(※ワンクッションの写真は、一連の記事には関係ない、もう20年近く前のNYにて、自分で撮影した、ケルプとバーナードが食事したレストラン)
(※今さらですが再度、勝手な妄想&ネタバレご注意ください!)
今回、新仮説を掲げるにあたって、いったん捨てたのが「第3者の介入」でした。すなわち、前に某『哀歌』~『ラスト・デイズ』で中心に書いた、アル・ストラトンほか、パーカーの仲間たちが、次の仕事のためにニックを回収し、別の遺体とすり替えた、という説です。別に所詮はファンの妄想ですから、それはそれで捨てなくてもいいとは思うのですが、まぁ、あれはファンフィクらしい願望が大いに、大いに入っていましたから。
『Nobody~』冒頭、ストラトンが「歯科用金」の仕事を計画していたのは、事実です。ネルソンがニックをほぼ殺すつもりで探しながら、ストラトンのところへ行ったのも事実です。『Dirty~』で、赤いピックアップトラックがなぜか通りかかって、乗っている男二人が、パーカー、ネルソン、サンドラへ手を振ったのも事実です。
これを二次創作で利用するにあたって、ピックアップの男二人が、ネルソンの知っている人物ではマズいと考えたために、スタンとフィリーをねじ込む荒業を行ったのでした。だってこの二人はカムバックしていなかったから。30年も音沙汰なしのままだったから。会いたかったから。たとえまがいものだったとしても。
ハンディとグロフィールドもな! グロフィールドはわからんでもないが、ハンディがカムバックしなかったのは、本当にどうしてなんだろう? また引退したとしても、仲介役として、名前さえ一切出てこないのはおかしくないか? スターク氏がなんらかの意図を持って、ハンディを出さないようにしたとしか考えられない。
……まさかと思うが、ハンディはお亡くなりになったのではないか……とさえ、考えました。でなければ、こんなにも不在なのはおかしい。出てくるならば、とっくに出ているはずだったから。それが、出てくる気配もないまま最終作に。これは未だになんとも言えない。
カムバック後、ハンディの役割だったところは、ほとんどエド・マッキーが継いでいます。……なぜ映画関係者は、『PARKER/パーカー』(原作:『地獄の分け前』)で、エドではなく、ハーリーをパーカーの相棒ポジに選んだのか。エドだって、原作に電話出演しているのだから、条件はハーリーと同じだ。
エドが何度か「もう終わり」という目に遭いながら『Dirty~』でも元気に電話出演して“an old partner”としてラストを飾り、ハーリーが相棒ポジで映画出演し、マイクもワイツアーもウィスもエルキンズも無事カムバック&生存し、ほぼ裏切りを企んだネルソンが一度ならずのドジの末にもパーカーに救出され続けたのに、ニックの件は読めば読むほどあまりにあんまり……。あまりに気の毒だからか、いつぞやは英語版wikiでも見かけた気がする。ほとんど無視に近い扱いの末、真剣に標的にされてはいないのにパーカーの手にかけられたのが、むごい。敵役や警察の手にかかって命を落としたならまだわかるが、パーカーの手にかかるのはあんまりだ。それでこそパーカー!と、なるんだから、本当にあんまりだ……。
テリー・マルカニーが、事件をネタに本を書こうとしていたのも、事実です。だからそれを読んだという前提で、私が(本名と同じイニシャルである)トム・ハーリーに取り憑いて暴れまわったとしても、ご容赦いただきたかった(おい)。
いつぞや、トム・ハーリーについて「一次でも二次でも、創作でこんなに口の悪い男は書いたことがないわ!」と書いたものですが、偽らざる私の本心が、そこにあります。「馬鹿が! 馬鹿が馬鹿が馬鹿が!」「こいつこそ引退すべきだった」etc.
話を戻しまして、新説で、「第3者の介入」を極力減らそうとした件。
主な登場人物だけでも、なんとかこじづけられるのでは?と考えました。遺体のすり替えはどう考えても強引でしかないのですが、今にして思えば、だれか他人にやってもらうのではなく、遺体の工作はニック本人がやるべきだと思いました。場所はパーカーなら言い当てられるし、パーカーでなければ埋められた場所を特定するのは困難でしょう。
結果、謎のピックアップの男二人は、ただの通行人として流すこととなりました。
あとは、クレアの介入の大きさ。
クレア一人でニックを連れ出すなんて、できるだろうか? できたとして、そんなことをする理由があるか?
パーカーも驚いていますが、ニック脱走直後の『Dirty~』最初の月曜日、クレアは四者会談に同席します。パーカーは「参加してもいいし、外の車で待っていてもいい。君次第だ」と言っていました。参加を決めたのは、クレアの意思。
パーカーが仲間にクレアを紹介したのは、まず初めて。ハンディにもエドにも、希望したブレンダにも、パーカー軍団のだれにも、パーカーはクレアを直に引き合わせなかった。それが、ネルソンとサンドラには会わせることにした。「社交の一環」として。
その前に、パーカーはネルソンに会いに行く理由を説明しています。一連の出来事の成り行きです。ネルソンがやったとは明言しませんでしたが、マイク・ハービンとロイ・キーナンがすでに死んでいることを、クレアに教えています。
初登場『裏切りのコイン』での一件以来、暴力沙汰が嫌いで、近寄りたがらなかったクレア。それでも最低限のノルマと言わんばかりに『漆黒のダイヤ』『死神が見ている』でひどい目に遭ってきたクレア。……それでももれなく撃たれて死にかけた歴代相棒──ハンディ、グロフィールド、エドに比べたらまだマシで、グロフィールドの奥さんだってさ……(制止)
そんなクレアが、『Dirty~』では、事態に積極介入します。パーカーが運転免許証を使えないせいなのですが、マサチューセッツまで連れ出したのは、やっぱりややパーカーが強引でした。クレアがいなければ、現場に戻れなかったでしょう。ところがこれだけで終わらず、ロングアイランドのネルソンから「助けて、パーカー! このままじゃもうすぐ拷問されちゃう!」と救援要請が来たときは、パーカーはとうとうクレアに“I’m sorry”と謝る事態になり、彼でさえ遠慮してニューヨーク市内まででいい、あとは電車で行くからと言うのですが、クレアのほうから「なに言ってるの。ロングアイランドまで行くわよ。間に合わないわ」と申し出て、ドライブしてくれるのです。ネルソンの命の恩人(あとでまた同じ事態になる彼だが)。
一連のクレアは、なにを考えていたのでしょうか。
四者会談で、クレアは例のアレを聞いているのです。
ネルソン「ニックが現れたらどうする?」
サンドラ「あんたたちが彼を殺すでしょ。私は墓掘りを手伝う」
これでも、マサチューセッツ州に行くのです。ミセス・ウィリスとして。で、全般的に、できるかぎりパーカーをサポートしています。例の教会の前も車で往復するし、ネルソンのバーまでも行く。
このクレアに、一読者の私は、夜に一人でニックを連れ出せ、と無茶を言っているのです……。
2回電話しただけのニックに、クレアがそこまでする理由があるか? 人殺しであることが、全米じゅうに知らされているところの男に。……いや、彼女の伴侶パーカーも、出会った時からバリバリ人殺しなのですが。
ただ、四者会談を聞いていたら、少しだけ……少しだけ、我らが読者と同じ気持ちにはならないでしょうか。
クレアは別に優しい心の持ち主であることがアピールされているわけではありません。むしろ『裏切りのコイン』では、女性らしいといえばらしい酷薄さを、ビリー・レバタードに向けます。(ただ、その後は猛烈に反省する)
あの時、パーカーは(ビリーに)言いました。「同情がなにから生まれるか知ってるか?」
今回ばかりは、ニックをかわいそうと思ったのかもしれない。だからといって行動に出たのなら、とんでもないですが。
ただ、もうあきらめたでしょうが、初期のクレアは、ちょっとパーカーに「善き行い」をしてほしいと思っているふしがあります。『漆黒のダイヤ』がそう。暴力のにおいがしない、世の中の正義の側に蔭ながら立ってみてほしい、と。(※この後パーカーの予想どおり、クレアが暴力の気配がしないと感じた人たちは、暴力で殺されるか、パーカー先生の教育の末に手際の良すぎる人殺しとなる)
2回電話しただけの男か、
2回も電話した、感じの悪くない男か。
クレアとしても、ニックには警察につかまってほしくはない。それよりだったら死んでもらったほうがありがたい。それは確かだ。彼が直電してきたせいで(※たぶんパーカーの許可有)、家にFBIは来るし、引っ越す羽目になるかもしれないし、まったくそのとおりで、確かだが……。
死なせないのだったら、自分がとっ捕まえて、連れ出して、ついでに箱も持ち出して、家計が赤字にならないようにするのは、理に適っていなくはない……(えっ)
もちろん、教会の地下で気絶させる前に、パーカーがニックに言い含めておくのですが……
ちなみに彼女、クレア・ウィリスの名でかはわかりませんが、携帯電話だけでなく、クレジットカードも持っています。彼女の明かされていない、ラスト・ネームを使っているのかもしれない。
パーカーが、結局ロビンスに作らせた新しい身分証の名前も、どうも「チャールズ・ウィリス」にした様子です。これもはっきり書かれてはいませんが、「これまでの名前でいいか?」とクレアに確認しています。
一瞬、クレアの身分証と二人分作ったのかとも考えたましたが(エドはブレンダに、フォーセット夫妻名義の身分証をプレゼントしている)、クレアはすでにちゃんと持っていたもんね。カタギの人間として。
ところで、ニックが本当にこのしっちゃかめっちゃかから生存し得たとして、整形はもう必須です。パーカーも整形し、2作後にはもう役に立たなくなりましたが(えっ)、それでもやるしかない。ニック・ダリーシアのままで生きてはおれない。サンドラと折半する羽目になった残りの分け前で、やるしかない。
『電子の要塞』の途中、フランク・エルキンズがラリー・ロイドに「良い形成外科医を紹介してやる」と言っているので、その伝手を頼ろう。というか、ラリーみたいなIT専門の人材は、今後を考えるとものすごく必要だ思うんですが。ドートマンダー・シリーズのウォーリー・ナーのように(出番は2作しかないが)
そう言えばラリーは、パーカーの家にまで入って、爆弾除去までしましたっけね……(※振り返れば、なんすか、この有能)。
『電子の要塞』、思うだに冒頭から、家庭派泥棒コンビ・エルキンズとウィスによる「助けて、パーカー! 俺たち面倒事になって、暴力要員がほしいの!」だったよな……。第1作目からのつき合いだから、パーカーも、たぶん自分の役目を察しつつ、そこには触れないで出かけてあげるのですが。で、後半は「パ、パーカー……ラリーをこ、殺す? 殺しちゃう? えっ、えっ……、殺さないよね……?」感が漂う。
この二人とは、パーカー軍団の中でも非暴力派で、『殺戮の月』でも戦闘現場からは離れています。だれも殴っていないし、撃ってもいない。
ただ、それでいてなお『電子の要塞』では、最後まで流石の有能ぶりを見せます。伊達に最古参はやっていない。
なんの話でしたか。
パーカーですが、わりと行く先々で仕事でも、突発的トラブルでも、プロ、アマチュア、一般人でも、必要とあれば殴る人です。「その手は人を殴るためにある」と筆者によって、初期から書かれています。ですが、「パーカー軍団クラス」の仲間に手を上げたことは、一度もない。その必要がなかったからでしょうが、ニックをさえ、殴った描写はない。秒殺を心掛けていたらしく(おい)、一切物理的に痛めつけてはいない。ニックが勝手にガラス窓に突っ込んで怪我はしたが(悲鳴を上げるほど怖がらせたパーカーが悪いか)。捨て置かれた亡骸はだいぶ悲惨だが。
……亡骸の状態が出されるって、実はこれもパーカー小説では異例か。死んだら、はい、おしまい、だったものな。大半が。
あの地下の描写がまたむごいんだよな……
けど結局本当に、ニックがどうやって殺されたのか、一切書いていないのです。撃たれたとも首を折られたとも、なんとも。読者への手心なのか、実は本当に殺されていないのか。
ちなみにパーカーからニックへの批判、文句、愚痴の類も、地の文でさえ見当たりません。不気味なくらいに。通常、だいたい「軍団クラス」でも、仲間の長所と短所、癖や軽く生活背景までさらりと述べるのに。『ターゲット』ではだいぶワイツアーに毒ついてましたし、グロフィールドに対しては2作も面と向かって「まぬけ」etc.
パーカーは、銃なし同士であれば、5対1であろうが肉弾戦で勝ってしまうバケモノで、未だかつて、まともに勝負を挑んで勝てた人はいません。
それを思えばクレアが盛大にフラグを立てた後の『地獄の分け前』が、いかに大ピンチだったかがわかりますな。あれはまず確実に死んでいた。プロの殺し屋に背中から撃たれ、心臓一発即死でもおかしくなかった。それを、エバーグレイス内の池に捨てられたのですから。エバーグレイスがいかにヤバい場所かは、ドラマ『CSI:マイアミ』あたりを見ればよくわかるのですが(えっ)、あの場に変人私設軍がいなければ、あそこでジ・エンドでした……。
その次の次の『Breakout』では、なんと拘置所に入れられ、第1作目『人狩り』以来初めて、ロナルド・キャスパーと一致させられてしまう(※看守を殺して指名手配。当時のカリフォルニア州では極刑もあり得る)。今思えば、カムバック後もわりと容赦なくピンチを経験してきたパーカー。この時は、エド・マッキーが、頼んでもいないのに助けに来てくれるという、アンディー・ケルプ並みの厚意を見せてくれます。パーカーの仲間史上初。ハンディでさえ、最初は呼び出したから来てくれたのに。その後は死にかけるまでどこまでもつき合ってくれるのですが。
エドとケルプは、なんとなく似てますかね。エドのほうが荒っぽく挑戦的で、ケルプのほうが優しくしなやかな感じがしますが。実のところケルプのほうが、初登場が2年ほど早いんですよねぇ。
ところであと、ブレンダが私の中で、日本人か日系人では?という疑惑があるのですが、どうでしょう? 理由は、エドとの愛の営み中に枕にしゃべる、謎の日本語。「有無を言わせぬ美人」と書かれるブレンダが、日本人かも?
もしも悪党パーカー・シリーズの次話が書かれていたら……
ドートマンダー・シリーズも最終回にふさわしい描写もございましたし、パーカーものも『Dirty~』でファイナル・グッバイ相棒をやって、その謎を残したまま終わるのも、ふさわしかったのかもしれません。永遠となりましたもの。私やその他大勢の読者にとって。
でも、もしも次話があったなら、あったなら……
パーカー! 運転屋だけは固定しようね! 思えば、マルにアールにビーグラーどころじゃないよ。グロフィールドを巻き添えに事故ったラウフマンもだし、『ターゲット』のハウエルだって、運転していての事故だったじゃん! 『Breakout』で披露済み、エドの殺人的運転で我慢しよう! でなくば、マイクかフィリーをまずなにより第一に確保しよう。でなければ、せっかく作った新しい身分証&免許証で、パーカー自らが運転しよう。
やっぱり『Dirty Money』、いくら良い方向に妄想しようと、一連のニックのために読むのが辛いところがあるんですが、それでもあえての笑いどころは、「ニック・ザ・デスパレートに穏やかな顔を向けている気でいるパーカー」と、「優しい宿のおかみさんにまで、即妻をこき使う冷酷夫のレッテルを貼られてしまうパーカー」だと思うんですが、どうでしょう?(おい)
グロフィールドの顔でも借りてくるしかないよ!
こういうわけで、いったん一連の【検証】ないし【告発】を終わりとします。
またなんか思い立ったら書きます。
難しいとは思いますが、悪党パーカー・シリーズを読んだ方からのご意見もお聞きしたいです。
ありがとうございました。
◆◆◆◆◆
(2008年10月15日水曜日……あたり)
スタン「ハロー! ニックー! いる~~?」
ストラトン「おい、ニック! ちょっと見ないあいだに東海岸一悪名とどろかせてるな」
スタン「バーボンを持ってきたぞ。もちろん氷も! 有名人は氷を入れるもんだって、昔フィリーが教えてくれたんだ。なぁ、覚えてるかい?」
フィリー「このレベルの『有名』なら、カナダから氷山でも引いてくる必要がありそうだな」
ストラトン「それはそうと、おい、あの盗聴野郎が見つかったって噂を聞いたぞ! ということで、俺もおいおい、元のヤマを動かしたいんだが。で、パーカーと連絡をつけるのに苦労したぞ。え? ネルソン? ああ、あれは悪かった。悪かったって!」
スタン「でもパーカーは、俺たちのヤマに加わらないって。もういい加減、クレアとバカンスに行くんだって。あ、うん、もう俺たちのヤマだから。俺もフィリーも、パーカーの直推薦で代わりに入った」
ストラトン「あと一人欲しいんだがな。スタン、ハンディ・マッケイは呼べないのか?」
スタン「今、だいぶしつこく誘ってるところだよ。思うに、パーカーがほかの連中とばっかり仲良くしてるからって、拗ねてんじゃないかな……」
フィリー「それで『エド・マッキー不死身伝説』を終わらせるのは俺だとか、息巻いていたとかいないとか……。え? 今日、またパーカーがエドに電話したのか? 黙っとけよ! ……いや、あえてエサに使うか」
スタン「それ、いいな! せっかくパーカーの家を見る機会なんだからとも教えないと。まぁ、たぶん、ハンディは先に自分の食堂に遊びにきてほしかったんだろうなぁ」
ストラトン「よくわからんが、相棒関係ってのはこじれると大変だな。あ、フレッチャーとモット? 来る予定だが、なぜか遅刻だ」
スタン「俺とフィリーがパーカーの話をしたら、なんか突然体調不良とか言い出して」
フィリー「パーカーは下りたと知らせとけ」
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(大勢に影響はない、ないんだ……)
(End,)