A.Banana.S

古代ローマ、NACSさん、ドートマンダーにパーカー、西武ライオンズ、FEプレイ日記(似非)・・・好きなことをぽつぽつと。

リーフ王子のグランベル778/第7話(後編の小説版・冒頭部)

次の記事は、古代ローマ三作目の打ち上げとする予定ですが、

その前にこっちを始めておかないと色々マズい気がするので、やってしまいます。

 

上げたからには、最後までだ。ははは……。

 

なんにせよ、これでケリがつきました。四部構成。

第一部「リーフ王子のグランベル778・再開」編

第二部「バーバラ王都地下探訪」編

第三部「魔の島、クロスオーバー」編

第四部「リーフ軍、最後の戦い」編

 

以下、第一部本編の1ページのみ。続きは、最後かプロフページにあるpixiv様アカウントで連載。

 

……たぶん、これ以上ここでは宣伝しない(…?)

 

 

ではでは、止まっていた時計が17年ぶりに動き出します。

 

前話(ここまでは実質17年前)

anridd-abananas.hateblo.jp

 

※※※※※

第一部
~リーフ王子のグランベル778・再開編~

 

 

「おい、クソッタ──いや、パーンさん、いつまで遊んでんですか? 連中がもうそこまで来てますよ!」
 リフィスが──見張りに立たせていたのだが──そう知らせてきたので、パーンは『聖戦闘技場体験』を切り上げることにした。とりあえずがっぽりと稼いだトルードとシヴァを連れて、シアルフィ城の外へ出る。
 いくら稼いだところで、あの世まで金は持っていけない。そんな事態にならなきゃいいのだが。
 リフィスの言ったとおり、アリオーン率いるトラキア竜騎士団が、もうはっきりと確認できるところまで迫り来ていた。
「さて、どうすっかな……?」
 頭をかいてつぶやくのだが、パーンはすでに最善と思う指示は出していた。アリオーン隊はこちらの倍はいる戦力だ。一方、このダンディライオンとリフィス団連合は、現在総勢七人。東へ出て、アリオーン隊を迎え撃つのは、パーンとトルードとシヴァ。城を出て西へ下がり、援護を担当するのはセイラム、ティナ、そしてラーラ。リフィスには城の守りを任せることにしたが、いよいよヤバいとなったらあいつは逃げるのだろう。そのくらいの信用度だったが、それとも腐ってもあいつも盗賊であるから、手ぶらでは逃走しないだろうか。サフィが戻ってくるのを待とうとするだろうか。
 正直に言えば、パーンもサフィには一刻も早く戻ってきてほしかった。はるか彼方まで進軍したであろうリーフ軍本隊に、この事態を知らせに飛んでいったきりだ。リワープで。
 リーフはアリオーンになんらかの対策を講じるはずだ。問題はそれが間に合うかだ。間に合わないのならば、ここにいる面子でなんとかしのぐしかない。
 パーンには、しのぎきる自信があった。アリオーンさえいなければ。
 竜騎士団自体はたいした敵ではない。パーンと横の凄腕ソードマスター二人で片づけられるだろう。パーンは王者の剣、トルードは銀の剣、そしてシヴァはキルソードを所持する。え? 『聖戦』にない武器? そんなことを言っている場合か。もう偽物であることはバレただろうから、格好つける必要はない。
 セイラムとティナには、離れたところからリブローなりシーフなり、なんならフェンリルなりで援護してもらう。なにも知らず本城に置いてきたリフィスを囮にでもすれば、いずれ勝てるはずだ。
 実のところもっと早く打って出ることもできたのだが、そんなことをしたところで、機動力で優る竜騎士どもに囲まれるだけだ。パーンたち三人はそれでもなんとかなっただろうが、セイラムたちはさすがに分が悪い。挙句、さっさと本城を取られてしまっただろう。
 だから、問題はアリオーンただ一人なのだ。天槍グングニルの継承者で、「見切り」に「祈り」スキルまで備え、でたらめに強い。
 それでもなんとかできなくはないと、少し前に大将リーフ御自らが証明していた。南トラキアでの戦いで、嘘かホントか知らないが、セティにもサラにも頼らず、自分でトルネードを打ちまくり、アリオーンを圧倒してみせたという。
 あの王子はいつの間にそんな上級魔法を使えるようになったんだ? それともただどいつもこいつも話を誇張しているだけなのか?
 いや、それはともかく、リーフ曰く、対アリオーンは魔法に限る。直接攻撃では絶対に挑んじゃだめ、とのことだった。
 実際、「見切り」がある以上、こちらの必殺は期待できない。パーンとシヴァではほとんどアリオーンにダメージを与えられず、返り討ちにされるだろう。トルードなら同じ「見切り」で勝負になるかもしれないが、槍と剣という、武器相性で考えても不利だ。
 魔法ならば、後ろにいた。セイラムとティナだ。ヨツムンガンドとライトニングがある。ラーラに応援させれば、再攻撃もできる。
 しかしパーンは、その策にあまり希望を見いだせなかった。ティナはまず攻撃が本職ではない。セイラムは……闇魔法の威力はあるが、あの薄幸ぶりである。当たらない気がする。そして二回攻撃なんて夢のまた夢だ。仲間として、友人として、このうえもなく信頼はしているが、彼の運と命中率は当てにしてはならないと、パーンはわかっていた。セイラムのためにも。
 ならば魔法剣でタコ殴りにするという策も考えられるが、あいにくと全部前線チームに持たせてしまっていた。なんて献身的なんだ、と我ながらパーンは思う。光と風の剣は、リーフとカリンの手の中。そして今頃マリータとデルムッドが、炎といかずちの剣を振りまわしているのだろう。ちょっとはこうしたバックアップに感謝しろ。
 しかしたとえその策ができたとて、その後どうなる?
 アリオーン一人に集中したところで、結果配下の雑魚どもにしてやられるのがオチだろう。
 結局のところアリオーン対策とは、後ろの二人にスリープを使わせるのが最善であるように思われた。
 だが──と、パーンはつい目玉をぐるりとまわす。外れる気がする。ティナどころかセイラムまで、スリープを外しそうな気がする。そんな事態はないと言いきれるか? 『聖戦』だから? しかし『トラ7』では、「ライブを外す」などという驚天動地の事態が起こり得るのだ。今となっては昔のことだが、初めてナンナがライブを空振りするのを見た時、マンスター城のど真ん中で、さすがのリーフも絶望に打ちのめされたそうだ。「死にたくなった」と、後にあの英雄はこぼした。
 ごく序盤のことだ。
 セイラムはめったに外さない。ティナも、最近は減った。
 が、くり返すが、相手は神器持ちだ。
 パーンがこれまで見てきたかぎり、百発百中の杖命中率であるのはサラ、それにリノアンだ。パーンはよく知らないが、あの風の勇者セティもよもや外しはしないだろう。しかしリノアンはいないし、サラは祖父に誘拐されたらしいし、セティは最前線にいるところだ。無理を承知で言うが、セティ一人でいいからこっちに寄越してほしい。
 それを期待できない今、スリープを任せるなら、やはりサフィがもっとも安心だ。ごく序盤、彼女も稀に外したが、それでも百発九十八中くらいではある。しかしそのサフィもまだ戻ってくれない。
 セイラムとティナに任せるしかない。ラーラが踊ってくれるので、三回チャレンジできる。
 それでアリオーンが眠ってくれなければ、この場は詰みだ。
「パーン」
 頭の中でぐしゃぐしゃと考えていると、トルードが声をかけてきた。
「お前も少し下がれ。第一陣は俺が防ぐ」
 心配されているらしかった。長いつき合いである右腕には、見透かされてしまうのだろう。心の内も、現状も。
「三人並んで迎え撃ったほうがいいだろ」
「相手の半分は手槍持ちだ」トルードが教えた。ここでも魔法剣がないのが痛かった。「お前はその剣で支援してくれればいい」
 トルードはパーン愛用の王者の剣のことを言っていた。二回攻撃ができるので、勇者の剣並みに優れた剣だが、「カリスマ」スキルまで追加されるのだ。
 パーンも実のところは、自分がトルードとシヴァ並みには戦えないことをわかっていた。だがそれでは立つ瀬がないではないか。ダンディライオンの首領であり、このバックアップ・チームのリーダーなのだから。
 最悪、アリオーンからグングニルを強奪してやる。無理でもやってやる。俺に盗めないものなんてないんだ。見とけよ。
 一方シヴァも、現状はよくよくわかっているに違いない。黙したまま、覚悟を決めたような顔をして、キルソードを構えて立つ。
 お前はなんのために戦うんだよ、とパーンは胸の内で問いかけた。ほかにやることがないからとバックアップ・チームに入れられた。彼はリフィス団のくくりだ。だがリフィスに義理立てしているわけでは断じてなかろう。
 サフィと、ついでにティナのためか。
 シヴァとパーンは「太陽剣」で、上手くやれば自己回復もできる。トルードは「見切り」持ちで、体力もあるので、そうそうやられはしないだろう。
 同じソードマスターであるのに、シヴァとトルードはまったくタイプが違った。シヴァは身軽で、必殺撃を得意とする。一対一で敵将を撃破するのに向いているが、前線に立たせ続けるといずれ「やっつけ負け」するタイプだ。一方、トルードは「死神」という異名にも関わらず、さほど必殺頼みの戦い方をしない。慎重、着実に敵を削っていくタイプだ。壁役に向いている。
「来るぞ」
 前方を見据えながら、シヴァが警告した。
 パーンは振り返って叫んだ。
「セイラム、頼んだぞ! ティナ、外したらあとで毛虫の刑だからな!」
「いやーーーーっ!」
 ティナが律義に抗議してくるが、毛虫の刑よりずっと可愛げのない事態が迫っているのを、わかっていないのだろうか。
「パーン!」
 ラーラはすでに悲鳴じみた声で、今にもこちらへ駆け寄ってきそうだ。
 彼女には言ってあった。いよいよマズいとなったら、三人で避難するように。あの二人を応援して再行動させる。本城に入るなり、リワープで遠くへ行くなりできるはずだ。残るラーラのことは、パーンがかついででも守ると決めていた。
 起こり得る最悪の事態の話は以上だ。
 アリオーン隊の先頭が目前に迫った。トルードとシヴァが迎撃態勢をとるその一歩後ろで、パーンも王者の剣を構える。
 ひとまずセイラムとティナを信じ、アリオーン以外を全滅させることだけを考える。
 これでいいのかどうかわからないが──。
 そのとき突然、待っていたものが現れた。パーンたちと竜騎士団のあいだに、白い光が割って入った。ほっとため息をこぼすところだったのに、パーンはまずあっけに取られた。
 おいおい、なにも最前線に飛んで来なくていいのに──。
 だが現れたのは、サフィではなかった。王女アルテナだ。リーフの姉だという。
 リーフは姉一人ワープさせるだけで、この事態を収拾するつもりでいるらしい。いや、もしかして王女自らが志願したのか……。
「兄上、いい加減にして! どうして私たちの気持ちがわからないのです!」
 説教──いや、説得が始まった。
 聞いたところ、アルテナは素性を知らされずトラキア王家で育てられ、つい最近までアリオーンとは実の兄妹であることを疑ってもいなかったそうだ。地槍ゲイボルグを所持しておいて、それはないだろうと思うが、まぁ、いいか。
 パーンは王者の剣を下げた。トルードとシヴァも同じようにした。アリオーン隊の面々も王子を見つめたまま、もはや戦意もないようだ。
「アルテナ、お前のために戦おう」
 アリオーンはそう言った。
「よかったですわ」
 振り返れば、いつの間にやらそこにサフィがいた。リワープで戻ってきたのだろう。
「これでアリオーン様と戦わずに済みます。リノアン様も喜ばれるに違いありません」
 忘れがちだが、サフィの主君とはターラの市長リノアン(※注 十代)であるのだ。
「実のところどうなんだろうな?」パーンは苦笑するしかない。「リノアンさんとあの王子はまだ婚約してるんだろ」
 仲間であるという以外、さほど縁のない傍目にもわかるのだが、リノアンの気持ちは明らかに別の男へ注がれていた。しかも相思相愛だ。20%の支援効果とは、あのグレイド&セルフィナ夫婦並みだ。
「あの二人が──」
 前方の空を指して言いかけ、さすがにパーンはそこで言葉を切った。野暮だし酷だろう、今は。
「ふふ」
 サフィもまた意味深な微笑みだけを返して寄こした。面白がっているのではないか。
「サッフィーーーー!」
 リフィスが、本城の守備を放棄して飛び出してきた。サフィに飛びつく間際、シヴァのキルソードの切っ先によって、あっけなく貫かれる。
「お前が無事に戻ってよかった」
 リフィスの服を刺して吊るし上げながら、シヴァがサフィに言う。白目を剥いたリフィスをどっかそのへんに捨てる。
「リーフ王子たちの様子はどうだった? 激しい戦闘の只中か?」
「激しいバトルの只中でした。占い屋さんで」
「なに……?」
「パーン!」
 シヴァと並んで怪訝な顔をしたところで、気づいた。セイラムとティナとラーラが駆け寄ってきた。
 ティナは姉サフィと無事を喜び合った。セイラムはトルードも含めてだれも怪我をしていないのを確認してから、パーンのところへ来た。
 パーンはラーラに熱烈に抱きつかれているところだった。
「何事もなくてよかった」セイラムが安堵の息をこぼして言った。
 パーンもうなずいた。「ああ、ちょっと拍子抜けするくらいにな」
「ところで、パーン」セイラムは、今や同盟軍となったらしいアリオーン隊を指した。「私は特別目が良いわけではないが、ちょっとおかしなものがアリオーン隊の中にいないか?」
「ああ、気づいてたよ。どう見ても仲間外れだもんな」

 

 

 

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