A.Banana.S

古代ローマ、NACSさん、ドートマンダー・・・好きなことをぽつぽつと。

相棒は浮気しない。(語弊注意)

 

ドートマンダーシリーズ11作目『The Road To Ruin』の冒頭で、ケルプがドートマンダー=メイ家を訪問します。「プライバシーを尊重して」ピッキングなしで。

 

ドートマンダー:(よく言うよ)

 

D「それで、どうしたんだ?」

K「いや、たいしたことじゃないんだけどね。このごろ俺たち、話していなかったと思ってさ。新しい収穫もなしなんだろ」

D「ないよ」

(中略)

K「お前がしばらく電話してこなかったってことは、ちょっとした仕事も考えていなかったんだな」

D「たぶんな」

K「つまり、もしお前がちょっとした仕事を思いついていたら、俺に電話していたはずだ」

D「一人でやるのでなければ」

K(興味深そうに)「なにか一人でやったのか?」

D「実のところ……やってないよ」

(リビングに入ってくる、メイ)

メイ「アンディー、今日はどうしたの?」

D「俺がこいつ抜きで仕事をしていたかどうか知りたがっているんだ。たぶん、ほかの連中とな」

K「いいや、お前はそんなこと絶対にしないよ、ジョン」

 

 この自信はどこから来るんですかね!!

 

つまりこの方は、ドートマンダーは自分から絶対に浮気をしないと言っておるわけですよ!(語弊) 

自分が第一の相棒であることを疑ってもいないわけですよ!

……もしくは、ちょっと心配になったから様子を見に来たんですよ。浮気調査ですよ!(だから語弊)

 

しかしドートマンダーはケルプとだけしか仕事をしないわけではもちろんありません。以下、思いつくかぎりのドートマンダー浮気記録(だから語弊だってば)。

 

1作目から4作目までは、ドートマンダー出所、散々な仕事の連続、絶交からの仲直りという過程だから省くとして……。

 

ん??

 

それを言うならケルプさんが浮気してないですか!?

 

アラン・グリーンウッドさんとイカサマ賭博で小金を稼いでいることを、本人が白状しておりますが。一方、ドートマンダーさんはそのころ独り汗水垂らして百科事典詐欺ですよ。

 

それなのにケルプさんは、読むところどうも頻繁にドートマンダーさんに電話して、今日の百科事典詐欺はどこでやる予定か、聞き出している様子ですよ。ちゃんと相棒の行動を把握しておりますよ。それで、必要とあらばすぐ拾いにいく態勢万端でいらっしゃいますよ。

 

ドートマンダーも教えなければいいのに。でもそうなったらケルプさんは、ドートマンダーの同居人メイさんから聞き出しますよ。ドートマンダー、メイを悪く言うことなんてまずもってないのに、このときばかりは「おしゃべり女が!」なんて毒ついていましたよ。

 

自分は浮気しておきながら、相棒の行き先はしっかり把握するケルプ氏。のみならず、空き巣先まで先回りしておくケルプ氏。

 

だれですかね、4作目でドートマンダーの「そんな人ははじめからいませんでした」作戦を台無しにしたのは。翌日にはケルプさん、さっそく怒鳴り込んできたじゃないですか。

 

予想:

チェフウィック:(←事情をほとんど知らない人)

「やあ、アンディー。昨夜ドートマンダーとスタンと私と、あとタイニー(ちっぽけな)とかいうとんでもない大男と四人で、O・Jでミーティングをしたんだが、お前さんは具合でも悪かったのか? 久しぶりに会いたかったのに、残念だよ」

 

スタン・マーチ:(←すべてをその目で見てきた人)

「やあ、ケルプ。昨夜、ドートマンダーと俺と、あとタイニー・バルチャーという大男で、O・Jでミーティングしたんだがね。そのう……、お前も聞いていたよな?」

 

いずれケルプさんの秘密の情報網が動いたのでしょう。12時間以内にすべてを把握して、自宅強襲と相成りました。

 

それはともかく、ともかく、

 

ドートマンダーがケルプではないほかの相棒と二人で仕事をするのは、⑥『天から降ってきた泥棒』がおそらく最初(無論、あくまで作中)。

 

ドートマンダー&ジム・オハラのコンビ

 

しかしこのときのジムは、かのケルプ氏その人の代役であり、どうもケルプ本人が手配したことがまもなく明らかに。

 

これは、たぶんケルプ氏に言わせれば、浮気(語弊)……もとい裏切り(もっと語弊)……ではないのだろう。

 

 

ドートマンダー浮気事件その2は『最高の悪運』

 

ドートマンダー&ガス・ブロックのコンビ

 

これはドートマンダーではなく、ガスのほうからドートマンダーに誘いの電話を入れた結果の仕事。

ケルプ氏に言わせれば、ドートマンダー側から誘ったのでなければ、相棒的な意味での浮気ではないのでしょう。

ドートマンダー側から、ケルプをすっとばして別のだれかに仕事の電話をしたなら、そのときこそアウトなのでしょう。

 

確かにドートマンダーは、小さな仕事を思いついた時は、一人でやるのでなければ、まずケルプに電話しています。で、ケルプが留守だったか、なんらかの「ドジ」で電話に出られなかった時のみ、プランBを取ります。ケルプをすっとばしたことは「そんな人ははじめからいませんでした事件」以外、ない。なんと貞淑な……いや義理堅い人か。

 

しかしこの後ケルプ氏は、ガス・ブロックとの仕事のあった翌朝には、早くもドートマンダー宅を訪問しています。どうも玄関を開けたのはドートマンダーの起床より早く、すでにメイからおおよその事も聞いていた様子。

 

この後しばらくしてからですが、ケルプはアン・マリーを連れて、ガス・ブロックとその恋人と一緒に食事をしたことが明らかになります。ケルプの口から指輪奪還作戦のことを聞いたガスは、勇んでドートマンダーに、自分もラスヴェガス旅行に加えるよう電話することになります。「おしゃべりというのを、アンディー・ケルプのあだ名にすべきだな」とこぼすドートマンダー。

 

しかし彼の相棒の真の目的は、次作でアン・マリーが単発ヒロインに「私の彼を誘惑しないでね」と暗に伝えたのとほとんど同じだった……かもしれない。

 

 

ドートマンダー3度目の浮気は、短編『芸術的な窃盗』

 

ドートマンダーのお相手は、またもジム・オハラ。

 

ドートマンダーが誘ったのではなく、偶然の成り行き。否、明かな「前科者」であるドートマンダーとジムだからこその仕事だった、必然の成り行きか。

 

この短編では、ケルプは一瞬たりとも登場していない。存在を漂わせてもいない。

 

……ついにばれなかったか!? 解放されたのか、ドートマンダー!?

 

時系列的に次:

ケルプ「ジョン、千ドルで墓掘りの仕事があるんだけど」(にっこり)

 

 

ドートマンダーの浮気その④

 

お相手、アーニー・オルブライト(短編込みで、複数回)

 

ケルプさんの基本姿勢:

「どうぞどうぞ。俺にかまわず、遠慮なくアーニーのところへ行ってくれ。アーニーはお前の友だちじゃないか。なんなら俺の分まで、あいつのところに行ってきてくれていいんだぜ?」

 

 

ここまでドートマンダー側からの様子を見てきましたが、ではケルプ氏のほうはどうなのか?

……確かにグリーンウッド以外、作中でケルプと二人で独立した仕事をした人はいませんな。ケルプの単独空き巣はよく見かけらますが、ドートマンダー以外と仕事をしている姿は映っていません。

 

相棒にあれだけ自信満々な言葉を言えるということは、すなわちケルプの側も、仕事をするならばドートマンダーが第一候補ということで、ゆらがないということになる。……それでいいんですよね、ケルプさん!? どこにでもお友達がいるから、その気になれば相棒には困らないだろうケルプさん!?

 

 

……まあ、つまり、なにを言いたいかといいますと、ケルプのドートマンダーの相棒という地位における盤石な自信。

 

そしてその後の13作目で、とうとう「お前が俺に電話してきたのは、俺に助けてほしかったからなんだな。それで、いつ俺に助けを求めてくれるんだ?」なんてのたまう。(走馬灯のように巡るこれまでの歴史……)

 

増長はなはだしいように見えるけれども、こういうことが言える相棒関係は貴重だな、と。

 

素直に「助けてほしい」なんて言えませんよ。なかなか。

 

ケルプはドートマンダーが言うまで待ちますからね。

 

まあ、もちろん、彼らが慈悲の女神メイの多大な協力があっての今の二人なんだけれども。

 

当然のように、これは逆もしかりなのでしょうね。

 

これよりずっと前の、ケルプさんの名言に「おれたちは一緒だろ」があります。

感動するドートマンダーに、

「どうしてだ? お前ならおれにも同じことをしてくれるよな?」

ドートマンダー、目をしばたたく。

 

……ケルプさん、まずここの答えを相棒から聞き出したほうがいいんじゃないですかね。

 

もしくは、12作目の「いつか、また俺たちがバーにいるときに」とO・Jでおごったビールを、お返ししてもらっていいんじゃないですかね?

 

両思いなんだか片思いなんだかわからないコンビの話を、今日もお送りしました。

 

 

 

The Road to Ruin (The Dortmunder Novels Book 11) (English Edition)

The Road to Ruin (The Dortmunder Novels Book 11) (English Edition)