A.Banana.S

古代ローマ、NACSさん、ドートマンダーにパーカー、西武ライオンズ、FEプレイ日記(似非)・・・好きなことをぽつぽつと。

悪党パーカーの相棒争奪戦!!(その1)

※以下、「悪党パーカーシリーズ」について、たぶん十数年前に書いた殴り書きを加筆・修正したものです。もうほとんど絶版とはいえ、激しくネタバレしていますので、くれぐれも閲覧注意願います。

 

……今考えれば、そもそも争奪したくなくないですか?…というセルフツッコミを入れずにはいられない。

なれるものなら、絶対にドートマンダーの相棒ほうがいいって……。

 

 

【パーカーの相棒争奪戦】!!

 

 パーカーはほぼ完全なる一匹狼である。パーカーの恐るべき力は、独りでいるときこそ最大限に発揮される。彼が独りで考え、行動し、戦う時が最も強い姿である。第1作『人狩り』を筆頭に、⑦『汚れた七人』⑭『殺人遊園地』、カムバック後では⑰『エンジェル』⑲『地獄の分け前』など、パーカーが独りで動く場面の多い作品は、どれも体が静かに震えるほどの興奮を感じられる。まさにハズレなし。それでこそハードボイルドの主人公、冷酷非情の完全犯罪者なのだろう。単独行動でこそのパーカーである。それはわかっている。わかっているのだが、どうしても考えてみたくなる。

 

 パーカーの相棒に最もふさわしいのはだれだろう? 

 

 以下、考えていきたい。果たしてパーカーの最高のパートナーとは……!?

 

 

<本命>ハンディ・マッケイVSアラン・グロフィールド

 

 相棒歴は、二人とも4作。ハンディは初期3作連続と⑯『殺戮の月』、またパーカーの電話の相手としても時々登場している。

 グロフィールドは⑤『襲撃』から⑯『殺戮~』まで断続的に登場する。

 ハンディ視点の語りはないようだが、グロフィールド視点の語りは⑧『カジノ島壊滅作戦』や⑯『殺戮~』でかなり見られる。

 ハンディは登場4作中1作で、捕らえられ殴られ撃たれるという災難が集中し、引退を決意するが、やがてまた復帰する。グロフィールドもまた車の事故に遭い、2回も撃たれ、うち1回は意識不明というひどい御難が続く。

 二人とも、シリーズ23年越しの再開(※以降、カムバックと呼ぶ)に登場しないのは、さすがにジンクスを感じたからだろうか…。

 

 

 パーカーはハンディのことを「俺の知るかぎり最高の金庫破り」と評している。ハンディの引退が決まるまでは、最も信頼できる相棒であったことは間違いないだろう。思いつくかぎり、パーカーが仲間のうちで笑っている顔を見せたのは、ハンディに対してだけだ。そして彼の引退後も連絡は取り続け、ジョー・シアーが死亡した後、パーカーはハンディを仕事の仲介人にしている。ハンディ復帰後も、自分の金を任せるなど、信頼はまったく揺らいでいないことがわかる。一流の金庫破りというだけでなく、ハンディはパーカーと肩を並べて荒仕事もこなす(とある作品では、ハンディこそ殺戮大賞だったでしょう…)。

 

 ハンディはパーカーと違って人付き合いが良く、裏社会での顔も広いようだ。しかしパーカーの相棒であるという意識は、他の仲間たちに比べて強い。引退中、グロフィールドへの「このごろはあまり他の連中と連絡を取っていないんだ。パーカーは別だが」という言葉、「カムバックするならパーカーの仕事と決めていたんだ」「俺はあんたの仕事を断ったことはないぜ」などの台詞に、パーカーへの親しみが込められている。「あんたらしくもない」という台詞も、パーカーをよく知っている自負があるからこそ出てくる。言葉少なく無愛想極まるパーカーに助け船を出すのも、ハンディの役目である。

 

 パーカーのハンディに対する信頼は固い。しかしハンディの友情が表に出てくると、パーカーは警戒する。プロであることの危険信号として、見逃さない。ハンディがジョー・シアーと同じ事態になったら、パーカーは必ず始末をつけに行くだろう。仲間に関して、パーカーは友情からくる協力やサービスを受けるに極めて慎重で、必ずフェアな利益を与えることで一線を引く。捕らわれのハンディを探しに行くパーカーは「ハンディの生死はどうでもいい」と表現している。しかしハンディが重傷を負うと、「相棒を死なせるな」と関係者に言い、医者と療養所の手配まで要請するなど、できる限りのことをする。必要事項を伝えるために、見舞いにすら行く。

 パーカーはあくまでプロとして、仕事の一部として、ハンディを助けたのだろう。ハンディもそれをよくわかっているから、わざわざ礼は言わない。

 パーカーの内面にプロ意識以外の感情があるかは想像をたくましくするしかない。彼のあのつれなく親愛を一切感じさせない性格から、ハンディはどうやって友情にも似た相棒としての親しみを強めていったのか、パーカーになにを見たのか、興味深いところだ。

 

 

 ハンディはパーカーよりは人に好かれる性格で、(パーカーのそばにいると大抵の人が)愛想よく、社交的で、親しみやすい。だが基本的には冷静沈着で、必要以上に話さない。固い信頼関係にあるパーカーとは、無駄がなく、息の合った行動をするのが常だ。家庭派泥棒コンビのウィス&エルキンズのように、お互いをよく理解しているので、しゃべる必要がないという関係でもあるだろう。対して、明らかに対照的な性格が際立っているのがグロフィールドである。

 

 

 パーカーはグロフィールドのことを「ふざけすぎるところがあるが、けじめは心得ている」と評している。あの「お持ち帰り事件」のときは、そのけじめのなんたるかを疑ったことだろうが、その後もたびたび一緒に仕事をしているので、基本的には信頼していることがわかる。

 二人でいるときは、グロフィールドがふざけてもパーカーは無視、仕事の最中に女性と寝ようが無視しているが、他の仲間がいるところでは、自ら進んでツッコミ役を引き受けているように見える。⑤『襲撃』では、短いツッコミが5回もあり、ついにはグロフィールドがたわ言を口にするのを待ち構えるようになる。チームのまとめ役としての責任感なのか、それにしてもパーカーにしては面白い役どころをしている。

 パーカーは他にもグロフィールドについて「馬鹿」「間抜け」「気違い」「世話の焼ける」「衝動的だから5年以内に刑務所行き」など言いたい放題である。グロフィールドが警察に捕まったと聞けば「やつにはいい経験だ」、カレジアンという男を見て「グロフィールドを大人しくした感じ」と思う。相棒をどう見なしているのかよくわかるが、なんだかんだ言いながら4作も共に仕事をしている。

 

G「なんと俺は最期の瞬間まであんたのことを考えていたんだ」

P「横になってろ、まぬけ」

 

 グロフィールドはパーカーの(特に女性関係の)厳しさについて「修行僧めいた」と表し、見習うつもりはさらさらないながら、面白がっているようである。パーカーからの結婚祝いの言葉には大笑い。たとえジョークが無視されても気にしないし、返答を期待してもいない。ハンディのように最も親しい相棒であることをアピールするような言動もないが、信頼感は負けず劣らず強く、パーカーの不死身のような体力と精神力に尊敬の念を抱いているのは確かだろう。あるときは砂漠で行き倒れていた彼を救出し、警察をまき、報酬まで確保したパーカーに、「あんたは奇跡みたいな男だな」との台詞が出る。相棒へのアフターケアが手厚いパーカーに、グロフィールドは感謝を口にするが、それに対するパーカーの返答は、プロとしてあまりに純粋で、かえって胸を打たれる心地がする。

 

 パーカーのグロフィールドに対する評価は的確で、衝動的なグロフィールドは自らの主演作品で、もめ事に首を突っ込む、誘拐される、お人好しすぎて災難を呼ぶ等々、危険な綱渡りをくり返す。それであろうことか巻末解説に「ずっこけグロフィールド」と書かれる(それも二巻連続)。いいのか、パーカーシリーズの出演者が…!

 パーカーとの共演でも災難続きで、一度どころか何度もパーカーに救われている。ご機嫌でシャワーを浴びている最中に背後から敵が――なんてシチュエーションは、ルパン三世なら峰不二子の役どころだろうに……。男女平等……いや、グロフィールドがハンサムでセクシーだからこうなるのか……!?

 

 グロフィールドが死んだと思ったとき、パーカーはただひと言だけ感想を述べる。しかしその命の取引きが、かつてないほどの恐るべき怒りをパーカーにもたらす。「グロフィールドの救出」が、「金の奪還」と同じく、パーカーの勝利の絶対条件とされたからだろう。非戦闘員含め、パーカーはグロフィールドを傷つけた者を一人も許さなかった。他の仲間たちがいささかあっけに取られるほどの、真面目な執念。

 被救出者がグロフィールドでなくても、パーカーは同じように怒りを覚えたかもしれない。だがパーカーがあそこまで大がかりな作戦の末に救出する相手は、グロフィールドでなくてはならなかったのも事実だろう。

 

 

 パーカーの相棒本命二人――ハンディは何事もそつなくこなす、理解しあった相棒、グロフィールドは対照的な性格で、お互いに引き立て合う相棒、というところだろう。

 

 ドートマンダーとケルプは、やはり後者のタイプのコンビか。これにグリーンウッドを足して迎えに来られるドートマンダーの心情たるや察してあまりあるというか……。

 

 ちなみにパーカーはカムバックしてからは、ほとんどの仲間を「エド」「ダン」「マイク」「ニック」とファーストネームで呼んでいるが、ハンディのことは初期からずっとファーストネーム呼びである。グロフィールドをファーストネームで呼ぶ日は……(思わず吹き出してしまいそうだが)……ついに来なかった……。

 

 本命の二人なのだが、どちらも23年後のカムバックを果たしていない。グロフィールドはわからなくもないが、ハンディが一切出てこなかったのは意外だった。スターク氏は、ハンディとのコンビは初期ですでにやっているから、パーカーとは他の仲間を組ませて、新しいものを作ろうとしていたのかもしれない。ハンディの再登場は、大切に取っておかれていたのかもしれない。もちろん、グロフィールドも。

 グロフィールドは、最後の流れからスタン・ディーヴァズくんと一緒のカムバックだったりして。

 ……完全にドートマンダーを引きずり込みきたグリーンウッドとケルプそのもので、パーカーは少し頭が痛くなるか?

 

 

画像は我が本棚になぜか全巻そろっているアラン・グロちゃんシリーズ。……1巻だけでも読めば、なぜグロちゃんと呼んでしまうかわかっていただけると思う……。

注目すべきは手前第1作と奥の第4作の、帯文面の差……。

いや、そもそも強盗「紳士」だったっけか……?

 

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美女を救けて →×

美女に救けられて →〇

 

個人的おすすめは①と③! グロちゃん最高!!

 

 

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当方の駄文――ファンフィクションはこちら。
ドートマンダー・シリーズ:
『エメラルド始末記』『ファースト・ネーム』『ココナッツと蜘蛛』『エキストラとスタントマン』
悪党パーカー・シリーズ:
『哀歌』『最終作Dirty Moneyについての考察』『アフターワールド』『ラスト・デイズ』『ダーティー・ゴールド』『ライン』
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