A.Banana.S

古代ローマ、NACSさん、ドートマンダーにパーカー、西武ライオンズ、FEプレイ日記(似非)・・・好きなことをぽつぽつと。

パーカーシリーズ最終作『Dirty Money』について。

 

※注意:話のすべてではないですが、ネタバレ同然の内容です。くれぐれも閲覧注意願います。

 

 

 

 

十年前、心の中で血の涙を流しながら読んだ覚えが……。

 

しかし今となっては…………しかたなかったか。

 

なによりはっきり察せられたのは、『Nobody Runs Forever』の段階で、すでにスターク氏は、この展開を考えておられたということ。

 

それはそうだろうとおっしゃる方もいるでしょうが、一読者として、ようやく今になって確信しています。それだからこそ、今は受け入れられる。

 

パーカーとおんなじことを考えていたよ、あの人。完全にシンクロしていたよ。

 

だからこそ、あの結末だ。

 

いや、もう、海外サイトで検索すればすぐ出てくるんですが、相手がハンディやグロフィールドやエドやワイツアーやカーロウだったら、パーカーは同じことをしただろうか?と。

 

しただろう、おそらく。

 

しかしそこに至るまでの伏線が、もう『Nobody Runs Forever』から、よく見たらそこかしこに散りばめられているのですよ。

 

彼がなにかしでかしたわけではない。いや、しでかしたんだけど、決してパーカーに対してなにかしでかしたわけではない。彼は目立った短所もなければ、冷静さを欠いたこともなく、仕事の前も最中も一切ドジなんて踏んでいない。有能。申し分なく、有能。

言ってしまえば三人目の相棒や、ほかの並の仲間より、明らかにクールで、問題も起こさない。世話の焼ける度合いはほぼ皆無。物分りも良し。

 

最終話に至るまで、しかと「有能」と書かれている。

 

しかし、上記五人と比べて、少しだけ足りていないものがあった。まったく本人のせいでもパーカーのせいでもない。

 

欠点がなかったこと、クールで有能であり続けたこと、これが裏目に出たとしか見えない。

 

 

これ、同じ状況だとして、グロフィールドならおそらく楽々と切り抜けたと思うんですよね。あの人、なんだかんだでピンチに強い。それに、そもそもあの類のピンチは招きそうにない。俳優だから、度胸があり、アドリブ力抜群。そして身体能力がなにげに高い。いつぞやさんざん救われ体質について書きましたが、強いんですよ、この人。

 

エドなら、おそらく巧みにパーカーに助けに来させる展開に持ち込んだでしょう。自分も助けに行ったことがあるのだから。彼とパーカーのあいだには、少なからぬ歴史がある。お互いをわかっている。どちらかというとあの人よりもぬけているところがあるし、問題を招きそうな要素はあるんだけど、この人が今まで命拾いしてきたのは、完璧でなかったからだと思う。

 

ワイツアーは、警察に捕まるくらいなら大暴れして死ぬと宣言している人です。

 

カーロウは、パーカーの筋の通し方をよく知っている人。帰ってくるかわからない男の家に金を届けてくれるような男だとわかっている人。ほとんど絶対の信頼がある。無茶をしたとは思えない。

 

ハンディは、どうだろう……。だれよりもパーカーのことをわかっているので、最悪の場合、従容として受け入れそう。そんな想像をしてしまうんですが。

 

 

ほんの一週間前まで、まったく申し分なく、完璧そのものだった相棒。

 

彼が変わったわけでもなく、裏切ったわけでもない。

 

プロとして、お互いに完全にわかりあっていた。わかりすぎるくらいに。

 

ただし人間的な面で、もう少しわかりあっていればよかった。パーカーはともかく、もっと「我」を出してよかった。そうしていたら、もしかすると上記5人に近い道があったかもしれない。

 

それを思えば、シリーズ史上かつてなかった展開を、スターク氏が書かんとしたのが、ようやくわかった気持ちになる。

 

 

……いや、おそらくやるとは言っても、さすがのパーカーもためらうだろう。あの際でも、相手がグロフィールドだったら。で、おそらく口八丁で丸め込まれただろう。

 

 

「パーカー……」

 

 

それがな、それが、パーカーと彼との、ほんのわずかだが決定的な違いなんだよ。

 

 

こればかりはもうどうしようもない。相手が悪すぎる……。

 

 

……けれども一人くらい、彼のために怒ってあげてもいいんじゃなかろうか、とは思う。

 

パーカーだって当局の人を手にかけたことがないわけじゃないだろう? むしろがっつりあるだろう? 整形する羽目になったのは、看守を殺して逃亡したからだったでしょう?

カーロウのときは、おそらく例の問題人物を売って司法取引する予測は立っていたのだろうけれど、ちゃんと金を届けてあげただろう? 等々……。

 

あれですか。やっぱり『ターゲット』にて、「生かしておいたのは間違いだった」という教訓を得たためですか。そうですか……。

 

……それとも、自分も逃亡生活の過酷さを知っているから、日頃冷静な人間でもどれだけ精神が荒むかよくわかっているから、この男にはもう耐えられまいとでも判断したのだろうか。

 

……うなるしかない。

 

 

最初はさ、「パーカーだって毎回人殺しをするわけじゃなーい」なんて意味かも、くらいしか考えていなかったんですよ……。

 

 

それにしてもパーカーさぁっ、N・Mには優しすぎでは――(以下自重)

 

 

いずれ、マサチューセッツ三部作は完結したとのことでした。

 

 

今後一ファンにできること。

①次回作を妄想する。

②転生先を妄想する(平行世界が有力?)。

③あれは彼ではない疑惑を提起し、無理矢理希望の余地を探しまくる。

 

 

未練がましい。

 

 

しかし、ファンが必ず「これがもしハンディだったらグロフィールドだったら――」と妄想せずにはいられなくする。こういう形でかつての相棒たちほとんどすべてをカムバックさせ、思いを永遠にする……。

 

そういう意味で、最終作にやはりふさわしいのかもしれません。

 

 

 

 

(追記:なお、このおよそ二ヶ月後に大どんでん返しをくらう)(リンクは記事の最後に)

Nobody Runs Forever: A Parker Novel (English Edition)

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Ask the Parrot: A Parker Novel (English Edition)

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Dirty Money: A Parker Novel (English Edition)

Dirty Money: A Parker Novel (English Edition)

 

 

 

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