マイアミに住むことになったH(元某N・D)は、そこがどんな土地柄なのかを調べてみることにしました。
(2009年の設定ですが、この時点ではCSIマイアミは現地でS7までの放送。でもS8以降の話も一部入っています。ごめんなさい)
(どこから来た代理なんだい?という方はこちら→TODO-A - pixiv)
(↑ピクシブにも上げますが、文字サイズが変換不可でした)
(もちろんネタバレにもご注意願います)
H:トム。
T:ん?
H:マイアミこわい。
T:なんだ、いきなり。
H:警察にホレイショ・ケインがいる州に住みたくない。
T:ああ? なんの話だ。テレビか? テレビドラマだな? …ったく、安心しろ、ディー。ホレイショ・ケインは架空の人物だ。フィクションだ。
H:でもCSIがあるのやだ。フロリダ州に死刑があるのもやだ。
T:でもここはマサチューセッツ州じゃない。お前がここで新しくなにかやらかさなければ、平穏に暮らせるはずだぞ。
H:でもうっかり指紋取られた日には、前科からなにからあっというまに暴かれるんだろ。
T:あれはまず州内の犯罪者のみを検索するシステムみたいだけどな。ほかの州は必要に応じて個別に検索していなかったか? あとは連邦法違反も別で……お前、FBI沙汰にもなったんだっけか?
H:死人の指紋でもヒットするのか? ホレイショは何度かだれかの墓を掘り返していたぞ。
T:マサチューセッツの墓まで掘り返しには行かんだろう。……たぶん。
H:たぶん!
T:お前が指紋を取られるような事態を起こさなきゃいいだけの話だろうが。
H:なに言ってるんだ。ここはマイアミだぞ。ちょっとパーティーに出かけただけで事件、事件、アンド事件だ。……俺はパーティーに行かないけど。
T:ああ、そんな柄じゃないしな。
H:でもうっかりその場に居合わせただけで指紋採取だ。拒否したら即容疑者だ。
T:無関係な指紋の前科まで州をまたいで調べるか? いやそもそも、そうそう指紋採取されるような場面に出会うか?
H:トム、残念ながらここはマイアミだぞ!byホレイショ・ケイン
T:お前が言ってるのは、テレビドラマの中のマイアミだろうが!
H:パーティーとか、命知らずのやることだ! 夜でも昼でも! 夜明け前に、だいたい若い女の遺体が見つかる。うっかりギャングの暗殺計画を立ち聞きして、家族ともども命を狙われる。真っ昼間でも銃撃。ホテルの上階から人が落下。そして下には絶妙な感じで尖った巨大な氷のオブジェ――
T:そういうことが2回くらいあったな。
H:レストランで食事をしてたら手榴弾、ショッピングしてたら銃撃戦、ビーチに地雷、巨大ネズミ捕り、ビーチバレーしたら感電、砂浜に埋まる死体、死体、アンド死体……どこの紛争地だ?
T:……何シーズンもドラマ作ってたらそういうこともあるかもな。
H:庶民が普通に暮らしていてこれだぞ。このうえ組織犯罪が多すぎる。マラノーチェにロシアン・マフィア。街のあちこちでドラッグの売買、人身も売買、各種武器の密輸――トム! あのベイポライザーを見たか!?
T:ああ、見た気がするな。ドラマの中で。
H:人体消滅だ! 一度で10万発だ!
T:……まあ、ほかにも防弾ジャケット突き抜け弾丸とか、弾道が曲がる銃とか、一見普通に見える最強防弾スーツとか、色々あった気がするが、あれは中でも意味不明だったな。
H:ベイポライザーVSホレイショはしびれた!
T:……お前、ホレイショのファンになったのか?
H:ホレイショめ、仲間のだれも見てないと思って無茶しやがって。だいたいいつも、特に空港で。
T:フロリダには小さな私設空港があるからな。少なくともドラマの中では。
H:小さな空港に一人でいるホレイショとか、なんか起こる予感しなしないぞ! ベイポライザーといい、某シーズンの最後のクリフハンガーといい、“ソフィーの値段”といい――おい、トム! あんた、“ソフィーの値段”を見たか!?
T:……ええと、どんな話だった?
H:赤ん坊が誘拐されて、身代金を要求される話だ。ホレイショのやつは赤ん坊の命をなんだと思ってるんだ!
T:おい……
H:車が三回転くらいしたぞ! 空港でだれも見てないからって、赤ん坊が乗ってる犯人の車にカーチェイス仕掛けて、ひっくり返して噴煙上げて、犯人人事不省。なぜか赤ん坊だけ無傷。チャイルドシートもないのに!
T:……
H:「もう大丈夫だよ」って、そんなわけあるか! 赤ん坊だからバレなかったものの、3歳くらいの物心ついた幼児だったら立派なトラウマものだぞ!
T:まぁ……ホレイショは本当に子ども好きだからな…。
H:一説には、不憫な子どもの傍に瞬間移動できる能力を持っているらしい。犯人を射撃できる最適な位置にもよくワープできてるから、たぶん本当だろう。
T: ディー、ドラマには演出というものがあってだな......
H:おまけに、爆弾では絶対に死なない能力もある。なんなら時空歪曲――爆発までのタイムリミットをねじ曲げて引き延ばす能力もある。「四分じゃ無理だ」と言っときながら悠々ドライブ!…からの「燃えろ、全部燃えちまえ......」 「あと30秒しかありません」ってデルコが言ってるのに、余裕で脱出。デルコが吹っ飛ばされたのに自分はよろめきもせず脱出。「あと5秒しかありません」ってまたデルコが言ってるのに、俺が数えたところ、20秒で脱出。爆発“中”に人質を救出して脱出。「私は死なない」少なくとも爆破では死なない。刺されても撃たれても死なない。
T:デルコが秒数を数え違えてる説が出てきそうだな…。まぁ、あの世界……というかあのラボは、数秒で検査が終わり、1秒で情報共有可で、0,1秒で噂やゴシップが広がるからな。やはり時空が違う、ということにでもしておけ。
H:そして唐突な「みんなお疲れ」は笑うぞ。ところでなんだ、組織犯罪の話をしていたっけか。おい、トム! “傷だらけの帰還”(大嘘)だぞ! ホレイショはオープニング前に皆殺しにして秒で帰ってきたぞ。無論無傷で! 化け物か!
T:お前はどこの国の人間だ? 日本語版タイトルに文句をつけるな。
H:マイアミとブラジルは、たぶん陸続きで隣同士なんだな。
T:ギリギリ陸では続いていたと思うな。
H:ところでタイトルと言えば、“彷徨える狼”とか“狼の叫び”とか、一瞬なんの話かと思ったら、ただのウルフメイン回じゃねえか! 邦版タイトルめ!
T:だからお前はいつから日本人になった? まあ、原題も遊んではいたが。
H:なんであいつだけいつまでも“Mr. Wolf”呼びなんだ、ホレイショは? イジメか!? 俺だったら泣くぞ。
T:ああ、ああ、そういや、そうだな……
H:ウルフの声が、S3の初登場では鳳〇太郎なのに、同シーズンの終盤にはもう石〇五〇門に寄っていって、気づいたらデルコより声変わりしてるぞ、なにがあったんだnmk――
T:だからお前はどこの国の人間なんだ、ディー!
H:ウルフはこないだ金庫破りもしていたな。今度の俺たちの仕事にスカウトしよう。
T:ディー、フィクションと現実の区別をつけろ。あと、お前は引退しろ。ホレイショ・ケインに捕まらないように。
H:万一俺が捕まって、裁判になっても、あんたは俺を助けに来てくれるよな? 裁判所にロケットランチャーを打ち込んで。
T:……ああ、あれはびっくりしたな。
H:ほかにも法廷に提出された証拠の拳銃を奪って、バンバン発砲して脱走した被告もいた。あのビスケーン裁判所とかいう地帯がいちばんヤバいしこわいし危険だろう。警察の令状が盗み見&横取りされる。まわりに暗殺者がうじゃうじゃいて、正面玄関の前で演説してるやつが撃たれたのが一度や二度じゃない。死にたくなければ傍聴に行くな。各種届出にも行くな。婚姻届けを持って行くなんてもってのほかだ。ずっとお幸せに事実婚してろ。もしくは違う州へ駆け落ちしろ。
T:お前は優しい男になったな、ディー。
H:ほかにも、地対空ミサイルかついで飛行機を狙う輩がいる。近くに原発があって、トラックで突っ込もうとする輩もいる。だからいったいどこの紛争激戦地なんだ? よく住んでいられるな。
T:見ていると、なんだかほかの市より若い住人が多い印象だな。それに観光客も多い。気のせいか、肥満傾向をほとんど見かけず、瘦せ型の水着美女や筋肉自慢の若造ばかり目につく。あくまでドラマの中では。
H:35歳以上は「すごいおじさん」、男が175センチで低身長コンプレックスを抱えるような世界だ。
T:世知辛いな。
H:俺だって、最初は水着女の胸と尻を目当てに見始めたのに!
T:ああ、そうだろうな…。
H:まさかカリーとナタリアがいちばん目のやり場に困る谷間をしていただなんて!
T:おい……
H:ナタリア、ひどい目に遭いすぎだろ。妹までひどい目に遭いすぎだろ。
T:まあ、こういう世界観で生きているからな…
H:デルコめ! ウルフが拷問されてるのに、自分はカリーといちゃいちゃ! ホレイショにウルフと連絡取れるまでケータイ鳴らすように言われてたのに! 鬼か、あいつは!
T:…ディー、鬼ってなんだ?
H:女タラシの癖に! 頭撃たれてから一途ぶりやがって! カリー! カリーは悪くない! 全部デルコが悪い!
T:…否定しないが。
H:でもカリーは、いくらエバーグレイス国立公園内の一本道だからって、ケータイ耳に当ててしゃべくりながら運転してたよな。日本だったら道路交通法違反で逮捕だぞ。案の定車沈むし……
T:ディー、お前はもうすぐボランティアの地域見守り隊ぐらいになれそうだな。
H:こんな地域を見守れると思うのか? 民家に手榴弾、暗殺者、麻薬工場、紙幣偽造工場、少女誘拐犯のアジト、夫婦がライフルと斧を振りまわしてケンカし、粉砕機に人が突っ込まれ、プールで人が溶けるような世界だぞ。マイアミこわい。こわすぎる……
T:ディー、お前はこのドラマを滅茶苦茶楽しんでるな。
H:粉砕機のご遺体を丁寧に人型にはめ直していった息子カイル、あれ実はすごく良い子アンド強い子だろ。
T:感情移入しまくりだな。
H:マイアミ自体の安全をなんとか確保しても、定期的に密輸アンド密航船がやってくる。合法で、豪華客船もやってくる。毎回外から犯罪を持ってくる。
T:まるで八方塞がりだな。
H:これらに加えて、猟奇殺人犯やシリアル・キラーがいる。ついでに一部検察や弁護士、果ては判事まで汚職……どころか人を殺して埋めてる。この街に正義はないのか?
T:おかげでお前が正義漢になって、俺はたぶんうれしいぞ。だが殺人犯――しかも被害者が一般女性でも、司法取引で釈放になる世界だからな。ディー、お前がまた取っ捕まったとしても、希望があるかもしれんな。
H:冤罪と誤認逮捕はいいが、医療ミスはアウトの世界。
T:ホレイショもトリップもやってたな。ホレイショに至っては、疑われる行動をするほうが悪い、とか開き直っていたな…
H:ロリコンはだめで、年の差婚はオーケーの世界。ロリコンを年の離れた人との恋愛と定義したやつもいたのに。んで、ホレイショとマリソルは何歳年が離れているんだ!?
T:……ディー、ドラマだぞ。
H:マリソル28歳で、20歳は離れてるよな!? …ところで、マリソルがドラマ中トップクラスの美女だというのは同意だが、痩せてはいるものの、まったく病気に見えないのはいいのか?
T:ディー、DNA各種検査も、秒で結果が出る世界だぞ。細かいことを気にするな。
H:少なくとも余命数ヵ月じゃないだろ! 化学療法もしてないだろ!
T:拷問されても数時間できれいさっぱり顔で復活できる世界だから、細かいことは――(以下略)
H:人外体力の人間多すぎだろ!
T:刺されてICUに担ぎ込まれた瀕死の被害者が当日退院するような世界だから、細かいことは――(以下略)
H:まだある。むしろマイアミの本当のこわさはここからだ。すなわち、大自然の脅威! 最強ハリケーン直撃! 落雷でエバーグレイス早すぎるにもほどがある火の海! 大波来襲! 警報発令で町じゅう大避難行!…なのに避難もせずに直前まで営業して強盗に入られるブラック銀行!
T:カタギの仕事も大変だな。
H:そしてトム! あんたは以前俺に「フロリダにはワニがいる」と教えてくれた。だからそこだけは覚悟していた。やっぱりワニに食われる案件が何度かあった。
T:フロリダじゃなくともいるが…
H:でも普通に熊もいる! 300キロ級でいる!
T:ああ、いるみたいだな…。
H:上がった死体は、絶対エバーグレイス内で鳥葬とかやってるだろ!
T:そんな描写は(たぶん)なかったと思うが。
H:でも大蛇なんて聞いてない! 人間丸呑みレベルの大蛇なんて聞いてない!
T:ああ、聞きたくもないな。
H:そもそも、ここに観光に来る連中がどうかしてる。わずか5キロほど沖に出ればサメがいる。ちょっと海に落ちたら、うじゃうじゃ寄ってくる。ほかにも刺されると激痛の凶悪クラゲとか、ヒアリとか、謎の外来種とか……フロリダに検疫はないのか?
T:港も空港も、エバーグレイス以上ビスケーン裁判所未満の危険地帯だからな。
H:トム、今更だが、あんたもしっかりドラマを見てるんだな。
T:お前と一緒に住んでるからな。
H:最近思ってたんだが、あんたって、ちょっとトリップに似てるよな。
T:そうか?
H:…すごくよく似てるよな。
T:お前、頭が“こう”で、少しばかり腹が出ている男は、みんな俺に見えてるんじゃないだろうな?
H:なに言ってるんだ。同じハゲで腹が出ていておまけに短気でも、トリップのほうが人格者で、まだ優しい顔立ちだぞ。
T:うるさいわ!
H:俺はそんなあんたが好きだぞ。
T:急にデレるな!
H:ウルフめ、トリップのデコにキスしやがって! うらやましい! ぶっ殺す!
T:お前はなにに嫉妬してるんだ!?
H:デルコめ! 「地雷の次は温水器かよ?」って新車壊されたトリップを笑いまくりやがって! ひでえ!
T:おい、トリップはお前の大嫌いなデカなんだぞ?
H:ホレイショめ、絶対トリップとできてるぞ! 「俺はどこにもいかない」からのオープニングで使われるレベルの極上の笑顔。 トリップの「夕べはどこにいた?」からのホレイショの「君といた」 T「ジュリアとは何者だ?」 H「カイルの母親だ」 T「そんなことは聞いていない」(お前がどれくらい愛した女かって聞いてるんだ、わかれ!) ホレイショ、許さん! ぶん殴る!
T:だからお前はいったいだれに嫉妬してるんだ!?
H:でもそんなこと言った日にはホレイショは、「上等だ」「お前の人生を滅茶苦茶にしてやってもいいんだぞぉ?」「八つ裂きにしてやる(複数回反復)」 俺:「脅しか?」 ホレイショ:「ああ、脅しだ」「言わなきゃ地獄を見るぞぉ?」「痛かったぁ~~?」「これがマイアミだ」……どうしよう、トム。やっぱりマイアミこわい。というか、ホレイショ・ケインがこわい。
T:ディー、わかった。俺に任せろ。
H:トム! まるでホレイショみたいな頼もしさだな! ところでそういえば、俺たちはTとHだな! トリップとホレイショだな!
T:ああ、ほんとはTとDだったんだけどな。
H:トム、俺に任せろ! 俺はどこにもいかない! ずっとあんたといる! できることなら…
T:わかった、わかった。さあ、もういいかげん一気観はやめて、寝るぞ。明日も早いんだから、店が――
H:おう!
T:ディー。
H:うん?
T:…………いや、なんでもない。
――二度と“失いたくない”
――“君のいない人生なんて”
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