A.Banana.S

古代ローマ、NACSさん、ドートマンダーにパーカー、西武ライオンズ・・・好きなことをぽつぽつと。

悪党パーカーの相棒争奪戦!!(その2)

※前記事の続きです。日本では絶版の作品(あるいは未翻訳)も多いのですが、ネタバレになる記述がありますので、閲覧注意願います。

 

 

<対抗>①エド・マッキー

 

 カムバック以後、他の面々に比べて明らかに出番が多いエド。プロとしてのパーカーからの信頼も確か。性格も、一時「無口で無愛想」と書かれたこともあったが、見ているかぎり陽気で冗談も言うので、パーカーとの対照も良い(……その身に色々あったので、頭を打つなどして性格が変わってしまったのかもしれない…)。

 パーカーのこともわかっていて息も合い、プロとしての考え方も通じている。

 なにより彼は、パーカーの相棒特有の災難も経験済み。それも一度ならず「死んだか…?」「どうなったんだ…?」という事態になる。ところがわりとすぐ次の作品あたりで、何事もなかったかのように元気に再登場したり、パーカーと電話したりしている。エド・フェニックス・マッキーじゃないかと思うくらいの不死身属性。なんなら最終作『Dirty Money』ですら健在である。不死身ではない男たちがあんなことやこんなことになっているのに……。

 そのうえ彼にはもれなく最高のパートナー・ブレンダがついてくる。二人の仲睦まじぶりはパーカーもよく目にするところだ。少々のんきで危なっかしいエドを、ブレンダという知恵袋が上手くフォローしている。エドの命があるのはまったくブレンダのおかげ。パーカーもブレンダとセットで考えている様子である。

 ある意味、自分にもクレアがいるので、まともな女がいる相棒のほうが適度な距離感でつき合いやすいのかもしれない。

 パーカーとの仕事回数は4回。軽い出番だけならさらに増える。カムバック以降が特に注目。

 あるとき、仕事後のごたごたで分かれてから、エドはパーカーを手伝いに戻ることをしぶるのだが、ブレンダに説得されて重い腰を上げる。

 また別のときは、パーカーがこともあろうか警察に捕まったとき、なんとだれに頼まれたわけでもなく、また一緒の仕事をしていたわけでもないのに、わざわざ面会に行って脱出の協力を申し出る。以前、命を助けられたからと(その一件が、一つ前の「あるとき」なんだけど…)。なんの見返りもなく、自発的にパーカーを助けに行った、ほとんど唯一の仲間。パーカーに「感謝する」とまで言わしめたのも、きっと仲間史上初。以前はグロフィールドに関しても、「あいつはいいやつだ。黙って見過ごすわけにいかん」という発言もしており、人情家の一面も確かにある。

 とはいえパーカーは、「あるとき」別にエドに恩を着せたわけではなく、一緒に仕事をするならば当たり前のことをしたまでで、エドを助けることは自分の身を守ることでもあったからという理由であったにすぎないのだが。

 しかしそこはやはりエド。パーカーを脱出させたらすぐ別の仕事に取りかかろうと考えていた。殺人的運転で逃走をやり遂げた後、すでに他のメンバーもそろった状態で、パーカーに「お前は気に入らないだろうと思っていたよ。でも悪い話じゃないんだ。問題なしにやれるぜ」

 パーカーとしては、とっとと家に帰りたい。

 エド・マッキーがアンディー・ケルプに見える瞬間である。

 この後も結構な事態になるが、エドはやはりたぐいまれな幸運の持ち主だろう。

 カムバック後は特に、最有力の相棒であることは間違いない。

 

 

<対抗>②ダン・ワイツアー

 

 別名ジャック・アームストロングとして、リングの上で戦うこともあるダン。頭はきれいに禿げていて、なかなか整った顔立ちという、力自慢の大男。パーカーとの仕事回数は3回で、それぞれで活躍の場も多い。ディーヴァズくんがドン引きするほどの健康マニアだが、タフで、荒仕事も冷静にこなす。パーカーとしても、肩を並べて危険な場所へ乗り込んでいける彼は頼もしいに違いない。

 パーカーに言わせれば、ワイツアーには大男特有の弱い者に対する優しさ、という弱点がある。(ドートマンダーは一度もタイニーをそんなふうに考えたことがない…)

 パーカーの相棒特有の災難はなかったように見えるが、一時死亡説が、他ならぬパーカーの口から流れる。読者の知らないところでなにかあったのかもしれない。

 ワイツアーがあるとき見た驚きの光景は「顔を赤らめるパーカー」(演技)。

 グロフィールドによる「お持ち帰り事件」のときは、パーカーと二人して呆れ返る。グロフィールドに「おまえを殺してやりたいぜ」、それからパーカーから「どう思う?」と訊かれ、「あいつは馬鹿だ」「たしかにそうさ。だが俺が訊いているのは――」それほど陽性の性格ではないので、パーカーが冷静な意見を求める相手にもなっている。

 今後もいずれパーカーから声がかかるのは確かだろう。

 しかしワイツアーは健康狂いだ。仕事と健康なら健康を優先させる傾向があるだろう。それを損なう危険な仕事を必要以上にやるとは考え難い。一方パーカーは、生きることが仕事という面がある。

 パーカーも大男だが、ワイツアーはさらに大男だろう。二人で並べば、どんな相手もすくみ上がらせることができそうだ。しかし相棒のバランスとしては、パーカーより小柄か細身の人のほうがいいのかもしれない。

 しかしだからこそ、ある意味で、仲間としては安泰な位置にいるとも言える。

 

 

<対抗>③ニック・ダリーシア

 

 パーカーとの仕事は2回だけだが、終盤作『Nobody Runs Forever』で最初から最後までパーカーと仕事をし、相棒候補に急浮上した。趣味の釣り仲間経由の仕事持ちかけ、パーカーの自宅に直接電話もしている。

 おしゃべりではないが、パーカーに比べれば(だれでも)陽気で愛想がよく、外交役を引き受ける。専門である運転はもちろん、銃も扱い、仕事の諸々をてきぱきと熱心に進める。冷静で頭の回転も速く、リーダーとしてのパーカーを立てるところもあるので、かなり有望である。……ためにニックが心配である。パーカーの世界では、物分りの良い有能な人は、かえって身の危険がある。ちょっとした欠点があったりトラブルの匂いを漂わせるたりする人のほうが、案外安全。

 そこで続く『Ask The Parrot』『Dirty Money』の冒頭部を見ると…………。

 

Oh…

 

 初登場の⑯『殺戮~』では、トム・ハーリーの相棒を成り行きで務める感じになり、短気でかっかしがちなハーリーに比べて終始クール。結局最後までハーリーにつき合う。

 『Nobody~』では、ドートマンダーならぼやきが止まらないだろうちょっとしたトラブルが頻発する中、ひと言、

「あんたと俺と、装甲車と、サツと、警備員だけだったら、いいんだがな」

「そのとおりだ」

 

 熱心な下見中、三人目の仲間が必要かと考えていたところへ、とある元仲間が姿を見せる。思わず笑顔で、

「お前こそ、俺が探していた男だ!」

「そうは思わないな、ニック」(拳銃を見せ)

(……俺の馬鹿……)

 

 パーカーといると、自分の内なる陽気な社交性が開花してしまうのかもしれない。

 

 ついには三人目に「お供」がついていると知り、「ここに来るまで数百マイルもあったのに、なんで気づかなかったんだ?」と非難せずにはいられなくなり、胸中パーカーと俺と、装甲車と、サツと、警備員だけの世界に行きたいと思いながらも、仕事を決行。フレッド・デュカスさんばりの狂人芝居で装甲車を乗っ取る。(……後々を考慮すると、やめよう、これ)

 

 彼の相棒としての結末と、その身が無事で終わるかどうか見届けるためにも、翻訳しませんか……?

 

『殺戮~』参加メンバーの中では、パーカーシリーズ最後の相棒。そして――。

 

 

 

<穴>①マイク・カーロウ

 

 パーカーとの仕事は3回。相性は良い様子で、いずれも成功率が高い。パーカーがきちんと筋を通す人間であることを知っているので、大変厚い信頼を寄せている。

 パーカーの仲間のうちでもとりわけ無口で、ひたすら運転に徹する。だがいざとなれば芝居も戦闘も見事にこなす。⑱『ターゲット』では相棒のノエル・ブラセルに対して紳士的な気遣いもみせる。<対抗>のメンバーに入れて良さそうだが、なにより彼の情熱のすべては車とレースにある。A地点からB地点までどれだけ距離があろうとジャスト1秒で着く乗り物にある。クールな彼の内側にある情熱は、その理想の追求のために現れる。レースが彼の命を喰らうまで走り続けるつもりでいる。パーカーの仕事に対する態度と通じるところがあるのかもしれない。犯罪のプロとして十分な素質があるだろうが、やはり彼には車のための犯罪稼業、それ以上ではない。

 

 

②スタン・ディーヴァズ

 

 二十代半ばの若手。金髪ハンサム、陽気で人好きのするディーヴァズくん。世の中のあらゆることに反逆して生きてきた彼だが、パーカーとの仕事が犯罪稼業で食べていくきっかけとなった。パーカーに紹介されたハンディのところで、一人前のプロに鍛えられる。明るく人懐っこい性格だが、頭の回転が速く、タフさも身につけている。素人は好まないパーカーだが、ディーヴァズくんのことはその冷静さと度胸をかって認め、初仕事以後も何度か仕事に誘っている。ディーヴァズくんもプロへのきっかけとなったパーカーを尊敬し、いつも喜んで誘いを受ける。

 パーカーとの仕事は3回と多いが、どういうわけか⑯『殺戮~』以後カムバックを果たしていない。相棒を張るに申し分ないキャラクターなので、巻き返してほしかった……。

 ひどい目に遭わせたくなかった……?

 

 

③フィリー・ウエッブ

 

 パーカーとの仕事は2回。運転手だが、マイク・カーロウと違って盗みが唯一の職業。無口で、パーカーもそこが好きらしい。パーカー視点で好きと述べさせたのは彼くらいではないだろうか。だがウエッブはパーティーをよくやるそうだから、プライベートでは社交家なのかもしれない。ディーヴァズくんとはよく話し込み、酒の飲み比べで勝ち続ける。仕事には立派に改造した車に乗ってくるが、パーカーは、ウエッブは単に車をいじくりまわすのが好きなだけだとにらんでいる。完全に身元の分からない車を所有することが、ウエッブの誇りなのだという。

 彼も⑯『殺戮~』以後、カムバックを果たしていない。それでもパーカーのお気に入りで、今のところひどい災難にも遭っていないので、いずれまたお呼びがかかるだろう。

 

 

<大穴>①ラルフ・ウィス&フランク・エルキンズ

 

 セットで取り上げているように、この二人はすでに固定の相棒同士。第1作『人狩り』からパーカーと共に仕事をしているので、ハンディより古参である。パーカーとの仕事は、それを含めて4回と多い。それに二人の名前こそ出ていないが、③『犯罪組織』でパーカーの呼びかけに応じたメンバーにも含まれているかもしれない。二人は二十年来の相棒同士だが、パーカーはエルキンズとは『人狩り』で初対面だったらしい。

 二人は同じ地区に住み、家を持って、妻子と暮らしている。裏稼業は妻以外には秘密にしている。お互いの子どもたちが結婚しそうな雲行きだというから、家族ぐるみで仲が良い。ゆえに、「家庭派泥棒コンビ」

 ……あまりパーカーと関わらないほうがいい気がするのだが、最古参という…。

 家庭を守って落ち着いた生活をしているため、裏稼業でトラブルに遭ったとき、身を隠すのが難しい。そんな二人の生活が危機に陥るのが⑳『電子の要塞』だ。

 二人はあまり暴力沙汰を好まないようで、⑯『殺戮~』でも、修羅場とは別のところで仕事をしている。⑳のときでさえ、厄介人物を殺してしまうという手段は、特にウィスには思い至らない。仕事ではとても有能だが、やはりパーカーとは違う毛色の悪党なのだろう。

 ウィスは物静かで思慮深い職人タイプ。悪党の道を歩ませたくないとはいえ、自分の息子たちに技術を伝えられないのが残念なようだ。対してエルキンズは活動的ななんでも屋。銃も扱えば車も転がし、他人と親しくなることにも長けている。地域では野球チームのエースらしい。

 長い付き合いではあるが、すでに最高の相棒がいる状態で、住む世界も違うため、パーカーとは今後も時折の仕事仲間という関係であり続けるのだろう。……何事もなければ。

 

 

②ルー・スターンバーグ

 

 パーカーとの仕事は2回。普段はイギリスで暮らしているが、金が必要になるとアメリカに戻ってきて、パーカーたちと仕事をする。気難しげだが、クールで有能。権威ある立場の人の演技が得意。プロとして重宝されるが、彼の生活の拠点の半分はイギリスにあり、必要以上に仕事はしない。距離の問題があるから、パーカーとの仕事数はあまり増えなさそうだ。暴力沙汰は似合わず、荒んだ感じもなく、パーカーの仲間ではちょっと異色の存在だ。「見かけによらず幸福な男」というのもいい。⑱『ターゲット』から少し時間を置いて、きっと再登場になっていただろう。

 

 

③ノエル・ブラセル

 

 パーカーとの仕事回数は2回。1度目は恋人トミー・カーペンターと一緒に、2度目はトミーと分かれ、独立して登場する。どちらもそこまでやるのかというくらい、きわどい役どころを引き受けている。1度目の頃は21才。「真面目でユーモアのかけらもない」とされているが、カムバック以後はずいぶん明るくなって、笑顔が増えたように見える。仕事を楽しんでいる様子だ。パーカーからの評価も高い。

 少々不公平なのが、エド・マッキーの恋人ブレンダが、カムバック以後も変わらず20代半ばなのに対し、ノエルは⑱『ターゲット』になると30才前になっていること。いつのまにか追い越してしまっている。

 ブレンダはおそらく厳密には犯罪のプロではないので、ノエルが仲間の紅一点になる。

 ノエルは細身の美人で、いつもすっきりとした軽装で旅行する。プロになったきっかけは彼女の伯父の影響とのこと。見栄えが良く、プロとしての度胸と技術にも秀でている彼女は、犯罪仲間たちから重宝されているようだ。新しいパートナーはいてもいなくてもいいと思っているようだが、その気になれば引く手あまただろう。

 まあ……パーカーはないだろう。どこかのグロちゃんなら別かもしれないけど。

 ⑱メンバーのワイツアーやカーロウとも上手くやっていた。彼女が次に登場するときは、だれか新しいパートナーが見つかっているかもしれないが、相変わらず紅一点として、活躍の場を用意され続けるのだろう。またハードな役まわりかな……。

 

 

 ◆◆◆

 ここまで見てきたように、パーカーには固定の相棒はいない。そのため次作ではだれが出てくるか、その人物は無事ですむのか、はたまた……!? というのが、シリーズの見どころの一つでもある。(だったらネタバレ激しい記事を書くな)

 あるいは、ある時いきなりぽっと出の素人のオジサンが相棒役になったりもするので、なにが起こるかわからない。パーカーとその仕事仲間が最終的にどうなるか、いつも目が離せなくなる。

 

 いずれにしろ、おおむね<本命>から<大穴>に至る順で、「パーカーの相棒に特有の」ひどい目に遭っているように見えてならない。マイク・カーロウでさえ殴られて昏倒するという災難に見舞われたことがあった。

 

 つくづく、本当に、平行世界のドートマンダーの相棒とは、どんなに恵まれた立ち位置だよ、もうっ……と思う。なにしろ災難は全部主人公にばかりふりかかっていくんだもの……。

 

 パーカーシリーズ最終作になってしまった『Dirty Money』、その次はいったいどんな作品が書かれる予定だったのだろう。

 ああなって、こうなってと妄想は膨らむばかり。もう十年がすぎるのか……。マジですか……。

 

 

 

 どなたか続き書いていただけませんか……?

 

 

 ……そうでなければ、超絶おこがましいのは重々承知のうえで、三流五流の二次創作になっても、書いてみたいなぁ……。それが夢……。

 

 

 以下、比較的手に入りやすいはず。主力の仲間も出るのでおもしろい。展開は、シリーズの中ではソフトなほうだと思う。

悪党パーカー/ターゲット (ハヤカワ・ミステリ文庫)

悪党パーカー/ターゲット (ハヤカワ・ミステリ文庫)