A.Banana.S

古代ローマ、NACSさん、ドートマンダーにパーカー、西武ライオンズ、FEプレイ日記(似非)・・・好きなことをぽつぽつと。

悪党パーカーシリーズ『掠奪軍団』を再読。

 

 先月の休業期間に、お手頃価格で見つけましたので、購入しました。

 

以下、12、3年前くらいに初読みしたときの感想も入れ込みながら、書きます。

 

いかなるネタバレも避けたい方は、閲覧注意願います。

 

 

私はこの作品を、次作となるかの『殺戮の月』を読んだあとに初読みしました。昔のノートには、「最後の未読・パーカーシリーズ」と書いてあります。(※注 翻訳作品では)

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 ドートマンダーシリーズもそうなのですが、クライマックスとなる『最高の悪運』の前の作品『骨まで盗んで』では、プレクライマックスとばかりに仲間キャラがたくさん登場します。この『掠奪軍団』もしかり。ファンにはおなじみ、エド・マッキーとブレンダ(不死身伝説の始まり)、ルー・スターンバーグ(『ターゲット』)、若手スタン・ディヴァーズくん、フレッド・デュカッセ(『殺戮の月』)、トミー・カーペンターとノエル・ブラセル(ノエルのみ『ターゲット』)、そして前半で登場する錠前屋ジョージ・ウォルハイム、未翻訳作『Breakout』にほぼ名前だけですが出てきております! いやこの方、なかなかやりますよ。私のノートの『Breakout』や「例のマサチューセッツ三部作」ページには「ジョージ・ウォルハイム作戦」なる言葉が散見されます…(たぶん、このくらいうまくやれよ、某運転手、と言いたかったんだと思う…)。

 

さてさて、少々若き日の自分の筆に任せます。

 

あらすじ。『怒りの追跡』で、トドメは刺さずとも二度と歩けないくらいにしたはずの「宿敵」ジョージ・アールが、なぜかピンピン動きまわり、そのせいでパーカーの仕事がダメになる。パーカーの追跡に対し、驚くべきアールの逃げ足! 本当にアールか!? パーカーはアールを探しつつ、次々と仕事を手掛けるが、今回は――。

 

……さっそくネタバレ失礼。でも『怒りの~』のあらすじですでに「宿敵」と書かれているあたり、そこで死なないことはわかりますね。
十何年経った今も、「あれは本当にアールだったのか?」疑惑は、私の中にくすぶっております。(えっ)
そして『怒りの追跡』は、現在最後の翻訳作である『電子の要塞』にも絡んできます。あの人物たちのまさかのその後に驚愕せずにはいられない……。
あの理解しがたい人間関係の形が、妙に現実的というのか、あのあたりの描写が個人的にはすごく引き込まれるんですけどね…。


前半、パーカーの相棒的役割を務めるのは、不運なるプロ、フレッド・デュカッセさん。ああ、なんだかだんだん好きになってきたよ…。冒頭でいきなりとばっちりで殴られて頭血だらけになったり、パーカーと組んだ仕事が次から次へとおじゃんになったり……金が要り用で困ってるというのに。にもかかわらず、自分の仕事が見つかると、パーカーにはエド・マッキーとの仕事をわざわざ紹介してくれる。なんて親切な人や…! 聖人ですか!? そしてかの『殺戮~』へ――。


だいたいアールにしたって、わざわざパーカーに復讐したくて来たわけではなかった。少なくとも最初は。出かけた先にたまたまパーカーがいらっしゃっただけ。…なのに冒頭からさっそくの巻き添え負傷で文句ひとつ言わないデュカッセ、良い人オブ良い人(うれしくない)
デュカッセは、かなり気さくで頭の良い人に描かれている。パーカーといる分にはわりと陽性気質。でも次の『殺戮~』では……

以下、私的勝手な胸中要約:
「えっ、パーカーの仕事? 嫌な予感しかしねぇんだけど! …いや、パーカーには恨みもなんもないし、有能だと思ってるけど、なんか悪い運がついてるっていうのか。あれからまた仕事しくじって、また次の仕事もしくじったってマジか…。大丈夫かよ…。行くのやめたほうがいいのかな? でも金もないし……って俺もあいつのことは言えない? ところでさっきからこっちをジロジロみてくる、あの金髪の若造とハゲの大男なに?(※ディヴァーズくんとワイツアーです)」

作中プライベートをほとんど明かされず、パーカーがさして人物評もせずあっさり有能判定を下すあたり、どっかの某運転手と同じ。気をつけよう。(なにが…)


そして、遅ればせながら初登場となるエド・マッキー。全然初登場の気がしない貫禄のマッキーとブレンダ。この『掠奪軍団』からの『殺戮の月』にひと言の弁明もなかった件の弁明は、未翻訳作『Breakout』で30年の時を経て明かされます。そのころにはすっかりカムバック後パーカーの相棒の地位を盤石にした感のあるエド。……総合的に、たぶんいちばん良くないか、相棒として、と今になって思わずにはいられない。


こちら、パーカーの相棒(私的勝手に)初代~四代目の記憶。

 記事としては↓が先でした。

anridd-abananas.hateblo.jp

 

さらに加わるは『標的はイーグル』で初登場後、一人前のプロに成長したスタン・ディヴァーズくん! パーカーとは4年ぶりの再会で、きちんと28歳になっている。すっかり立派な追剥ぎになって……(おいおい) 十歳以上年上であろうエドより冷静で落ち着いてさえ見える。

 

またここが初登場で、『ターゲット』でカムバックを果たしている、ロンドン在住ルー・スターンバーグ。気難しげだが、良い味の演技をする頼もしい仲間。本領発揮はやはり『ターゲット』のほうかもしれないが、キャラはブレない。

 

そしてなんとディヴァーズくんより若い、ヒッピーのトミー・カーペンター、24歳(見た目は16歳、精神状態は80歳らしい)。恋人はこちらも『ターゲット』で活躍の美女、ノエル・ブラセル、21歳。カーペンターはこの後、裏の仕事に怖気づいて引退し、ノエルは独立したプロとして生きることになる。
パーカーは前の仕事で、仲間の女房に仕事を滅茶苦茶にされたため、女なんかと組むもんじゃない、とまで考えているが、ブレンダやノエルにはすぐに高評価。「その百倍マシな女」と。
一読した段階で、ノエルは「トミーに尽くしすぎでは?」というくらいの寡黙な働き者。パーカー視点でも「真面目な女でユーモアのかけらもない」と評されていた。けれども時が流れて『ターゲット』では、かなり積極的で明るい性格になり、男性陣に大人気。でも、そこまでやるかというレベルの演技は変わらず。

 

ストーリーの後半は、エド・マッキーの仕事である絵画強奪に取りかかる。完璧な計画と進行で、全員の息が合う。しかしパーカーが、金のない依頼人にさらにプレッシャーをかけたのがきっかけで、まさかの事態に――!?
エドはその条件で仕事を引き受けたのに、ご不満だったらしいパーカー。並外れたビジネス交渉力を見せつける(別名:無理強いとごり押し)。
カムバック後は、わりと双方の利益的な観点を取り入れ、演技力にも頼った気がしますが。
遠い将来、某運転手にも「お前は苛立っている。だからここは俺のほうが向いている」と言ってと交渉に出かけるパーカー。相手は女性で、彼らを「良い警官と悪い警官」と評した人。エドにしろ某運転手にしろ、本音は「俺のほうが(見た目が)怖い(ので舐められない)」ということだったんでしょう。
怖すぎた結果、あとになって無理が出てくるという場合も多々あるような気がしないでもないけども、果たして今回は――?

 

その一方、パーカーはアールについての情報も集め、決着をつけんとする。

 

ところで、パーカーの宿敵ランキングなるものを作ったら、果たしてだれがナンバーワンになるのでしょう?
必ずしも作品をまたいでいなくてもいい気がする。
ドートマンダーだったら、マックス・フェアバンクス、マーロニー警視正、アンディー・ケルプの三強かな。(おや…?)
パーカーの場合は、アールは入れるとしても、やはりマル・レズニックが強い。それからジョージ・リス、カレジアン、アウトフィットのボス・ブロンソン、アル・ロジーニ……
ほかにも初期からたびたび出ていたカーンズ、『地獄の分け前』の謎の黒幕ザフ・マスターズなど、ぜひとも対決してほしかった宿敵候補もいる。
ボス陣は、ビジネスとして交渉や妥協の余地があるから、案外宿敵感がない場合もあるかな。一匹狼陣のほうが、落とし前をつけるために、どっちかが死ぬまで戦わなければいけないから。

 

ところで、この『掠奪軍団』では、ドートマンダーシリーズの『Drowned Hopes』と同じく、作家ジョー・ゴアスとのコラボレーションがあり、かの人が作り出した主人公DKA探偵事務所のダニエル・カーニーが、パーカーと鉢合わせするシーンがある。カーニー探偵、『人狩り』時代にちょっと会っただけなのに、なぜか整形後のパーカーを見破る。

 


以下、ますますのネタバレ注意!

 

パーカーさん、またしても運転手の相棒を――(以下略)
まあ、こちらは積極的な殺意でもってお声かけしたから……たまたま空き家に入ったら二度寝中のパーカーがいましたなんて大事故とは訳が違――(以下略)
でもやっぱり相手にならな――(以下略)

 

パーカーの相棒特有の災難、初登場だろうがなんだろうが、前倒しとばかりにさっそく降りかかる。エドに。
……いや、今になって思えば、ここで退場させてしまうには惜しい。後々オイシイ。
有能だが抜けのないほどのパーフェクト有能ではなく、ハンディほど落ち着いておらず、グロフィールドほど浮ついておらず、もれなくブレンダがついてくるので、ストーリーに幅ができるというのか。適度な緊張感と安定感、どちらも添えてくれるというのか。パーカーシリーズの登場人物の中では、アンディー・ケルプに最も近い人だと思う。ちなみにケルプさんのほうが、エドより2年ほど先輩。

 

以下、昔の自分の筆。

パーカーとマッキーを狙う銃弾。パーカーは逃げのびて反撃するが、マッキーは体を貫かれて倒れ、敵によって絶命が確認される。パーカーはマッキーの死体を残して、燃えさかる建物を脱出。ああ、マッキー!! ……ってちょっと待って!!
じゃあ次作『殺戮の月』のエド・マッキーはなに!?
20年後の『エンジェル』のマッキーはなんだというのか??
ダン・ワイツアー死亡説のデマとはわけが違う。死んだ場面が描かれていて、第三者に確認までされているのだ。それにもかかわらず、次作『殺戮の月』ではひと言の弁明もなく、相変わらずブレンダとイチャイチャ仲良く、仕事でも大活躍。20年後には、パーカーの仲間でもいの一番にカムバックを果たし、裏切りの相棒に狙われるも、パーカーやブレンダの機転で命拾い。次の『ターゲット』でも「みんなが知っている男」として名前が出てきて、さらに『地獄の分け前』でも元気にパーカーの電話に応対。
(追加)さらにそのうえ『Breakout』では、監獄までわざわざパーカーを助けに来て、挙句の果てに最終作『Dirty Money』では、例の「ファイナルグッバイ・相棒」の悲劇を尻目に“An old partner”としてやっぱり元気に電話に応対。
40歳前後から年を取る気配もなく、いつまでも仲良しのブレンダは、20代半ばの「有無を言わせぬ美人」……なんて幸せな人なの…!
この方と『掠奪軍団』冒頭の方と、『殺戮の月』冒頭と『Dirty Money』冒頭の方を比べた場合、涙せずにはいられない…。
この話でもエドは、黙って終わるのを待つパーカーの前でブレンダとじゃれ合い、ベタ惚れの様子。仲間たちをブレンダと一緒にプールで泳ぎながら待っていたり……どこまでも幸福で不☆死☆身☆

……おそらく、なんらかの理由で、カムバック後、スターク氏はハンディを仲介役としてでもなんでも登場させにくいと判断した。それでエドに白羽の矢が立った。

……だからってさっそく『殺戮の月』で元気溌剌、前作のラストなんて知らないぜクライマックス、とはどうだったんでしょう。楽しいけれども。
死んだのはトミー・カーペンターだった説も個人的にくすぶる……。


いずれにせよ、案外死んだとされる、この作品冒頭のあのナイス・ガイなども、もしかしたら復活やカムバックがあったかもしれない。

 

 

……なにしろあの某運転手でさえ――(以下しつこいので略)

 

 

(また次の記事で軽めにぼやきます。ちょうど一年なので)

 

 

 

 

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当方の駄文――ファンフィクションはこちら。
ドートマンダー・シリーズ:
『エメラルド始末記』『ファースト・ネーム』『ココナッツと蜘蛛』『エキストラとスタントマン』
悪党パーカー・シリーズ:
『哀歌』『最終作Dirty Moneyについての考察』『アフターワールド』『ラスト・デイズ』『ダーティー・ゴールド』『ライン』
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