはほぼ必ず「月曜日」「火曜日の午後」「二週間前」「9日前」等々、続く日時を現わす言葉が入っているのです。そのため、2週間飛んだ隙が見つけられない。

 

③のa Hefty bagの場面だけで、「州北部の金の半分以上」、この「ヘフティ・バッグ」、「11月に飛ぶ」と、三つもの謎が現れます。

しかしながら、a Hefty bagの謎──この中身は【検証1】で推測したように、「ロフトに残した4箱のうちの、消えた1箱、すなわちダーティー・マネー」であると思われます。リビングではなくぞんざいな感じでガレージに運んだことが根拠です。おそらくは後で本体のダーティー・マネーに混ぜて処分するつもりだった、と。

 

これを元に、残り①②を検証します。

まず書いてあるとおりに。

10月11日土曜日、パーカーはニックを教会の地下で始末し、何食わぬ顔で、ネルソンとサンドラとともに、金を警戒区域外へ運び出す。この際、彼は聖歌隊用ロフトに、現金入り4箱、その上にカモフラージュの讃美歌集の箱を複数個(※複数は確定だが個数不明。おそらく2~4個)】を乗せます。そしてニックを殺し、パトロールの警官二人に応対し、サンドラの車で運転して立ち去るまで、箱を動かす隙はありません。実際、警官二人が立ち去った後、ネルソンが「もうカモフラージュの箱を下ろして、積みきれなかった現金の箱を積み直そう」と言い出すのですが、サンドラとパーカーに反対されます。パーカーは指摘します。「警官二人が今空き家に入っていくところだ。ガラスが割れて、新しい血がついている空き家だ」…というわけで、3人は大急ぎでその場から去ります。ネルソンが現金積載のトラックを運転、サンドラの車にパーカーが同乗。

そして9日後、10月20日、同じ警官二人が、教会の中へ入ります。以前はパーカーの「中はすっかり片づいていて、なにもなかった」という言葉を真に受け、教会内を調べなかったのです。そしてその時、入ってすぐの床(フロア)に箱を見つけます。3箱。4箱ではなく、3箱。ロフトではなく床。ドアから入ってすぐの床。ロフトに上がった描写はありません。

二人は3箱のうち1箱を開けて、現金がぎっしり詰まっているのに仰天します。そしてなんの金なのか気づき、地下に下りていって、そこでにおいに気づく……という。

 

この同日、警察署内で刑事レヴァーサとその上司が、この気まずそうな警官二人を同席させて、話します。警官二人が開けたのは3箱のうち1箱でしたが、3箱とも現金だったらしいことが書かれます(we opened them, it was all money.)。どっちにしろ、箱の数が足りません。カモフラージュの讃美歌集の箱はどこへ行ったのでしょうか? 持ち出されたのか? それともまだロフトにあったのか? 後者の点が言及されていません。

ちなみにこの場面の終わりに、レヴァーサが「9日前はすべてがそこにあったのに」と言っているので、ニックの死体発見とレヴァーサの嘆きは本当に同日の出来事でしょう。つまり、ニックの亡骸の身元確認は、同日中になされた。

ただ、まず、ここで重要な問題は、なぜロフトにあったはずの箱が、下の床に下りているのか、です。しかも現金入り3箱が。4箱だったはずの3箱が。

 

この日、パーカーは、逃走中はサンドラと、そして夕食をとるまではネルソンとも一緒にいます。夜、サンドラは私物がまだあるからと宿に引き返しました。パーカーとネルソンは、警戒区域外のモーテルに泊り、そこに付属のバーと食堂を利用します。

 

しかし、消えた1箱を使ったのは、パーカーしか考えられません。

 

まったく無関係の他人が、たまたま見つけたのならば、現金入りの残る3箱を置き去りにするはずがありません。ニュースでダーティー・マネー(使えない金)だと知っていたなら、現金入り1箱だって持ち出す理由はないし、持ち出したとしても「3箱をフロアに下ろして放置した」理由に説明がつきません。ロフトに置いたまま、欲しい箱だけ持ち出せばいいのです。

 

なぜ、下のフロアに下ろしたのか? 現金入り3箱を。

 

色々考えたのですが、これ以外考えられません。

 

見つけやすくするためだった。盗まれた現金を。そしてニックの死体を。

 

なんのために?

 

 

さて、②身分証代20万ドル

 

バカな私が修正したように、20万ドル全額ではなく、半分の10万ドルの前払いでした。ロビンズは「約」20万ドルとも言っています。パーカーはこの前払い「約」10万ドルを即時支払するため、クレアの待つ車から「ダッフル・バッグ」を持ち出します。これは『Ask The Parrot』にて、トム・リンダルが袋詰めしてくれたままのダッフル・バッグの一方です。その際、バッグは満杯だったとも書いてありました。この中身は、警察関係者から語られますが、約10万ドル。多少の過不足ありで、各10万ドル。リンダルもパーカーもこの金を厳密に数えていません。ただあっただけの現金を、適当に半分に袋詰めしただけ。

 

ダッフル・バッグの約10万ドル。

 

場面はこの金を、パーカーとロビンズが数えているところで終わり、2チャプター後、パーカーは地の文で言います。「州北部で得た金の半分以上を使った」

 

……やはり、おかしくないか?

 

前金約10万ドルに対し、ダッフル・バッグの約10万ドルの半分以上を使ったと言っている。

足りないじゃないか……!

「半分以上(more than half)」ではなく「ほとんど全部(almost allとかmost of)」ならまだわかる。が、半分以上(過半数)とは、約10万ドルの内、いったいどこまでの額を言っているのか。

 

仮にロビンスが約20万ドルを18万ドルにしてくれたとしましょう。

そしてパーカーのダッフル・バッグには約10万ドル予定のところ、幸運にも12万ドルも入っていたとしましょう。

9万ドル、ロビンズに前払い。後払い分が9万。

半分以上は半分以上です。(16万ドルで、前8万後8万も考えました)

ただ、どっちにしろ、この場合、パーカーは赤字か、良くてトントンになります。

9万ドル前払いで、ダッフル・バッグの残り3万ドル。これに資金洗浄取引後の現金輸送車の分け前を足して、後払い分とする。

 

本筋、現金輸送車の分け前ですが、実は『Nobody~』でも『Dirty~』でもはっきりと配分は書かれていないのです。

ただ手掛かりはあります。『Nobody~』の最後、パーカーはメッチェン医師のインタビューが映るニュースを見ます。ジェイク・ベッカムのアリバイ作りに協力したメッチェン医師。パーカーが述べるに、その分け前は、全部が「当初の予定どおりに進んだ場合」「ジェイクの3分の1」で、それは「20万ドル未満で、ブリッグスの分け前より少ない」と。そして強奪の収穫は、220万ドルとニュースでは言っているが、保険会社は損害を誇張するものだし、小銭は置いてきたから、実際は「150万ドルに近いのではないか」と推測しています。

あいだを取って、200万ドルとしましょう。「当初の予定どおり」であれば、まだネルソンがいなかったので、パーカー、ニック、ジェイクの3等分になります。

パーカー 5.5万(55万)

ニック 5.5

ジェイク5.5 →メッチェン1.8

ブリックス 3.5

これで200万(→20万)で、筋は通ります。ブリッグスの分け前は全体の2割未満。

 

実際は、これにネルソンを加えたため、配分が変わります。これも推測ですが、

パーカー 4.5

ニック 4.5  →内サンドラ2.25

ネルソン 4.5

ジェイク 4.5 →内メッチェン1.5

ブリッグス 2

 

またはジェイクが4で、ブリッグスが2.5かもしれません。そうすればブリッグスが当初の配分に近くなる。

 

いずれ、つまり、パーカーの予想配分は4.5万ドル。これにサンドラが半分持っていったニックの分け前2.25万を、ネルソンと折半せずに独り占めしたとしても、6.75。7万ドル未満。(折半したなら6万ドル未満)

 

戻りまして、

身分証代20万ドル→18万ドル

ダッフル・バック10万ドル→12万ドル

と良く見積もったうえで、

前払い9万ドル、後払い3万+6万で、18万。

これでギリギリで、赤字回避できるかどうかです。しかし、甘い見積もりであることは、見てのとおりです。まずもって、ダッフル・バッグに12万も入っていたか。ロビンスは2万ドルもサービスしてくれたか。

 

では、「約」を取り払って考えます。

身分証代20万ドル。

前払い10万ドル。ダッフル・バッグ10万ドル

輸送車強奪のアガリは、多めに6万ドル。

 

ダッフル・バッグのほとんどすべてを使ったとして、後払いの10万ドルを、パーカーはどうするのでしょうか。輸送車のアガリを入れても、赤字確定です。

 

赤字でもまぁ、しょうがないだろ、そういうこともある。それに、パーカーだって貯金はないわけじゃない。むしろ常に金はたっぷりあると『エンジェル』にも書いてある……と思われますが、『Nobody~』の前半、【検証1】で書いたように、パーカーはクレアに言われて、他人の家貯金から2万ドル引き出しています。このうえで赤字はさすがに痛いのではないでしょうか。しかも例の「州北部の金」と「a Hefty bag」と「11月」問題と同じ場面、パーカーは考えています。「2つの問題──金と身分証が片づいたら、クレアとどこか南のほうへ行く時だろう」

いいや、バカンスなんて考えている場合ではありません! このままでは万単位の赤字確定なんです!

すでに2万ドル貯金を崩したうえ、身分証代で万単位の赤字見込み、それなのにバカンス?

 

赤字を防ぐため、聖歌隊用ロフトから1箱持ち出してはいないでしょうか?

 

これはダーティー・マネーですから、普通には使えません。ですが、某あとがきにも書きましたが、偽造屋ロビンスの支払いには、一部ならば使えるのではないでしょうか。たとえば身分証作りなら、海外への経費にダーティー・マネー15万、ロビンスの純利益にクリーン・マネー5万。

 

そしてダッフル・バッグに入っていたのは、12万というラッキーではなく、実際は10万ドル未満、たとえば9万8千ドルだったとしたらどうでしょう?

パーカーは身分証代の前金に、ここから5万払った。「州北部で得た金の半分以上」になります。

そして残り15万を、ロフトにあった1箱で支払った。

これで赤字回避できるうえ、パーカーの手元には4万8千+現金輸送車のアガリが入ります。

計算も、無理なく合います。

 

だから、ロフトから現金入り1箱を持ち出したのは、ほかでもない、パーカーなのです。

 

 

では、いつ、どうやって?

 

実は、例の教会から逃走した土曜日、クレアの手が空いています。この日のおそらく午前、クレアは宿を一人でチェックアウトして、車があります。さらに、この少し前に明かされるのですが、彼女は携帯電話を持っています。

モーテルで夕食をとった後のパーカーと、連絡を取り合えるわけです。

 

しかし、クレア一人で、土曜日に教会から1箱持ち出せたとは思えません。まず、箱が重い。サンドラでさえ、力仕事を男ども(パーカーとネルソン)にやるよう言って、自分は車で見張り役をしていました。それでも1箱くらいは持てたでしょうが、まずもう夜です。最低限、運び役と懐中電灯係の二人が要ります。

実は『Nobody~』にて、あの教会の、少なくとも地下室は電気がつくことが、強盗犯3人によって確かめられています。いますが、夜に明かりをつけることは、窓が多すぎて危険と、パーカーは懐中電灯を使うことにさえ慎重でいました。

だから、あの当日夜に、現金1箱を持ち出したとは考えにくい。

やったとしたら、翌日曜日でしょう。この日は動向不明の日です。パーカーはこの日にフランク・ミーニーに電話すると言っていましたが、日曜日ですからね。ビジネスマンのミーニーは出社していない可能性が高い。

あるいは日曜日ではなく、もっと後でもできなくはない。が、いつ、また教会が調べられるとも限らないので、早いに越したことはない。

ただ、この月曜日から金曜日まで、パーカーはわりと忙しい。月曜日はミーニーに連絡をつけ、早くも同日午後2時には直接会っています。火曜日から木曜日はエド・マッキーからの電話を自宅近所の公衆電話で待たねばならず、金曜日はもう身分証作りにロビンズのところへ出かけています。

だから、やったとしたら、土曜日夜~日曜日まで。空白の日曜日が有力。

 

ところでですが、この1箱持ち出しは、パーカーによる仕事内の不正ではないのでしょうか? ネルソンはこれを知らないでしょうし、わざわざ知らせる理由もありません。ですのでこれは、パーカーによるちょろまかし以外のなんでもない。たとえほかに使い道のないダーティー・マネーだったとしても、相棒に無断でちょろまかしたことになります。

パーカーが自分一人のために。

 

ただ、なぜパーカーは、あえて危険を冒して教会まで戻って、1箱を手に入れたのでしょうか? その気になれば土曜日夜、モーテルにて、ネルソンが寝ている隙にでもレディーマー・トラックからちょろまかせばよかったのでは? 尾行に気づかなすぎるネルソン相手です。おそらく気づかれません。

なぜ、教会まで戻ったのか?

精巧な似顔絵が出回っているのに。

ただ、土曜日の時点で検問が解除されたことを知り、サンドラと一緒ならば車を止められもしなかった。ネルソンのほうは止められ、警官たちに意地悪をされましたが、カモフラージュのおかげでセーフ、となったのに。

だから、クレア、あるいはサンドラと一緒で、しかも日中を避けたなら、危険ではありますが、教会まで戻って戻れなくはなかったのです。

女性と一緒、というのがポイントです。

だから、現金入り1箱を回収するために、クレアかサンドラの運転する車で向かったとしか思えません。ちなみにどちらの女性もケータイを持っています。

土曜日に、サンドラと? の可能性も考えましたが、私は否定的になりました。1箱のちょろまかしはパーカーだけの利益であって、サンドラにとっての得はなにもないからです。レディーマー・トラックさえ無事なら、サンドラとしてはオーケー。

だから、パーカーと利益を共にするクレアの協力が最有力です。実際、パーカーの身分証がレヴァーサ刑事によってダメにされたため、運転やらなにやら『Dirty~』でのクレアの活躍は、異例なほど大きいです。最初の四者会談に同席することを選んだときは、パーカー自身も驚いたとの描写があります。

ネルソンの救援要請に間に合ったのも、クレアがロングアイランドまで長距離ドライブしてくれたおかげ。

しかし彼女一人ではさすがに厳しい。が、彼女の協力はあった可能性が高い。

 

ところで、ここで最大の謎が生じます。

 

箱が1つ減った理由は、推測できました。問題は、なぜ残る3箱が、ロフトではなく下のフロアにあったのか、ということです。

 

クレア一人にしろ、パーカーと二人にしろ、あの箱複数をわざわざフロアに下ろす理由がありません。必要な1箱だけ持って、あとはそのままロフトに置いておけばいいのです。

 

なぜ現金3箱が、下のフロアの、目立つところに置かれていたのか。

 

これが『Dirty Money』最大の謎です。

 

さて、大いに戻りまして、あの③a Hefty bagです。10月20日(月曜日)、私はあれを、ダーティー・マネーの残りだと推測しました。ロビンズに支払った残りのダーティー・マネーを、資金洗浄取引の前に、ネルソン保管の「本体」と混ぜるつもりだったと。余ったのならば、持っていても仕方がない。あとでミーニーに「数えたら、200万どころかほぼ150万だったんだが!?」と文句を言われないともかぎりませんし。

もしもあの1箱に20万ドル入っていたら、身分証作りのあとに5万余ります。15万がダーティー、5万が州北部からのクリーン。

余りのダーティー5万──それがヘフティ・バッグの中身だったのでは。

 

つまり、金曜日にロビンズと会ったパーカーは、空白の土日を挟んで、月曜日に、あのダッフル・バッグを、他人の家に預け直したのではなく、a Hefty bagに入れたダーティー・マネーを持って出てきた。

 

待て。ちょっと待て。

 

なぜその他人の家にダーティー・マネーがあるのか? その家から出てきたパーカーが、新たにa Hefty bagを運んでいるのか?(carriedと表記されている。だからたぶんそんなに小さいものではない)。

 

自分で持っているなら、まだわかる。ダッフル・バッグと一緒にロビンスのところに持っていって、余りを処分するまで手元においておけばいいのです。ダッフル・バック以外を持ち込んだ描写はないですが。

だから「他人の家」から出てきたパーカーが、a Hefty bagを持っているのは、どうしたっておかしい。筋が通らない。

そもそも後払いの10万+余り5万を一緒に車に積んでいた? でもミーニーの会社からの帰り道だぞ? 

だから「後払い分&余り」はあらかじめその他人の家に置いてあったのでは。土・日のうちに。

 

ここで残る謎をもう一度整理します。

①なぜ教会の3箱がフロアに移動したのか?

②なぜ他人の家から出てきたパーカーが、a Hefty bagを持っていたのか?

③11月問題(※これはもう投げます)

 

①、前に書いたように、3箱を下に移動する理由は、見つけやすくするため以外に考え難い。強奪した金を。ニックの死体を。

 

ニックの死体が見つかって、得をするのはだれか?

 

パーカーには好都合でも不都合でもなかった。現に火曜日、資金洗浄取引の直前に、ニックの死体発見のニュースが広まっても、パーカーはせいぜいレディーマー・トラックを塗り直すよう、ネルソンに言っただけだった。

むしろ好都合か? 警官殺しのニックが死んだなら、事件の終わりといえば終わりです。

 

ほかに、ニックの死体が見つかって、好都合なのはだれか?

 

警察関係者、付近住民……etc.

ネルソンとサンドラも、ニックが死体で見つかったほうが好都合でしょう。ネルソンは警察に売られる心配も、脱出したニックに押しかけられる心配もなくなる。サンドラも、分け前を半分奪った件で追い回されることがない。ちなみに生きて逃げ続けるのなら、そのうち賞金がかけられるだろうから、それぞ彼女の本職=もうけにもできる。(※実際、序盤ではその可能性も口にしている。マイク・ハービンも州の警官を殺したために、賞金首になっていたと『Nobody~』にあるし……なんというフラグだ

 

しかし、それはそうと、

 

もう一人、ニックの死体発見が好都合である人物がいやしないか。

 

言っておきますが、このままでは、パーカーが裏切り者です。

文字どおり身分証代20万ドルに、教会から1箱ちょろまかしたダーティー・マネーを使ったのならば、不正です。ネルソン、サンドラに対してだけではない。

読者への不正であり、裏切りです。

 

らしくもない。パーカーらしくもないが、ヘフティ・バッグの中身は、まず間違いなくダーティー・マネーです。

 

この件への弁明が許されるとしたら、もう一事しかないでしょう。

 

 

(※以下、やはり妄想じみた話になるのは否めないので、ご容赦ください。ここまでお付き合いいただいたのに、恐縮ですが)

 

 

やはり身分証代は、1人10万で、2人分だったのではないか。『地獄の分け前』で、ジュリアス・ノルティに頼んだ時は、1万ドルだった。それよりもっとずっと頑丈なものを、パーカーが求めていたのは明らかだが、それにしたって20万ドルは法外ではないのか。家が建つ。マンションが買える。

1人10万で2人分。

パーカーは自分一人のためだけにちょろまかしたのではない。サンドラに分け前の半分を取られることになった、ニックへの代替案として、箱の中身で取引したのではないか。

やはりパーカーが、ダーティー・マネー5万(後払い)、クリーン5万(前払い)

ニックがダーティー・マネー10万(前払い・後払い込み)

これで身分証代20万。

それでも余ったおよそ5万かいくらかを、a Hefty bagに入れて、パーカーが持って帰った。あの月曜日に。

シーズンオフで、実質空き家である他人の家。そこに隠れていた男が、

「ああ、そうか。明日ミーニーとフェリーで取引が決まったのか。ところで、パーカー、あの箱を数えたら、あと5万ほど余ったんだ。けど俺、もうこんな金持っていたくないからさ、ネルスのとこに行くついでに処分してくれよ」

 

戻って、前週土曜日の深夜、パーカーはクレアの運転で、教会に戻った。あるいはクレアだけが、教会へ行った(!)。そして、ニック・ダリーシアだけ連れ出した。トランクにでも後部座席にでも突っ込んでおけば、もう問題なく脱出できると知っていた。

クレアはパーカーと同じモーテルに部屋を取った。どっちにしろパーカーとニックはここで合流した。クレアはパーカーの部屋で休み、ニックには自分が取った部屋を使わせた。

翌日曜日、クレアが来てくれたから大丈夫と、ネルソンを一人レディーマー・トラックで自宅へ返し、パーカー、クレア、ニックの3人は、ニューヨーク州北部に向かう。警戒区域外とはいえ、ニュースやら何やらでそこらじゅう自分たちの写真と似顔絵であふれているが、マサチューセッツを脱出したなら、もう少しましな変装ができる。クレアは以前パーカーの(実は下手だった)変装を直してあげたことがある(『地獄の分け前』)。

ニューヨーク州北部でなにをするのかを言えば、身代わり遺体の掘り返しである。『Ask The Parrot』にて、強盗一味を捕まえようとはりきりすぎたボランティアが、誤って射殺してしまった遺体である。パーカーならその場所を特定できる。これがだめでももう2人位殺しているので──(略)

日曜の夜、マサチューセッツ州のあの教会に、危険を冒してでも戻る。クレア運転、パーカー助手席、ニックは後部座席に隠れ、トランクにはご遺体を入れて運ぶ。

教会内。パーカーとニックの二人。クレアは車で待機。地下の電気をつけ、入れ替え工作開始。ニックは脱走時に来ていた服をそのご遺体に着せる。指紋は潰す。顔も潰す。お気の毒ながら。そしてシンク下に入れる必要はない。警察官二人が発見したシーンでもそのあとも、パーカーが押し込んだ「シンクの下」から死体が見つかったという話はなかった。地下にさえあればいい。そのほうがにおいもはっきりわかったことだろう。

遺体の処置を終えたあと、ロフトから箱を下ろす。1箱、クレアの車のトランクに積む。(ないし、もう要らないと思うが、カモフラージュ箱も望むならば) 残り現金入り3箱は、ドア付近のフロアに置く。いずれ見つけてもらうために。ニックの遺体もろとも見つけてもらうために。

ニックの身元確認問題ですが、指紋は取られていたにせよ、DNAはもしかしたら採取されていなかったのでは。取り調べ前だったから、警察では。

というのも、ニックがぶち破った空き家の窓ガラス。あれにニックの血痕が残っていたのですが、DNA鑑定して、ニック・ダリーシアのものだとわかったならば、もっと早いうちに教会は再び調べられていたのでは? 9日経って、あの警官二人とも、あの窓ガラスの血痕がだれのものだったとも言っていない。ニックと照合してもみなかったか、ニックのDNAが未採取だったかのどちらかだ。

だったらあの教会の地下に、遺体と、服(血痕つき)と、髪の毛、輸送車の金、あと奪った警官の銃でも置いておけば、もしかしたらあの亡骸をニックと鑑定してもらえるのではないか。

 

甘いだろうか?

 

DNAがないなら、だれかが死体を見て「間違いありません。ダリーシアです」と言うしかないのだが、ニックに身内がいる形跡がない。生前、ニックは今後の逃走ルートを頭に思い描くのだが、そこにはだれも……だれもいない。家族も恋人も友だちも登場せず、ただ、一人きり、ダーティー・マネーを使いながらカージャックでカナダを逃げまわる自分しかいないのである。

……アンタって人は……。

 

だが、思い出せば、ニックの遺体は発見当日に身元確認されている。半日も経たずに。レヴァーサに一報が入った時には「身元確認中」、レヴァーサと上司と警官二人が話している時に「身元判明」

DNA無しでも、状況だけでニックと見なせそうではありますが……もしもあとひと押し必要ならば……

ところでニックには、仲介人がいます。コネティカット州在住、保険会社のOLグレイスで、ニックのことを「最高の元夫」と呼ぶ。無論、実際に結婚していたわけではなく(それとも、してたの!?)、「顔も合わせず、言い争いもせずに、定期的にお金をくれるから」です。でも彼女、ニックのことをかなりよく知っている。「職業:強盗」であることも。『Nobody~』では「数日前にニックから電話があり」、図書館のヴァン・ダインの本にメッセージを挟んで仲介をしている。グレイスにとって、ニックの仲介は副業なのです。

で、ニックには電話友だちがほとんどいないと書かれています。それでたった2回直電しただけで、クレアの家にFBIが来ることに。

そうなると、ニック脱走の件で、グレイスもまず確実に当局の訪問を受け、しばらく不愉快な思いをしたはず。でもまぁ、ただの仲介人で、なにも知らなかったと言い張れば、逮捕はされないだろうし、パーカーの言い分ですが「警察も、ニックはかくまわれるのに知り合いを頼らない程度には頭が切れる、と考えている」…となると、隣の州のグレイスがニックの居所を知っているとは思わない。

ただこの彼女、ニックと一度もまったく顔を合わせたことがない、なんてことがあり得るだろうか? 少なくとも仲介人に任命された最初の1、2回は直接会っているのではないか。

だから、グレイスならば、本当に嫌だろうが、ひどい状態のご遺体を見て「これがニックです」と、言えるのではないか。いきなり発見されても、同日中に。

箱を運び出し、遺体を運び込んだ、あの日曜日にでも電話1本入れておけばいい。(無論どっかの公衆電話かなにかかから)

「グレイス、悪いが、これが最後の頼みだ。教会から死体が見つかったら、どう見えたとしても俺だと言ってくれ」

「無理でしょ! 写真が出まわってるのよ!」

「顔はよくわからないようにしたから。で、俺たちは、もう寝たということにしよう。いいか? これからあの死体にあったアザやほくろを教えるから──」

 

ニックの死因が結局不明なままなのも、ひっかかります。が、公式発表は「銃殺」でなければいけません。「身代わり遺体」がそうだったから。

だからあの時……ニックが地下に光を差し入れた時、パーカーが銃を取り出したのは、撃つため。ニックではなく壁でも狙って撃ち、ニックに彼を殺す気はないことを示し、一方で銃声が聞こえたならばネルソンとサンドラには、地下にやってくる前に「ニックを片づけた。俺は後始末をしていくから、見張りと積載を続けてろ」とでも言っておけばいい。

結局、警官二人が来たために発砲できなくなったので、後日ニックの死因をニュースで知ったなら、ネルソンとサンドラは首をかしげるかもしれません。「あのときパーカーが殺ったに違いないけど、銃声は聞こえなかったな…」

けどまぁ、それっきりでしょう。

死体発見後のお二人:

サンドラ「パーカー、お願いだから、もう誰も殺さないで」

ネルソン「ニックめ、死んだあとでもどんだけ面倒を起こすんだよ」(←PART4だけで3回救出されたアナタに言われたくない!)

 

 

以上です。

 

以上でなければ、パーカーがほんとにひどいと思うんですが、どうでしょうか……?

 

とにかく、これが今日2024年5月、新たに愚かな一ファンのわたくしめが出した、「ニック生存説」の結論です。

 

論拠はほとんど「ロフトの箱が下に移動していた」のただ一事につきます。わざわざこのようになっていなければ、パーカーが箱を1つこっそりちょろまかしただけの話で済みます。身分証代も文字通り20万です。

 

「20万ドル=二人分の身分証」と「遺体のすり替え」が、どう考えてもこじつけっぽく、強引なのはわかっています。

 

ただ、私は、ニック生存を信じたいのはもちろんですが、どうにもパーカーが、相棒たちに黙って1箱を我がものにした、とは考え難いのです。冷静になった際のニックとの交渉に使う、かつ自分の損にもならないようにする、が最もスマートに思えるのです。

 

だって、やっぱり、そうでしょう? ネルソンへの裏切りはさておいて、読者への裏切りであり、こそこそと教会に戻った末のケチなちょろまかしになってしまうんですよ?

 

そうでなければ、パーカーのしたこととは、

一度ならずドジを踏んで手を焼かせ、こっそり裏切りまで企んでいたネルソンを生かし、

調査書類一式で、ほとんど脅して横入りしてきたサンドラも生かし、

自分だって看守を殺したしあれこれやっているのに、相棒を見捨て、

今だ一人も手にかけるどころか殴ったことさえない「パーカー軍団」の、敵に殺された以外は全員生存を続けたパーカー軍団の──

その一人を無惨に殺しておいて、しかも無視も同然の扱いで、真剣でもない狙いで殺しておいて、

殺しておいて、

自分は相棒たちにも読者にも内緒で、教会から1箱ちょろまかした……?

そんな「悪のヒーロー」が、許されますか?

 

やっぱり私はトム・ハーリーに憑依して怒りをぶちまけに行くしかない??

 

はい、そうです。これは私の新「生存説」というよりは「告発」です。

 

ですからどなたか、パーカーの弁護をしてください。私も聞きたい。たぶん私はバカだから、どっかでなにかを見落としているんです。でなければ、妄想に取り憑かれ、深みにハマっているんです。

 

もう答えはわかりません。というか、残された作品から考えるしかないのです。ただ、作者スターク氏は『Dirty Money』を最後にするつもりはなかったとは思います。

 

 

さて……某『哀歌』諸々を書き直しましょうか(えっ)。だれにもこれ以上、私の間違いとか、バカさ加減とか、訂正をなされないのならば。

あれらはファンフィクです。結局のところファンフィクであり、妄想の産物にすぎません。それ以上に、想像だけならば自由です。都合の悪いところに目をつむるのも、エンタメであるかぎり自由です。だから、あのまま私の頭の中でだけ、『哀歌』~『ラスト・デイズ』も、『ライン』まで、保管しておいたって、だれにもなにもできません。

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(↑もうリンクを乗っけるのが恥でしかない状況になりましたね…)

でもですね、そもそもロビンズが「20万ドルの半分前払い」を言い出すとは、パーカーにもわからなかったはずです。全額前払いだったかもしれない。多額なのはロビンズもわかっているので「いつ用意できますか?」と訊く。パーカーが「今、車にある」と言ったので、ロビンズも驚いたわけです。

その後、ロビンズからカナダでの雇用記録等々手続きの流れを聞いて、パーカーは言います。「簡単そうだな」

でも20万ドルもかかるんです。

(......10万がいいとこじゃないですか? 10万と20万ドルは、昨今の円安を無視しても1000万円と2000万円の差ですよ?)

 

そう、別に20万ドル全額前払いの可能性もあった。

だから私の

①『哀歌』〜『ラスト・デイズ』みたいな説(謎のピックアップトラックを利用)→生存説

②パーカーが仲間にも読者にも隠した不正説 →死亡説

③パーカー、ニック、クレアによる工作説 →生存説

以上のどれも、ありえるっちゃありえるんです。

 

......おお、祭りをするはずが、こうしてまたとんでもなく長々しいものになってしまった!

なにをやっているんだろうな、私は。

どうしてこんなにも取り憑かれたのかな。

やはりこのうえもなく幸せな、一ファンであり読者だったということでしょうな。

 

 

さて、新しい検証は、ここまでにします。またなにか見落としに気づかないかぎりは。

 

あとはおまけの話……かな?

 

 

(※以下は、単なるアイキャッチ用画像です)