A.Banana.S

古代ローマ、ナックス兄さん、ドートマンダー・・・好きなことをぽつぽつと。

ジョン・ドートマンダーとアンディー・ケルプで見る、ドートマンダー・シリーズ:とりあえず①

 

※個人的考察ですが、少し作品内容に触れますので、ご注意ください。(実のところ優に本2冊分くらいは書いているんですけど、やはり権利上語れないことが多いな……)

参照・引用元はこちらの記事も参照願います。

 


 

~ジョン・ドートマンダーとアンディー・ケルプで見る、ドートマンダー・シリーズ:

とりあえず①~

 

 

ジョン・アーチボルト・ドートマンダー

 シリーズ開始当初、37歳。44歳で年を取らなくなる。

 

アンドルー・オクタヴィアン・ケルプ

 年齢不明だが、たぶんドートマンダーと同じくらい。『ホット・ロック』だけミドルネームがフィリップ。

 

いつでもどんなときでも悲観的で憂鬱なドートマンダーと、楽観的で陽気なケルプ。見事なまでに対照的な性格だが、根は単純……いや、良い男であるという点で一致している。

 

 

まず、私は勝手にドートマンダー・シリーズを以下のように区分している。

 

 

~ケルプ疫病神編~

 

①『ホット・ロック』(1970) 角川文庫/平井イサク

②『強盗プロフェッショナル』(1972) 角川文庫/渡辺栄一郎

③『ジミー・ザ・キッド』(1974) 角川文庫/小菅正夫訳

④『悪党たちのジャムセッション』(1977) 角川文庫/沢川進訳

 

 

~ドートマンダー受難編~

 

⑤『逃げ出した秘宝』(1983) ミステリアス・プレス文庫/木村仁良

⑥『天から降ってきた泥棒』(1985) ミステリアス・プレス文庫/木村仁良

⑦『Drowned Hopes』(1990)

⑧『骨まで盗んで』(1993) ハヤカワ・ミステリ文庫/木村仁良

⑨『最高の悪運』(1996) ミステリアス・プレス文庫/木村仁良

 

 

~その後編~

 

⑩『バッド・ニュース』(2001) ハヤカワ文庫/木村二郎

⑪『The Road to Ruin』(2004)

⑫『Watch your back!』(2005)

⑬『What’s so funny?』(2007)

⑭『Get Real』(2009)

 

 

 

「ケルプ疫病神編」とは、つまり、ケルプがドートマンダーを厄介事に巻き込む展開のこと。典型例としては、①ケルプ、ドートマンダーに仕事を持ち込む(だいたいイカれた仕事)。②ドートマンダー、しぶしぶ仕事に取りかかる ③不運襲来

 

「ドートマンダー受難編」とは、ドートマンダーがまず厄介事に巻き込まれる、もしくは仕事を持ち込まれる展開のこと。その後、ケルプが手を貸す、そして不運襲来――という流れ。

 

 

「ケルプ疫病神編」のクライマックスが、④の『悪党たちのジャムセッション

 ただしこれは、実のところ、シリーズ初の「ドートマンダー受難編」の展開である。しかしこれは、ドートマンダーが前3作を引きずりまくっている結果以外のなにものでもない。ドートマンダーの、そんな人は初めっからいませんでした、とばかりの爽快なケルプ無視っぷりは、前3作を読んでこそ笑えて、秀逸。

 

そこに至るまでの、ケルプ疫病神例:

 

①「エメラルドを盗もうぜ!」

②「銀行を盗もうぜ!」

③「この本に書いてあるとおりに誘拐しようぜ!」

④「なんで俺を締め出すんだよ、ドートマンダー!」

※「」内は私の勝手な要約です。

 

これはあくまで大枠で、ケルプ氏は第1作第1段階第2節の初登場シーンからすでにドートマンダーを生命の危機に陥れるなど、各所で色々やらかしている。

結果、有識者の方々による巻末解説で、「ドジな相棒」「諸悪の根源」「車盗みと仲間集めくらしか役に立たない」と散々な言われようとなる。

 

 

「ドートマンダー受難編」のクライマックスが⑨の『最高の悪運』。⑧の『骨まで盗んで』がプレクライマックスというところ。

 

ドートマンダー受難のはじまり例:

 

⑥ 全NY市民ないし世界に迷惑をかけるレベルものを、うっかり盗む。

⑦ 尼さんの集団に人助けを頼まれる。

⑧ 元ムショ仲間に脅される。「この仕事をしないと、貯水池を爆破するからな」

⑨ 骨一本を盗むよう依頼される。

⑩ 恋人からのプレゼントを盗まれる。

 

 

クライマックス3編は、オールスターキャストものになる。つまり、それまでに登場した仲間がみんな仕事に加わったり、それ以外の関係者も再登場したりと、読者にはお祭り騒ぎのような展開である。

 

「疫病神編」から「受難編」の転換点となるのが、⑤『逃げだした秘宝』である。④『悪党たちのジャムセッション』から6年も間隔が空く。

ある意味では、ドートマンダー・シリーズは、④で一度完結したのだろう。

 

⑤にはじまるなにより明確な変化は、ケルプがドートマンダーをだしぬけにファーストネームで呼び出すところである。もう冒頭第1節から。

ドートマンダーがケルプをファーストネームで呼ぶのは、あのコンビ屈指の名シーンだが、④において、ケルプは最後まで「ドートマンダー」呼びを通していた。

⑤にいたるまでなにがあったのか。

 

 

「その後編」は、……なんかもっと良いネーミングはないのか考え中なのだが、まず初っ端の⑩『バッド・ニュース』は、初心に帰ったとばかりの、「ケルプ疫病神編」である。

アンディー・ケルプ氏、とうとうインターネットで知り合った人からの仕事を持ち込む。やめれ(笑)

 

しかし、ケルプが初期に比べて格段に有能になったとわかるのが、この作品かもしれない。だってまさか、一人で敵を制圧するなんて、できるわけないと思っていたのは私だけか。しかもよもやあんな必殺技をお持ちとは(笑) 海外でやってる人初めて見た。

 

以降、

⑪『The Road to Ruin』は、「ケルプ疫病神編」。

⑫『Watch your back!』(2005)は、「ドートマンダー受難編」。ただ、ドートマンダーというよりまさかのOJバー&グリル受難編

⑬『What’s so funny?』(2007)は、「ドートマンダー受難編」。

⑭『Get Real』(2009)は、「ドートマンダー受難編」。いや、もしかしたらスタンとそのおふくろさん疫病神編!?

 

 

ただし、「疫病神編」は後半完全にドートマンダーが一人で不運をかぶりまくり、「受難編」は、発案者アンディー・ケルプのアイディアが提言されたとたん、むべなるかな…な方向へ――!と、かなり複合的である。いつもそうだと言えばそうだけれども。

 

ケルプの有能度は、「受難編」を進むにつれて着実に右肩上がりに見える。

 

自分が仕事を持ち込むではなく、自発的にドートマンダーを助けにくるので、いやがうえにもイイ奴に見える。そして実際、イイ奴である。ドートマンダーもはじめからそれはわかっている。……わかっているからこそタチが悪いのだが、結局ほかの仲間のだれよりも真っ先にコミットしてくるケルプはありがたい存在としか言えないのだ。

 

そういえば、浅暮三文氏の『ラストホープ』は、ドートマンダー・シリーズの影響が明白な作品だけれども、あの刈部さんと違って、ケルプは「あの種のドジ」というか災難に一度も見舞われていない。ドートマンダーはわりとしょっちゅうだけれども。(だれかさんのせいで(笑))

 

 

未翻訳作『Drowned Hopes』では、このコンビのファンはぜひとも読みたい、出色のシーンがある。

この作品で、ケルプはドートマンダーの分まで危険な仕事を引き受ける。がんばる。しかしなぜか不運に見舞われるのはドートマンダー。なんと生命の危機に。

 ケルプの叫びが、悲痛。

 その後、仕事から手を引くと決めたドートマンダー。一人帰り支度をする彼を、メイを含む仲間たちみんなが、一人ずつやってきて引き留めようとする。しかしケルプだけは――あの、『ホット・ロック』以来、いつもドートマンダーを口八丁のかぎりを尽くして気の進まない仕事にも引きずり込んできたケルプは、いつも絶望するドートマンダーを楽天的に引っ張り上げてきたケルプは――――。

 屈指の名シーンに思うので、翻訳してくださらないだろうか。はい、『Drowned Hopes』滅茶苦茶長いですけれども。

 

 

 やりましょうか、わたくし……(ど素人)。

 

 

「その後編」に入ると、ケルプ氏、つけ上がる(笑) 

 『The Road to Ruin』では、ドートマンダーに「お前は俺抜きで仕事はしないよ」なんて余裕ぶっこく台詞をのたまい、ついには『What’s so funny?』で、「いつ俺に助けを求めてくれるんだ?」→助けてと言え。とまでおっしゃる。

 

 「助けろ」

 「オーケー」(超即答)

 

 あの「助けになってくれるな。それだけがおれの頼みだ」とか、「きさまの頭にその標識を巻きつけてやる!」なんて『ジミー・ザ・キッド』で言われていたあの日が嘘のよう。

 

ドートマンダーも、怒らなくなったよね。

 

まったく、「その後編」のケルプは、新入りボーイJudsonくんにプロの技を指導するなど、すっかり落ち着いた大人の男である。

空き巣に入った先で、着メロを大音量で鳴らし(しかもベートーベン第九)、ドートマンダーの心臓を止めかけるが、たぶんもう「ドジな相棒」とは言われない。ただ名と実ともに「相棒」。

 

ストーリーとしては、中でも『Watch your back!』『What’s so funny?』が面白いし、ファンにとっての見どころ満載に思うので、ぜひ翻訳していただきたい……!

 

 

 

 

……やりましょうか?(^_^;)

 

 

これを書くために漁っていたら、「無事に大学に合格したので『Bad News』を読みふけっている」とのメモを見つけました。たぶん、嘘だ。お前は受験勉強そっちのけでなにやってたんだ(苦笑)

 

 

最後に、たぶんドートマンダーとおんなじ理由でどうしてもケルプが好きな私の、勝手なランキングを。

 

◇ケルプ困ったちゃんランキング

第1位 『ジミー・ザ・キッド』

同率2位 『ホット・ロック』『強盗プロフェッショナル』

同率四4位 『逃げ出した秘宝』『骨まで盗んで』『バッド・ニュース』

 

◇ケルプ可愛いよランキング

第1位『ジミー・ザ・キッド』

同率2位『逃げ出した秘宝』『悪党たちのジャムセッション

3位『馬鹿笑い』(『泥棒が1ダース』収録)

 

『泥棒が1ダース』の中でもおすすめは、やっぱりダントツで『悪党どもが多すぎる』ですけどもね。ケルプ、出ます。

 

◇ケルプかっこいいよランキング

第1位『Drowned Hopes』

第2位『最高の悪運』

第3位『悪党たちのジャムセッション

 

『金は金なり』(『十の罪業RED』収録)も、地味めだけど良かったな…。

 

最後に、

 

◇ケルプ非情の裏切り(笑)ランキング

第1位『天から降ってきた泥棒』

第2位『What’s so funny?』

第3位『真夏の日の夢』

 

最後のは、タイトルでピンとくる方もいらっしゃるでしょう。ドートマンダーがあの史上有名な台詞を吐きます、ケルプに。

 

この場外編が、『Watch your back!』がクライマックスとなる(?)、主にアーニー・オルブライトをめぐるドートマンダーとの死闘(笑)

 

これはいつか上げたい……!