A.Banana.S

古代ローマ、NACSさん、ドートマンダー・・・好きなことをぽつぽつと。

アラン・グロフィールドの魅力。

エンターテインメント性という観点で見れば、パーカーとグロフィールドは間違いなく最高のコンビでしょう。世の中に名コンビやバディものの名作は多々ありますが、この二人ならそれらに比肩しうる。その魅力が確かにある。

 

片や冷酷非情のタフな犯罪者。

片や陽気でアドリブ力抜群の俳優強盗。

 

アクション性高し。

展開の不確実性と意外性高し。

やり取り面白し。

 

はじめから終わりまで読者を楽しませてくれること請け合いの二人。

 

ただ、問題が2点。

 

その1、二人とも悪党であること。……それを言ってはおしまいなんだけれども。

戦闘力は二人とも高く、だからというわけではないだろうが、人殺しも躊躇わない。パーカーはともかくとしても(おい)、グロフィールドの思いきりの良さには時々びっくりさせられる。

 

その2、キャラクター性が強すぎる。

 パーカーというより、むしろグロフィールドのキャラが強力で、下手をするとパーカーを「ずっこけワールド」に引き込みかねない。その兆候はすでに⑤『襲撃』からあり、どう見てもボケツッコミコンビにしか見えないという危険性。

 もしもパーカーがそれでも良いとしたなら、パーカーシリーズはまったく別の様相を呈していたのではないかと思う。

 ハードボイルドの世界は厳しい。ちょっと女性に入れ込んだだけで、「いつからそんなにヤワになった」「そんなの〇〇じゃない」と、ファンに非難されることが少なくない。男同士だって馴れ合い厳禁。主人公と仲良さげな人物が退場すると「足手まといがいなくなって良かったね」と言われる世界だから。

 ハードボイルド路線を捨てたなら、もしかしたらパーカーとグロフィールドのコンビは人気バディもののシリーズとして、じゃんじゃんドラマ化、映画化されていた未来もあったかもしれない。それくらい好対照で好相性。

 しかし冷酷なるプロフェッショナル・パーカーを変えるわけにはいかない。そこでグロフィールドは「独立」することになる。まさかの「俳優強盗」シリーズで、そのチャーミングな立ち回り……ずっこけぶりをだれにも遠慮することなく発揮できる場を得る。

 ところが彼はそれだけでは済まない。ドートマンダーシリーズという平行世界にまで姿を現す。ずっこけでなんぼの世界だから……。

 まったくグロちゃん、本当に強い……。

 

 

 こんなキャラいます? ハンサムでセクシーで器用でアドリブ力あって、強いけどもだいぶドジの救われ体質で、読者に「…この人一人で大丈夫ですかね?」と思わせつつも、最終的には「グロちゃん、カッコイイ!!」としびれさせてくれる、とんでもなくチャーミングな俳優兼強盗。

 

 

 話を戻しますが、パーカーとグロフィールド、どちらの魅力もどっぷり堪能できるのは、なんといっても⑧『カジノ島壊滅作戦』だと思います。必見でございます。

……私はこれ、いちばん読むのに苦労したけれど。結局一回しか読めていないけれど。

それでも至高の思い出として胸に輝いています。

 

 当時はそう、とある都立図書館に乗り込んでその場で読破するしかありませんでした。我がパーカー&グロフィールド両シリーズ読書体験も終盤に差しかかっていたので、そうなるとだいたい各巻末解説等で、だれがなにをして結果どうなったか、というおおまかな流れは知っていました。いわゆるネタバレ済み状態でした。

 

 それでもものすごく面白かったとしか言えない。やはりシリーズ屈指の作品だと思います。

 

 三分の一ほどが、グロフィールド視点で語られます。

 

 以下、ざっくりの内容。

 

 パーカーは以前、アウトフィットの後釜に座るのを助ける取引をした人物から、孤島で好き放題にカジノを経営している男から金を奪い、島ごと焼き払ってほしいという仕事をもちかけられる。パーカーはグロフィールドとサルサ(というなぜか仲間の中でも色男な二人)を呼び、さらにもう一人加えようとする。ところが最初に来た男は、とても仕事を任せられる男ではなかった。丁重に追い返したあと、新たにまともな仲間を入れ、綿密な下見の末に仕事決行。しかし、先に追い返した男が、あろうことか腹いせにカジノのオーナーにパーカーたちの計画をすべてばらしていた……。

 

 この話で登場するサルサ(ソルサ)も、パーカーとの仕事歴長い相棒。「とてもハンサムだがタフ」とパーカーの評価も高く、それはこんな流浪の人生を歩んだら超タフになりますよね、という彼の経歴が③『犯罪組織』で詳しく書かれている。それが初出で、⑤『襲撃』でも活躍。ワイツアーと並ぶ頼もしさ。そのときグロフィールドにひと足早い結婚祝いを渡している。グロフィールドとはなんとなく仲良さげな一方、女性を見れば競い合うように口説きにかかるライバルみたいなところもある。

 二人で代わる代わるパーカーのところへやってきて、「なんの報告だよ」とツッコミたくなるような報告をしてご機嫌(一応とある件の許可を得に来たつもり)。パーカーは認めないだろうけれど、グロフィールドとサルサのことは好きなんだろうなとは思う(ペットを見る目に近いかもしれない…)。後の作品で、パーカーの回想にこのときのサルサが登場し、急いで振り払う場面がある。

 

 パーカーからグロフィールドへの結婚祝いなど、小さい見どころも多々あるけれど、なにより面白いのがこの後。グロフィールドの根性と執念、愚痴も言わないタフさ、そして底知れぬ生命力には感服するばかり。

 

 いいですか、もう喉まで出かかっていますけどね、全部書いてしまいたいですけれどもね、私などにその面白さを書けるわけがないですからね。必見! なんとかして必見!としか申せません。

 

 とりあえず、パーカーの肩に持たれて気絶するグロフィールドという歓喜案件があるので、どの方面の読者もこのコンビのファンになること間違いなし!(おい)(パーカーさん、ほうっておいてあげる。それで自分が動くときは相棒を反対側に立てかけてから出ていくんですよ…)

 

 

 グロフィールドのカムバックがなかったのは無念ではあるけれど、ある意味では、③襲撃→⑧『カジノ島~』→俳優強盗シリーズ→⑯『殺戮の月』で、見たいものはすべて見せていただいたという感はある。

 

……あとは映画化、ドラマ化、アニメ化……とにかくそうした異なる形式のエンターテインメントとして再現されたらどれだけすばらしいだろうと思う。

 

 叶わないかなぁ……。③⑧⑯の三部作で映画、とか。もっと欲を言えば、③⑧→A⑭『殺人遊園地』B『黒い国から来た女』→⑯の五部作で。

 

 最高すぎませんか……?

 

 

 最後に、唐突ながら、「俳優強盗アラン・グロフィールド」シリーズの見どころの一部をば。(ネタバレ注意!)

 

1、窓から美女が入ってくる。

2、ついでに乱暴な男三名も入ってくる。

3、美女を守って大活躍(予定)

4、さっそく美女に――(以下略)

5、「あなたが私を助けてくれるっていう噂が広まっているんだけど」

6、グロちゃん、プロへの駆け出しは運転手から。

7、だからといって馬で疾走!? 白馬のナイトに!?

8、エレン・マリーちゃんは中でも素敵なヒロイン。

9、グロフィールドさんは既婚です。

 

1、金に困ってもいないのに、好奇心から未知のジャングルにのこのこ出かける。

2、銃と猛犬と横柄な中年女性によるお出迎え。

3、俳優強盗、追いはぎに遭う。

4、俳優強盗、身一つでジャングルに置き去りにされる。

5、俳優強盗、名探偵に志願。

6、とりあえずだれかを犯人ということにして隙あらば逃げよう、という名探偵にあるまじき気構え。

7、監禁、捕縛、もう慣れたもの。

8、美女登場で「彼女こそ女王」

9、お人好しにもほどがある。全編に響く一読者の心のつぶやき「この人、一人で本当に大丈夫? パーカー、早く助けに来て!」

 

1、裸で美女とご対面。からのまさかの無視で一人就寝。

2、麻酔を打たれて誘拐される。

3、そうして身動き取れないまわりで銃撃戦勃発。

4、「キスしたいくらいだ! なんでも聞いてくれ!」と、ゾルン博士級の表現。

5、部屋に帰ったら死体の先客。案の上濡れ衣を着せられ。

6、後ろに美女を乗せて、スノーモービルで疾走(めちゃくちゃカッコイイ!)。

7、自称「ハンサムな俳優演じる白人男性と、美しいドラマティックな黒人美女」

8、ケネディ空港にあるレストラン「ゴールデンドア」

9、グエネロ?……グエネラ?という、ドートマンダーシリーズでも何度か見かけたことがある気がしないでもない国。両シリーズ、最終決戦の舞台はここですね!(なんの話だ)

 

 

 4作目だけはネタにしにくいのですが、グロフィールドの優しさや、真の意味でのかっこ良さ、人柄の良さ、輝きが垣間見える作品。愛妻一筋べた惚れ(ただし出張中は言わずもがな)、自宅でもある劇場で、絵の具で体を汚しながらせっせと舞台づくりに励む彼の私生活が書かれています。

 

 

 何度でも言いますが、こんなにチャーミングな男はいませんって。

 

 

追記:『カジノ島壊滅作戦』原著……のはず。とりあえず自分がポチってしまった……。ペーパーバック版で。

……えっ、オーディオブックもあるんですか!?(財布壊滅の予感)

 

The Handle: A Parker Novel (Parker Novels Book 8) (English Edition)

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